2018.05.21

チーム一丸となってファイナル進出を勝ち取ったアルバルク東京

三河相手に2連勝を飾りCSファイナルへ駒を進めたA東京[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

三河の生命線、桜木を竹内、ウィリアムズがシャットアウト

 5月19日、20日、ウィングアリーナ刈谷で「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」セミファイナルのシーホース三河vsアルバルク東京が行われた。

 リーグ全体1位で、クォーターファイナルで前回チャンピオンの栃木ブレックスを破った三河と、激戦の東地区2位でチャンピオンシップに進出したアルバルク東京との一戦は、両試合ともオーバータイムにもつれこむ大熱戦となった。そして、その2戦ともA東京が制し初のファイナル進出を果たしたのだ。

 短期決戦の常道は初戦を制することにあるが、振り返ってみれば、A東京が初戦に勝ったことが、このセミファイナルで大きな意味を持ったことになったと言えるだろう。

 第2戦を終えて、記者会見に臨んだA東京のルカ・パヴィチェヴィッチHCは対三河の戦略について「他のチームであれば3つのポイントを準備すればいいが、非常に強い三河の場合には5つも準備しなければいけなかった」と解説。さらにその5つの中の1つが桜木ジェイエールに対する守りだ。

「三河のオフェンスはジェイアールのポストアップから始まる。そこで、マッチアップする(竹内)譲次とジャワッド(ウィリアムズ)には、ペイントの中にジェイアールを入れないことを指示していた」と明かしたのはルカHC。竹内とウィリアムズはポジショニングで体を張っただけでなく、桜木に入るパスをカットして反転速攻の起点となった。

三河の起点である桜木を抑えたことが大きな勝因となった[写真]=B.LEAGUE

 桜木は今シーズン、1試合平均で15.5得点を挙げただけでなく、平均5.3本のアシストをさばくことで三河に大きく貢献してきた。ある意味、生命線でもあるこの部分をA東京が抑えたことで、三河は思いどおりの試合運びができなくなる。事実、桜木のスタッツは第1戦が4得点4アシスト、第2戦が2得点2アシストにとどまった。

 桜木対策以外にも、A東京はレギュラーシーズンと違う守り方をしてきた。三河の2人のビッグマン、アイザック・バッツコートニー・シムズにはヘルプに入り、ボールが入った際は2人がかりでプレッシャーをかけ、その後はリバウンド争いもキャッチできなければボールをティップ(はじいて)し、アウトサイドに待つ味方にパス。機を見て、ここから速攻を仕掛けている。

「往々にしてオフェンスリバウンドの強いチームは戻りが遅くなる。もちろんうちがディフェンスリバウンドを確実に取れるのが大前提だが、常に走るように指示をしていた」(ルカHC)。速攻からの得点は2試合を通じてA東京が31得点に対して、三河は8得点。この部分でもA東京の狙いが的中しているとも言える。

1週間、周到な準備をしてきたA東京が三河に勝利

練習だけでなく、ルカHCはスカウティングにも多くの時間を割く[写真]=B.LEAGUE

 ハードな練習で鳴らすルカHCだが、次戦への準備に時間をかけることでも知られている。すなわち、それがスカウティングしたものを分析し、対戦チームへのアジャストを行うことだ。

「比江島(慎)選手と金丸(晃輔)選手のように、力のある選手にはいくらスカウティングをしてもそれを上回るだけの力を持っていますから、何本かやられたシーンはありました。それでもやっぱり(試合までの)1週間、本当に徹底して相手の動きを確認してきたつもりです。それがあったことに加え、ザック(バランスキー)、(馬場)雄大、(菊地)祥平さんが体を張ってディフェンスしたのも大きかったと思います。さらに桜木選手のローポストからの攻撃が三河のオフェンスに起点になりますが、そこも思いどおりにプレーはさせていなかった。これらも準備がしっかりできてきたからだと思います」と田中大貴は解説する。

 その田中は第1戦、「シュートのタッチが悪かった」ということもあり、9得点にとどまったが、第2戦では「タッチが良くなった」ことに加え、A東京が得意とするピック&ロールからのオフェンスの部分を微調整したという。

第2戦では26得点をマークしてチームを勝利に導いた田中[写真]=B.LEAGUE

「うちのインサイドの選手はスクリーンをかけた後も中にダイブしてくれているのに、それを活かしきれなかった。その反省から自分たちがもっとディープな位置までアタックすることが大事と、ミーティングでも話がありましたし、そこは意識してやりました」と田中。その言葉どおり、田中をはじめ、安藤誓哉小島元基のガード陣もスクリーンの後、ダイブに備えて構えているディフェンスを尻目にリングにまでアタック。そのままレイアップを決めるシーンが幾度となく見られた。

 それだけA東京が三河のストロングポイントを抑えたとはいえ、2試合ともオーバータイムでの決着となったわけだ。三河の鈴木貴美一、A東京のルカの両ヘッドコーチは互いの実力を認め合った上に、「1本のリバウンド、1本のミスが命取りになった」と異口同音に試合を振り返っている。

 三河も当然、A東京へのスカウティングができていたから40分のゲームタイムでは60点台というロースコアに得点を抑えることができたわけである。

 ただ、その1本のミスを引き出すのもスカウティングによるものが大きい。以前、馬場に取材した際、「本当にうちのコーチ陣は休みがないですよ。試合が終われば翌週の準備をしている。僕らは月曜日に休めますが、皆さん、月曜日はビデオ作りです。ありがたい話です」と語っていたことを思い出す。コートでプレーする選手やベンチで指揮を執るHCだけでなく、コーチ陣やスタッフの地道な働きがA東京を初のファイナル進出に尽力したことは間違いないだろう。

文=入江美紀雄

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