2018.02.17

川崎ブレイブサンダースの郵便配達人、ファジーカスがチームにもたらす安定感

ファジーカスは、16日の北海道戦で30得点12リバウンド5アシストをマーク[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

 2月16日、川崎市とどろきアリーナで行われた東地区3位の川崎ブレイブサンダースが同地区6位のレバンガ北海道を迎え撃ったB1リーグ第20節第1戦。激しい戦いを繰り広げる東地区において、チャンピオンシップ出場のためにも重要な位置づけとなったこの試合は、川崎が最大21点あったビハインドを跳ね返し、77-72と劇的な逆転勝利を収めた。

 この試合のヒーローインタビューは第3クォーターに激しいディフェンスと、持ち前の爆発力でチームに勢いをもたらした藤井祐眞だった。藤井の躍動する姿は、観客を巻き込み、逆転への期待感でアリーナのボルテージを一気に高めた。しかし、苦しい前半も逆転に向けた後半も、いつものように安定的にチームへ貢献し、試合をとおして北海道を苦しめたのは、やはり川崎の大黒柱、ニック・ファジーカスだろう。

 ファジーカスはこの試合、30得点12リバウンド5アシストに加え、2スティール2ブロックをマーク。2ポイントシュートの確率は63.2パーセントという驚異のスタッツを叩き出した。210センチ111キロと体格には恵まれているものの、彼のプレーは驚くほどに地味だ。

 激しいダンクも、相手に仁王立ちするようなブロックショットも、目の覚めるようなあざやかなアシストもない。どちらかと言えば、激しさとは対極にある脱力したフォームから、緩やかな弧を描くシュートを丁寧にリングに送り込み、確実に得点を重ね、丁寧にリバウンドを集めてチームにボールを供給する。その姿にはプレースタイルの違いはあれど、NBAのレジェンドで“メールマン(郵便配達人)”のニックネームで愛されたカール・マローン(元ユタ・ジャズ)にも通ずるものがある。

 マローンの愛称として多くのNBAファンに知られるメールマンというニックネームは、郵便配達員のようにどんな時にも確実にボールをゴールに「配達する」という由来があると言われているが、まさにファジーカスは川崎の郵便配達人と言っても過言ではないだろう。

分かっていても止められないファジーカスには、相手指揮官が“やられても良い”というゲームプランを立てることも少なくない[写真]=B.LEAGUE

 重要な試合でチームに安定感をもたしたファージカスに、北海道戦のポイントを聞いてみると「(前半の悪い流れを断ちきって逆転につなげるには)ディフェンスで相手を止めることが大事だった。相手を止めて、リバウンドをとって、走ることができたので、流れを変えることができた」と、勝負の分かれ目となった第3クォーターに、北海道をわずか9得点に抑えこんだチームのディフェンスについて言及した。

 また、激戦が続く中、自身のコンディションについて問われると「間違いなく疲れてはいる」と認めたうえで、「前節のアルバルク東京戦では自分のプレーも(自己最低の10得点と)良くなかったし、チームを引っ張ることができなかった」と高いレベルでチームを引っ張っているファジーカスらしい反省を口にした。続けて「ただ、ときどきそういう試合もあるさ。先日、ゴールデンステート・ウォリアーズの試合を見ていたが、ケビン・デュラントも10点しか取れていなかった。NBAのトップ選手でもそういうことがあるのだからと気持ちを切り替えたよ」と笑顔を見せると、「その結果、いつもの(練習での)ルーティンをこなして、今日の結果につなげることができたと思っているよ」と述べた。

 わかっていても止められない。気がついたらやられている。プレーは地味でもその存在感は圧倒的なファジーカス。ライバルチームとってはやっかいな川崎の郵便配達人は、今日もゴールにボールを配達する。

文=村上成

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