2018.02.02

世界初のエンターテイメント「B.LIVE in TOKYO」誕生秘話を富士通の担当者に聞く

これまでにない臨場感と一体感を生み出した「B.LIVE in TOKYO」[写真]=山口剛生
バスケットボールキング編集部。取材歴は20年を数え、これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、今年も氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

★成功に終わったイベントの秘話を富士通の担当者に聞く

 これまでにない臨場感、一体感を生んだ「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2018 次世代型ライブビューイング B.LIVE in TOKYO」。BリーグのICTパートナーとして、このイベントをBリーグとともに企画・運営を行った富士通の小山英樹氏(スポーツ・文化イベントビジネス本部 ビジネス企画・推進総括部長)と渡邊優氏(スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 ソリューションビジネス企画統括部 デジタルサービス企画部長)にインタビューするチャンスを得た。今回のインタビューでは小山氏には主にイベントの全体を総括、渡邊氏には技術的な面でのお話をうかがった。

――そもそもこのようなイベントを企画したのはどのような意図があったのでしょうか?
小山 「富士通のテクノロジーを使えば、このようなことができます」とご提案させていただいていて、Bリーグの葦原様と新しい観戦スタイルを模索していました。今回のイベントもこれまでのパブリックビューイングのようなスタイルではなく、4Kを使った映像の再現性や双方向でのやり取りを演出を含めて新しいことにチャレンジしようということになり、会場の設定などもいろいろなところでロケハンを行い、綿密に決めていった経緯があります。

4K映像が大型スクリーンに映し出された[写真]=山口剛生


熊本会場との掛け合いもタイムラグのほとんどない画期的なものだった[写真]=B.LEAGUE

――今回は約500名のファンを集めてのイベントになりましたが、この人数設定は会場によるものなのですか?
小山 はい、そのとおりです。元々は1,500~2,000人規模の集客を想定していましたが、それに見合う会場をお借りすることができなかったのです。“世界初”という企画もあり、どのようなイベントになるか、貸主様もイメージできなかったと思いますし、音の大きさの問題であったり、会場も盛り上が方に躊躇する方も多くて、思ったような会場を貸していただくことができませんでした。ですので、いろいろな制限の中での開催となりましたが、事故もなくイベントを完了させることができたので、まずは一安心したところです。ただ、スタッフの間からはイベントの最中から、「ああすれば良かった」、「こういうこともできた」という意見が挙げられましたので、またこのような機会をいただければ、より良いイベントにできると考えています。

――会場設営のこだわりも色々とあったのでは?
小山 念頭にこれまでにない空間を作りたいという想いがまずありました。元々熊本会場の音をそのまま持ってこようという狙いだったので、実際の会場に似たようなコートやゴールを作るべきだという結論に至りました。そして熊本会場のゴールの後ろにマイクを仕込むことで、さらに現場に近い雰囲気づくりにもつながったと思っています。

「これまでにない空間を作りたかった」と、富士通の小山英樹氏[写真]=加藤誠夫


映像送信や音のミキシングなど、「ぶっつけ本番で対応した」と富士通の渡邊氏[写真]=加藤誠夫

――テクノロジーでのこだわりはいかがですか?
小山 映像はこだわりました。大きなスクリーンを使って“没入感”を味わっていただくことを目指していたので、今回使わせていただいたBリーグの公式映像を普段の2Kから4Kの映像を使ったのです。そのために、特別に中継車も出していただき、Bリーグにもご協力をいただきました。しかし、4Kという莫大な映像データを熊本から1,300キロ離れた東京に高画質のまま持ってくるという挑戦もあったのです。

渡邊 データを送るネットワークで弊社が用意した専用線とバックアップ用にインターネット回線を使用しました。専用線はデータを欠落することなく安全にデータを受け取れたのですが、一方注目したいのはインターネット回線でもほぼ問題なく受け取れていたことです。ただ完璧というわけではなく、データをロストすることもあったのですが、弊社の転送装置で落ちたデータを自動で復元できました。これは実用化に向けてとても重要なことで、比較的に価格も抑えることができるので、4K画像を使ったライブビューイングが各クラブでも実現できるのではないかと考えます。

――臨場感の高い音はどのように再現されたのですが
渡邊 コートサイドに20本のマイクを置き、集めたその音を20個のスピーカーで再生しました。再現性を高めるためにマイクの数や置く場所にもこだわっています。何度もシミュレーションを行った結果、コートサイドに6本、天井に14本を配しました。また東京会場の“箱”の大きさとスピーカー設備を鑑み、20本という結論に達しています。

――床下にマイクを設置するという発想にはびっくりしました。
渡邊 初の試みです。実際に熊本の会場には3度ほど行きましたが、最初はどんなマイクを使えば音を拾えるかを何パターンも確認しました。最終的に32個のマイクを設置し、東京では8個のスピーカーで再現するのですが、これも試行錯誤した結果によるものです。

――スピーカーの数が少ないのはなぜですか?
渡邊 ダイレクトに音をそのまま再生させても余計な音が入ってしまう場合があります。これらをミキシングして、どこのスピーカーで出せば客席に座っているファンの方に一番効果的に聞こえるかというところまでシミュレーションしました。

――リハーサルはどれぐらいされたのですか?
渡邊 昨年の12月に実際に熊本の会場で1回行いました。日程的にもぎりぎりですね(笑) それにリハーサルといっても疑似の試合をしてもらうだけで、もちろん3,000人もの観客の歓声がどうなるかなど想像できない部分もありました。それをある程度想定して、試合の直前の観客の状況や実際の音を確認しながら東京の会場で微調整したという感じです。歓声が大きいとドリブルの音やバッシュの音が消えてしまうので、そのような細かいところもぶっつけ本番で対応したのです。

小山 ですので、今回の開催で様々なノウハウが蓄積できました。これを今後どのように還元していくか、また新たなことに挑戦していくかは、Bリーグと一緒に進めていきたいと思います。

――今後、このようなイベントは収容人数で何人くらいまで可能なのですか?
小山 元々は2,000人くらいを予定していました。この数字は、B1のクラブは5,000人収容のアリーナがライセンスとして必要であり、アウェーの時、40%のファンが見に来られることを想定した人数なのです。クラブで使用されている体育館でもできますし、ライブ会場やシネコンでも実施できます。弊社のノウハウをパッケージでご提供することも可能ですし、ライブビューイングのあり方を変えていくことができると、今回のイベントで確信できました。また、バスケットボールの限らずプロ野球やサッカーでもホームゲームのチケットを確保しにくいケースが多いようで、スタジアムの周りでライブビューイングを行えると言えます。

――バスケ界だけでなく、日本のスポーツエンターテイメントに向けての提案でもありますね。今後、日本のバスケットボール界にどのようなサポートをされていくつもりですか
小山 富士通が持つモーショントラッキング機能を生かした選手強化は1つやっていきたい分野だと思っています。さらに競技者、指導者、審判のデータベース化にも挑戦したいですね。いわゆるデジタルマーケティングと言われる、どのようなお客さんが週に何回試合観戦に来て、そこでいくらお買い物をされるかなど、このような分析も可能です。日本のバスケ界に関わるすべての人たちを、ITを使ってサポートする。できることには、これからもどんどん挑戦していきます。

今回のイベントで得たノウハウは各クラブにも還元できると富士通の小山氏は話してくれた[写真]=加藤誠夫

取材・文=入江美紀雄