2017.09.24

【大会総括】JX-ENEOSとトヨタ自動車が参戦、日韓クラブチャンピオンシップ

16日から18日にかけて行われた「日韓クラブチャンピオンシップ」[写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 日韓Wリーグのトップチームが競う「日韓クラブチャンピオンシップ」が、韓国の牙山(アサン)市にて9月16日から18日に行われた。同大会は、両国の競技力向上のために2002年から2008年まで開催された「日韓Wリーグチャンピオンシップ」を受け継ぐとともに、今回はWKBLからの呼びかけによって実現した招へい大会である。

 2009年以降、日韓Wリーグチャンピオンシップは閉会していたが、その理由は日本を含めた東アジア4カ国(韓国、中国、台湾)での開催を目指すために発展的解消に至ったものだった。そして2013年には東アジア勢4カ国でクラブチャンピオンシップを行うまでにこぎつけている。しかし、その後はまた開催時期などの折り合いがつかずにいたが、今回は「競技力を高めたい」という韓国側の要望により日韓戦が実現したものだ。

 出場したのは前年度の優勝のウリ銀行(5連覇中)とJX-ENEOSサンフラワーズ(9連覇中)、2位の三星(サムソン)生命とトヨタ自動車アンテロープスの4チームが出場して総当たり戦で行われた。 最終日まで全勝チームがない中で、両国のチャンピオンであるウリ銀行とJX-ENEOSが2勝1敗。トヨタ自動車と三星生命が1勝2敗となり、当該チームの対戦成績の結果、優勝はウリ銀行、以下JX-ENEOS、トヨタ自動車、三星生命となった。また開幕前に注目の一戦となったJX-ENEOSとトヨタ自動車の対決は、終盤まで競ったものの、大﨑佑圭と藤岡麻菜美が勝負強さを発揮したJX-ENEOSが67-63で制した。

■初戦の悪さから立て直した女王JX-ENEOS

藤岡麻菜美(右)[写真]=小永吉陽子

 初戦のウリ銀行に敗れた以外は、女王らしい勝負強さを発揮したJX-ENEOS。ウリ銀行戦の敗因はオフェンスリバウンドを19本も取られたことにあったが、2戦目以降はリバウンドから立て直し、トヨタ自動車戦では接戦ながら主導権を握り、三星生命戦では若手も出場機会を得て、40点差をつけて大会を締めくくった。とりわけ、戦力を補強したトヨタ自動車との一戦が注目されたが、佐藤清美ヘッドコーチは「トヨタだからと意識したわけではなく、負け癖がつくのは嫌だったので、勝てたことに手応えがあった」と語る。司令塔の吉田亜沙美が膝のリハビリ中のために藤岡麻菜美がメインの司令塔としてやりきり、トヨタ自動車で勝利を呼びこむ3ポイントを決めたルーキーの林咲希など、楽しみな戦力が浮上したことも収穫だ。

大崎佑圭[写真]=小永吉陽子

「開幕前にどんな大会になるのかわからなかったのですが、本番さながらの雰囲気で真剣勝負に勝てたので、自分にとっても、チームにとってもプラスの大会でした。トヨタに勝てたことは、現時点でのチーム力が把握できて、気持ち的に落ち着けたという点で、やって良かったと思います。これから全員が合流してチーム力を高めていきたい」(大崎佑圭)

宮澤夕貴[写真]=小永吉陽子

JX-ENEOSの若手メンバー[写真]=小永吉陽子

■新加入選手とのケミストリーが課題のトヨタ自動車

梅沢カディシャ樹奈(左)と水島沙紀(右)[写真]=小永吉陽子

 三星生命に勝利したものの、JX-ENEOSに4点差で惜敗し、ウリ銀行には58-67で敗戦。点差だけみれば接戦だが、得点が止まる時間帯が長く、課題を残したトヨタ自動車。ドナルド・ベックヘッドコーチは「日本では経験できない大会なので、ウリ銀行と三星生命と対戦するためにここに来た」と口にし、キャプテンの大神雄子は「この日韓戦を一つの大会として勝ち抜くために準備をしてきた」と意気込んで臨んでいた。それだけに、内容には満足することができなかった。また、長岡萌映子、三好南穂、馬瓜エブリンら、代表経験者が多く移籍してきたことで、その仕上がりにも注目が集まったが「65%から70パーセントの出来」(ベックHC)と現時点での採点は厳しい。ルーキーの安間志織、インサイドの出水田理絵ら若手が機能するプレーもあったが、チームケミストリーが深まるにはまだ時間を要するといえる。

ルーキーの安間志織[写真]=小永吉陽子

「今年は優勝を狙うために最初から飛ばしていきたいと思っていて、準備をしてこの結果だったので危機感しかありません。私たち経験ある選手が移籍組をカバーしきれていないし、何よりトヨタの徹底するディフェンスができていないから波がありました。この結果を、各選手がどれだけ危機としてとらえ、開幕までチーム力を高められるかです」(大神)

長岡萌映子[写真]=小永吉陽子

馬瓜エブリン[写真]=小永吉陽子

■代表戦では日本が優勢だが、クラブ戦で意地を見せた韓国

優勝を果たしたウリ銀行[写真]=小永吉陽子

 代表戦において、韓国には2012年から負けなしの日本。選手層の厚さやアンダーカテゴリーでの強化を見ても日本が優勢であり、当分、逆転現象は起こらないとの見方は強い。 しかし、注意しなければならないのは、トップ選手ならば、韓国にも競争力ある選手がそろっている点だ。韓国が近年低迷しているのは、世代交代が遅れていることに加え、主力の相次ぐ負傷が原因。今大会はウリ銀行がJX-ENEOSに勝利したが、その要因は代表クラスの戦力がそろったことだ。

 7月のアジアカップではケガでベンチを温めていたガードのパク・ヘジンが復帰。今回は代表を外れたが、得点源である180センチのキム・ジョンウンも復調していた。パク・ヘジンは178センチの長身で1、2番をこなせる選手で、藤岡にマッチアップすることで攻撃を惑わせ、キム・ジョンウンは37得点と爆発。さらには、アジアカップでベスト5を受賞したイム・ ヨンヒが安定したシュート力を発揮。運動量でもまさってリバウンドで優勢(46対31)に立ち、JX-ENEOSから勝利をもぎ取ったのだ。

大会MVPに輝いたウリ銀行のイム・ヨンヒ(右)[写真]=小永吉陽子

 ウリ銀行のウィ・ソンウヘッドコーチはホームゆえの負けられないプライドを見せつつも「準備の差でうちがまさっただけで、JXは強いチーム」という発言をした。確かにJX-ENEOSは吉田と渡嘉敷来夢が欠場し、完全な状態だったとはいえない。しかし、主力をそろえた韓国にはやはり警戒が必要との答えが女王決戦からは見え、代表戦における課題も見つかったという点では有意義な大会だった。

 両リーグの発表では、現時点では次回の開催は未定とされている。できれば、アジアの発展のためにも4カ国対抗戦を復活させてほしいものである。

取材・文=小永吉陽子