2018.11.11

持ち味のハードなチームディフェンスを体現し、大勝で東地区首位をキープした栃木ブレックス

田臥不在ながらも、栃木は好調を維持[写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 チームの顔でもある田臥勇太をケガで欠きながらも好調をキープしている栃木ブレックス。11月10日、チーム状態が上向きのライジングゼファー福岡をホームに迎えた一戦は、序盤から持ち味のハードなチームディフェンスから早い展開に持ちこみ、最終的には32点差の大差で勝利を収めて東地区首位をがっちりとキープした。

 ゲーム序盤は福岡のインサイドをしっかりと抑えきれずにリードをされてしまう展開となったが、よりディフェンスでプレッシャーを掛けて相手オフェンスのリズムを狂わせ、タフなシュートを打たせて、リバウンドを確保した上で早い展開のオフェンスにつなげていく。第1クォーターから飛びだした渡邉裕規のクラッチタイムである、通称“ナベタイム”によって、一気にペースを握った。3本の3ポイントを沈めるなど第1クォーターだけで11得点を獲得して勝利に大きく貢献した渡邊は、「相手はインサイドは強力でアウトサイドもシュートが非常に入るので、ゲームの最初でつまずいて点差が離れてしまうと、追いつくのに非常にパワーを使ってしまうと感じていました。エナジーを持ってしっかりとゲームに入るというのは非常に大切だと思っていて、それは(安齋竜三)ヘッドコーチにも言われていて選手全員が意識していました。そういうところでしっかりとプレーできたのが良かったかなと思います」とゲームを振り返った。

第1クォーターで3本の3ポイントを沈めた渡邉[写真]=鳴神富一

 第2クォーター以降、栃木はさらに相手を突き放していく。その中で活躍したのが相手の主軸であるデクスター・ピットマンをしっかりと抑え、オフェンスでは素晴らしいスプリントから豪快に2本のダンクを決めるなど、計17得点と大活躍を見せた竹内公輔であった。「前日に13時間寝たのが好調の要因かな」と冗談交じりで笑顔を見せた上で、「チームとしていいディフェンスがしっかりと継続できてしっかり勝てたというのが良かったです。ピットマンにはリングに近い位置でボールを持たせないなどゴール下で自由にさせないような心構えでディフェンスしていました。今日はトランジションでいい勝負ができたと思っています。チームメートも常に自分が走っているのを意識してくれていて、簡単なシュートを打てた感じがしています」と勝利の要因を口にした。

攻守にわたってチームを支えた竹内[写真]=鳴神富一

 3ポイントは計12本成功、相手のターンオーバーから21得点を獲得し、ファストブレイクからの得点も21得点など、結果とともに内容も素晴らしいゲームを展開した栃木。しかし、この日38歳の誕生日を迎えた安齋HCは意外にも会見で厳しい言葉を発した。「前の2試合でやっていたようなチームディフェンスを出だしからやろうという話をしてきて、できていた時間は長かったなと思いましたが、控えから出てきた選手が自分の役割をしっかりと理解していない感じがしました。その部分の底上げというのが強豪に勝つためには必要だと思いますし、チームとしてまだまだ成長できるところがたくさんあると思いますので、今日の勝ちからしっかりと学んで明日も戦いたいです。ディフェンスでチームルールを守れずに相手に簡単にやられてしまう場面がありました。自分たちの激しいディフェンスは遂行するために本当はいろいろな選手を使いたいけど、例えば点数が詰まっている時には控えを出せないというふうになってしまいます。一人ひとりがもうちょっと危機感を持ってプレーに臨んでほしいとゲームを観ながら思っています」

 最初に述べた田臥がゲームに出られない中でも勝利をしっかりと収め続けている栃木であるが、渡邉は彼の存在の大きさを実感しながらも「誰が出ても高いレベルで同じ水準でプレーできているのが自信になっていますね。さらにはやってきたことができているというのも自信になっていますし、誰か1人に頼るというよりは一人ひとりがしっかりと自覚を持ってやっていることが今は大事なのかなと思っています」とチーム力という部分が結果に表れていると好調の要因を述べた。

 チームとしての継続してきていることへの自信もありながら、再び頂点にたどり着くためにはまだまだ足りないという“勝って兜の緒を締めよ”という言葉が似合うような状況の栃木。その意識の高さと向上心が現状の首位という結果に表れている。

写真・文=鳴神富一

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