2016.12.28

120キロから25キロ減、準々決勝敗退の市立船橋で“黒子役”に徹した田村伊織の奮闘記

市立船橋の田村伊織は福岡第一戦で4得点5リバウンド2アシストを記録 [写真]=大澤智子
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 195センチ95キロの巨体がチームの先頭を猛然と走る。その姿は異様ですらあるが、彼が走ればチームは間違いなく勢いに乗るのだ。194センチのポイントガード赤穂雷太が注目される船橋市立船橋高校(千葉県)だが、田村伊織もこのチームだからこそ生まれたユニークな存在だ。

 入学当時は体重が120キロあった。「120キロのままで走れるようにさせたかったけど無理でした」と近藤義行コーチは笑う。主力で起用されるようになった2年次から体重は徐々に落ちていき、3年生になってからは押しの一手「スタバのフラペチーノ絶ち」でさらに10キロ絞った。「よくがんばって絞りました。あの子が走れるようになったことでこのレベルまで来られたのかなと思います」と近藤コーチは続けた。

 相手センターとインサイドで体をぶつけ合い、リバウンドに飛ぶ。その上で28メートルのコート間を何度もダッシュすることのハードさは想像に難くない。これだけの体重があるのならなおさらだ。しかし疲労よりもチームを動かすことのうれしさが勝っていた。

「自分の働きでチームがうまく回っているなと感じる時が、楽しくて。地味だしあんまり見てもらえないかもしれないけど、雷太や保泉(遼)が自分の走りで活躍してくれるとうれしいし、あいつらがシュートを決めてくれるからがんばって走ろうと思えました」

 準々決勝では、インターハイ王者の福岡第一高校(福岡)を相手に第3ピリオドに同点までくらいついたが、最後は62-79で敗れた。「強かったですね」と振り返った田村の表情は、どこか清々しい表情だった。

「戸田貫太さん(現青山学院大学2年)たちに連れて来てもらった体育館。あれから2年。ホントにあっという間でしたね。終わってみたら『もっとああしたかった』ということも出てきましたが、またこれからがんばろうと思います」

 一昨年のチームは“やんちゃ軍団”の鮮烈な印象を残し、3位入賞を果たした。当時はベンチで熱いパフォーマンスを見せていた田村も最上級生となり、メインコートの舞台にその足跡をしっかりと刻んだ。

文=青木美帆