2018.10.17

慣れ親しんだチームから自分にプラスになる移籍を決断した栗原貴宏

川崎を離れ、今季は栃木でプレーする栗原 [写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 新たな歴史を歩み始めたチームとともに、新たな歴史を歩み始めた選手がいる。ルーキーイヤーから計8シーズン所属した川崎ブレイブサンダースを離れ、栃木ブレックスに移籍した栗原貴宏である。昨シーズン、ラストゲームとなった船橋アリーナでの一戦で彼は感情が高ぶる中で言葉を選びながら感謝の気持ちを述べていた。あれから約5カ月後の10月13日、新天地で非常に充実した姿を見せていた。

 彼が移籍した理由、それは自分にプラスになるということであった。

「プロ選手になってから移籍という選択肢が自分の中に芽生えてきて、いろいろな経験をしたいと思っていました。移籍してみないとわからないこともあると思うし、ずっと同じチームでプレーしているとそこのバスケットしかわからないですよね。他のチームの考え方やバスケットを知ることで自分にプラスになるんじゃないかなと感じていて。川崎もDeNAさんにオーナーが変わって、そのタイミングで栃木からも話をいただきました。移籍という選択肢を持っている中で、行動しないで後悔するのは嫌だったので行動を起こそうと思って移籍を決断しました」

 昨シーズンからほぼロスターが変わらない栃木に加わり、手探りの中で懸命にチームの力になろうと今は必死にプレーしている様子であることを続けて言葉にした。

「まだ100パーセントチームに馴染めているという手応えを感じきれていないのが現状ですね。ずっと同じチームでプレーしていたのもあって、シュートを打つタイミングや攻守のチームルールなど細かい部分で理解していない時があって。ベンチからゲームを見ているとチームメートが阿吽の呼吸というか、スムーズにプレーしている感じに見えるので、自分も早く慣れていかないといけないかなとすごく感じています。チームとしての連動性が確立されているので、自分がコートに立った時にリズムを崩さないようにしないといけない。でも、それはシーズンが進んでいくにつれて少しずつ良くなってくるとは思うので、しっかりと努力を続けていかないといけないかなというところです」

今季はここまで全4試合に先発出場 [写真]=B.LEAGUE

 その中でもやはり持ち味のディフェンスとアウトサイドシュートで貢献していきたいと意欲を示している。

「まずはディフェンスやリバウンドにルーズボールへの意識を第一にプレーしたいです。そうすればオフェンスのリズムも良くなってくると思うので。あとはキャッチ&シュートというのは一つの武器なので、しっかりシーズン中に向上させていきたいですね。また、田臥(勇太)選手や遠藤(祐亮)選手など周りの選手が相手ディフェンスを崩してパスを出してくれるため、そのパスを受けて得意のコーナーからしっかり決められるようにしたいです。以前よりもオフェンスでボールを持つ機会が多くなるので、しっかりと状況判断して、いいオフェンスを展開できるようにチームに貢献していきたいと考えています」

 そして、栃木ファンの熱い声援には格別な思いを抱いていた。

「アップの時からワクワクするような高揚感があって、いざゲームが始まったら、いいプレーがあるとすごい歓声が出るし、もっと自分のプレーでアリーナを盛りあげたい気持ちが出ています。味方としてあの大歓声を体感できるのはすごく気持ちいいです。今日のゲームも終盤にビハインドを背負っていた時に逆転するんじゃないかという雰囲気を不思議と感じました。東芝時代や川崎時代に、今日のような展開からひっくり返された経験があるので。とにかく今日のゲームはあの声援が力になったと思うので、これから何十試合もホームゲームがあるので楽しみです」

 また、自然豊かなゆったりとした栃木での生活も充実している様子で「子どもが2人いるんですけど、田舎というかあまりゴチャゴチャしていないところが好きなので伸び伸び暮らしています。息子は虫とか好きで、夏は一緒に虫取りに行ったりしていました。家には庭もあって、そこでチョウの幼虫を楽しく観察しているんですよ。自分はしていないですけど」と笑顔を見せながらコメントした。

 最後に「心身ともにリラックスしながらバスケットに打ちこめているし、私生活でも充実して過ごしています」と締めくくった栗原。彼自身の中でチームに100パーセントフィットできた時、それは栃木がより飛躍する時になるだろう。

文=鳴神富一