2017.01.06

A東京を率いる青年指揮官、伊藤拓摩HCが掲げる理想は「どんな状況にも対応できるチーム」

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アルバルク東京在籍8年目、昨シーズンからヘッドコーチとしてチームの指揮を執る34歳の青年指揮官は、クラブのイデオロギーをコート上で具現化する。「自分たちが日本の先頭を走るバスケットを見せていかなければいけない」。アメリカで本場のバスケットを学び、練習中は英語で選手たちを指導。彼に率いられたチームは現在、地区首位と同勝率の2位につけ、初代王者の座を射程圏に捉えている。「どんな状況にも対応できるチーム」を理想に掲げる伊藤拓摩HCは3月5日、6日の大一番に向け、「自分たちのバスケットを最高の形で表現できれば」と気を引き締める。

インタビュー=安田勇斗
写真=新井賢一、Bリーグ

――もともとアルバルク東京へはどういった経緯で来られたのでしょうか?
伊藤 アメリカでコーチの勉強をしていた時に、当時のヘッドコーチから「アシスタントコーチにならないか」と誘っていただいてここに来ました。

――いつ頃ですか?
伊藤 今年8年目なので、2008年か2007年ですね。

――アメリカに長くいたそうですね。
伊藤 中学を卒業してから行って10年ぐらいですね。最初は選手として行き、19歳の時からコーチの勉強を始めました。

――コーチ業はどうやって学んだのでしょうか?
伊藤 自分で勉強していました。高校生の時からコーチになりたいと思っていて、マネージャーをしながらノートを取ったりしていたんです。ですので、普段の練習もそういう目線で見てましたね。

――アメリカではどういうチームを指導されていたのでしょうか?
伊藤 最初はモントローズ・クリスチャン高校で、スチューデントアシスタントやアシスタントコーチをやらせてもらいました。アルバルクの松井(啓十郎)や弟(伊藤大司)がいたチームです。その後、バージニア・コモンウェルス大学で5年間マネージャーを務めました。その間、高校卒業後に短大に行ったり、ビザの関係で日本に戻ったりした時期もあったのでずっと現場にいたわけではないですが。

――アルバルクでは6年間アシスタントコーチを務めて、昨年からヘッドコーチを務めています。
伊藤 当時ヘッドコーチだった(ドナルド)ベックコーチ(現トヨタ自動車アンテロープスヘッドコーチ)が家庭の事情などもあって女子のチームに行くことになり、アシスタントコーチだった僕がそのままヘッドコーチに昇格しました。

――ヘッドコーチとして理想としているバスケットのスタイルは?
伊藤 賢い選手を育てて、どんな状況にも対応できるチームを作ることですね。力技でねじ伏せることもできて、セットオフェンスなど頭を使ったプレーでも勝てる。そういうチームが理想です。

――指導されて2年目ですが、そのスタイルはどの程度浸透してきていると思いますか?
伊藤 昨シーズンから6選手が新しく加わったので、やり直しになった部分もありますけど、1年前に比べるとオフェンスもディフェンスもレベルの高いプレーができています。この流れでいけば、シーズン後半になるにつれてもっと質の高いバスケットができると思います。お互いのことを理解するようになって、みんながやりたいプレーができるかなと。

――練習中は英語で指導されているそうですが、その理由は?
伊藤 いくつかあって、一つはベックコーチが英語でやっていたからです。通訳を挟むとどうしても言葉のニュアンスが変わってくるので、ダイレクトに伝わる英語を使っています。シンプルな英語だったら日本人もわかりますし、慣れの問題だけなので。それと自分としても、英語の方がやりやすいというのもありますね。日本語だと日本人は理解できますけど、外国籍選手は全く理解できないので(笑)。

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――ちなみにアメリカと日本で指導されて、違いなどは感じますか?
伊藤 違いばかりですね(笑)。やっぱり文化が違うので。日本では集団を大事にすることを教わりますけど、アメリカは個人主義というか、個々を伸ばすんですよね。だから個人の伸ばし方がすごくうまいんですよ。その成長過程の中で、チームや集団というものを少しずつ学んでいく。日本の部活を見ていると、チームの中でどう貢献するかを大事にしているので、そこは決定的に違いますね。

――ご自身が指導する際は、その違いをどう意識していますか?
伊藤 バランスを見てやってます。僕自身はチームを勝たせることに集中して、個人練習はアシスタントコーチにサポートしてもらったり、あとはオフシーズンに個人練習を多めにしたり。シーズン後半になってくるとチーム中心の練習になりますけど。

――日本人を初めて指導された時はギャップなどを感じましたか?
伊藤 感じましたね。すごく真面目で、僕が求めることを100パーセント返そうとする姿勢は素晴らしいと思いました。ただ、求めることを疑いもせずにやってくれますけど、それは「自分で考えていない」とも取れます。それと、言われたこと以上はやらないという感じもあって、100のものを120、130にしようという、プラスアルファのクリエイティブな部分を出せる選手が少ないですね。

――アルバルクに長く在籍して、これからクラブをどうしていきたいですか?
伊藤 アルバルクでやっている以上、また東京のクラブでやっている以上、日本を引っ張っていくクラブでないといけないと思います。それがクラブの使命かなと。エンターテイメントの部分ではフロントが日本のバスケット界をリードして、コート上では自分たちが日本の先頭を走るバスケットを見せていかなければいけないと感じています。

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――ここまではそれができていると思いますか?
伊藤 注目はしてもらえていると思います。子どもたちが選手に向ける目や、地方に行った時の迎えられ方などは、昨シーズンとは明らかに変わっていますし、選手もそれを自覚しています。僕自身は全然変わらないですけど(笑)、選手はとても注目されていますね。

――少し気が早いですが、アルバルクの3rdユニフォームがお披露目になる3月5日、6日は東地区のライバルとの対戦になります。
伊藤 東地区は激戦区で、特に上位3クラブはどこが一番になってもおかしくないと思っています。3月5日の時点で理想を言えばトップにいたいですけど、交流戦もある中でどの位置につけているかわかりません。相手はチームワークが良くてすごく堅実です。チーム力はリーグトップだと思いますし、前回対戦した時も学ぶことがすごく多かったので、試合が楽しみです。

――交流戦の手応えはいかがですか?
伊藤 お互いのことがわからないので勝つのが難しいですね。相手によっては“捨て身の作戦”というか、これが通じなかったら負けてもいいという覚悟で戦うチームもありますし、アルバルク相手に特別な準備をしているチームもあります。

――最後に5日、6日の試合への意気込みをお願いします。
伊藤 モチベーション高く臨めますし、間違いなく激しい試合になります。ただその頃には自分たちのバスケットもある程度確立できているはずですし、それを最高の形で表現できればと思います。