2017.12.09

体重差20キロを埋めるため「よく考えながらプレーをする」川崎ブレイブサンダース鎌田裕也

三河のバッツ、オルトンの両外国籍選手を相手にした鎌田[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

 12月8日、川崎市とどろきアリーナで行われた川崎ブレイブサンダースシーホース三河の試合。川崎は99-104で敗れ、昨シーズンを含め初の3連敗を喫した。最後の最後に三河のエース、比江島慎の連続得点で突き放された川崎だったが、今季、中地区首位を快走する強豪相手に最終盤までもつれる激戦を演じた。観客を魅了した好ゲームの要因の一つが、高さに勝る三河のインサイドを相手に奮闘した、川崎のディフェンスやリバウンドだが、その中心にいたのが、鎌田裕也だ。鎌田は197センチ113キロのパワーフォワードで、日本人としては恵まれた体格を活かし、主にニック・ファジーカスのバックアッパーとして、チームに貢献をしている。

 鎌田がマッチアップする相手は、ほとんどの場合、屈強なフィジカルを誇る外国籍の選手たち。日本人としては恵まれた体格と言えども、この日の対戦相手の三河で、鎌田のマッチアップする相手は208センチ133キロのアイザック・バッツ、208センチ120キロのダニエル・オルトンだ。鎌田とバッツは身長で約10センチ、体重でも20キロと、その体格差は歴然。手足の長さなども加味すると、実際の試合では数字以上のハンデを感じることもある。鎌田の主戦場であるインサイドのぶつかり合いは大変過酷で、骨と骨、肉と肉がぶつかり合うゴール下は、まさに戦場。そんな過酷な環境下、ひたすら耐えて忍んでチームを支えた鎌田に試合後のミックスゾーンで話を聞いた。

 鎌田は、惜しくも敗れた試合を振り返り「三河さんはインサイドがすごく強いので、そこで自分がどれだけ体を張ってディフェンスをして、チームにいい流れを持ってこれるかだと思っていました」と体に似合わない小さな声で、しかしはっきりと自身の役割を口にした。また、体格に勝る三河のインサイドに対し、どのような対策を持って臨んだかという質問には「チームディフェンスで抑えられればいいと思っていたので、簡単に押しこまれないようにと思っていました。体を張って、相手のインサイドを止めることを意識して試合に入りました」と語った。

鎌田はこの試合、ベンチスタートながら約20分間の出場を果たした[写真]=B.LEAGUE

 この鎌田の言葉どおり、北卓也ヘッドコーチも試合後の記者会見で「周りもヘルプをしながらディフェンスしようとは言っていました」と述べ、鎌田が忠実にチームのゲームプランを遂行していることを評価した。

 第3クォーター終盤でバッツからのパスで立て続けに3ポイントシュートを決められたシーンを振り返った北HCは「途中第3クォーターの終わりですが、何本もイージーにパスを出されてしまってというのはありましたけれど、あそこは仕方がないと思います。プランどおりのディフェンスはしていたので……」と鎌田をかばいつつも、「もっともっと体を張って相手を嫌がらせるようなディフェンスしてくれないと厳しいかなと思います」と鎌田の今後の成長に向けて課題を口にした。

 鎌田自身も「第3クォーターで自分がもう少し踏ん張って抑えられれば、三河さんの3ポイントを立て続けに決められたので……。あそこをがんばっていればもっとうちの流れになったのかなと思っています」と反省しきりだ。ただ、この実直なプレーヤーは、単に体を張って我慢をしているだけでない。「まあ、ほとんど外国籍の選手とのマッチアップなので、勝てるとは思っていません」と苦笑すると、「その選手が何をやったら嫌だろうかということをよく考えながらプレーしています。そうでもしないと身長差がありますし、日本人には難しいと思います」と語る。激しい体のぶつかり合いに目が行きがちだが、そこはやはりプロ。ゴール下の戦場でも様々な駆け引きが行われており、日本人選手が外国籍の選手たちと対等に戦うためには、鋭い観察眼と高い作成遂行能力が求められる。

 鎌田はさらなる自身の成長に向けて、「ディフェンスの強化はもちろん、オフェンス面でもっとチームに貢献できるよう外のシュートも練習し、インサイドでもチャンスがあったら攻められるよう、今後もやっていきたいと思います」と述べ、期待されるディフェンス能力だけではなく、攻撃面での貢献にも意欲を示す。

 チームの司令塔やスコアラーとは違い、なかなか日の当たりにくいインサイドのディフェンス職人だが、体格に劣る日本人選手のゴール下での奮闘もバスケットボールを観戦するにあたり、一つ注目してみてはいかがだろうか。

文=村上成

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