桐光学園高校(神奈川県)には優秀な“参謀”がいる。シックスマンとしてプレーする三島大河だ。小学6年生の頃から一貫してコーチ志望。今シーズンからはプレイングマネージャーという立ち位置で練習に参加し、選手たちに様々な戦術やプレーのアドバイスを授けている。
インターハイは法政大学第二高校に敗れて2位出場。今大会にはその法政二を県の決勝でしっかりと破って勝ちあがってきたが、そこには三島が講じたいくつもの策があった。一つがセットプレーだ。桐光学園は元来オールコートの速攻が持ち味のチームだが、インターハイで様々なチームを見てセットプレーの可能性を感じ、高橋正幸コーチに使用を進言。「やってみろ」との声を受けて、他チームの試合動画などからセットプレーの動きを分析し、チームに合わせてブラッシュアップした。
初戦となった育英高校(兵庫県)の分析もしっかりしてきたつもりだった。練習試合をする県内チームから情報を集め、動画サイトで見られる試合映像はすべて見た。育英の初戦も、コーチ、マネージャーの北山朋裕とともに現地で観戦し、要注意と感じたプレーを当日練習で確認。しかし、実際に対戦してみると相手は予想以上に強かった。「確認したプレーでことごとくやられました。駆け引きのうまさやシュートを決めきる力など、一つひとつの面で上回られていたなという印象です」
インターハイでは福岡大学附属大濠高校(福岡県)を初戦で破り、ベスト8に進出した。今大会でも躍進が期待されていたが、自分たちの持ち味をほとんど出せずに74-83で敗北。初戦でひっそりと姿を消すこととなった。
高橋コーチは試合後に選手にこう話した。「悔いだらけのこのゲームを反省して、活かしてくれ。(持ち味の)堅守速攻をスローダウンさせたことが本当に良かったのか、声の掛け方はこれで良かったのか、この舞台でどんなプレーが必要だったのか。いっぱい反省してもらいたい」
これを受けて三島は「結果は今日出たものではあるんですけど、向こうの3年間とこっちの3年間の集大成の違い。そう信じたいです」と言い、少し表情をゆがめながら「もしかしたら、自分たちが信じていた道ははずれだったのかなという気もします」と続けた。「自分たちは技術や知識ばかりに目が行っていたけど、気持ちとか内面とか人とのつながりが影響するんじゃないのかなと」
明日の試合はもうないし、18歳が答えを出すにはあまりに大きな命題だ。「バスケットの勝ち負けを通じて、それよりも大切なことを伝えられるような指導者」になる日まで――。ゆっくりと時間を掛けて正解を見つけてほしい。
文=青木美帆