2016.12.26

“能代工を倒したチーム”からの脱却、平成高校の挑戦が終幕「日本一になる気持ちでやってきた」

能代工に代わってウインターカップ初出場を果たした平成は2回戦で敗退
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 県立平成高校(秋田県)は30人の部員のうち20人が秋田県横手市出身というチームだ。自身も横手で生まれ育ったという佐々木信吾コーチは、本拠地とチームを以下のように語る。

「横手はかまくらで有名な場所なのですが、すごく雪が多いんですよ。寒波が来ると1日で60センチ降ることなんて当たり前。体育館も寒い。でも裸になってがんばれるくらいの熱量を大切にしたいと思っています」

 この季節、練習が始まる16時前後には氷点下の気温になる。ヒーターはあるにはあるが、付けていても寒い。全体練習が終わればそのヒーターさえも片付けられ、外気温と変わらない中で自主練習を行うという。キャプテンの三浦杏太は言う。「体を動かしていれば温かくなります。寒いんだったら動こうっていう考え方です」。最長身は182センチ。身長のハンデを運動量で圧倒する平成のタフなバスケットボールは、こんな厳しい寒さの中だからこそ培われたものなのかもしれない。

 今年の夏のインターハイ、県47連覇中の県立能代工業高校を破って初の全国大会を経験したが、1回戦で安城学園高校(愛知県)に敗れ、全国初勝利は飾れなかった。

「(インターハイが開催された)広島では場に飲まれて自分たちのやりたいことができなかった。以来、常に『(インターハイが開催された)広島はこんなものじゃなかった。上には上がいる』と全員で口にして、表現して、広島からここまでがんばってきました」(三浦)

 今大会は1回戦で県立佐世保工業高校(長崎県)戦を85-83で制し、能代工以外では秋田県勢初となるウインターカップ1勝を達成。しかし、次の対戦相手となった船橋市立船橋高校(千葉県)は「相手のうまさ、高さ、強さ、キャリア、全部が上だった」(佐々木コーチ)。序盤からリードを積みあげられ、74-107で敗れた。

 初出場のチームが強豪相手にこれだけの点差で敗れると、試合終了後の表情も何となく冴えないものになることが多い。しかし彼らは口を一文字に引き締め、厳しい表情でコートを去った。「日本一になるという気持ちを持ってやってきました」と三浦が言うように、“能代工を倒したチーム”でなく、全国で強いチームと称されることを目標としてきたからだ。

「一歩目を出すことはすごく勇気とエネルギーが必要だと思います。それを3年生たちは本当にがんばってくれました。だから二歩目が大切。簡単なことでないことはわかっていますが、ここに来させてもらったことを考えれば、この後ももっとがんばれます」(佐々木コーチ)

 下級生たちは年明けの県新人戦に向けて準備を始める。「口下手だけど想いを大切にする」(佐々木コーチ)“横手者”たちは再び、雪深い小さな町から全国大会を目指す。

文=青木美帆

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