2018.11.18

戸惑いと嬉しさを感じながら参加した日本代表候補合宿、高橋耕陽がつかんだ収穫と課題

16試合を終え、1試合平均9.2得点をマークしている高橋[写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

「本当に行っていいのかなと正直思いましたね。まさか自分が候補に選ばれると思ってもいませんでした。呼んでもらえた事は非常にありがたいですし、Bリーグ全体を見た中で自分を選んでもらえたということに関しては非常にうれしかったです」という言葉でスタートしたインタビュー。

 これは今月末からの富山市総合体育館で開催されるホーム2連戦、「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 2次予選(Window5)」の日本代表候補に選出された滋賀レイクスターズの高橋耕陽が残した言葉だ。今回の合宿はBリーグを代表する選手たちで構成され、高橋は代表候補の中で下から2番目の年齢で選出された。彼自身はこの夏に開かれた「第40回ウィリアム・ジョーンズカップ」における若手主体の代表には選出されていたが、ある意味フル代表として選ばれたのは今回が初めてだった。

 “自分自身よりもバスケットがうまい人たち”という言葉を用いた上で、代表合宿に参加した感想をこう述べてくれた。「初めて代表合宿に行った時は若いメンバーで同年代も多くいたので、とても話しやすかったですし、やりやすさを感じました。今回呼ばれた時は年齢が下から2番目で、他のメンバーと関わり合いが全くない中で参加した形だったので、すごく戸惑いました。どのように他のメンバーとコミュニケーションを取ったらいいのかわからなくて、 それでも少しずつ先輩たちの話の輪に入って行きながらコミュニケーションを取っていた感じでしたね。太田敦也選手(三遠ネオフェニックス)は大学の先輩だったので、結構一緒にご飯に連れていってくれてすごく良くしてくれました。ベンドラメ礼生サンロッカーズ渋谷)とは初めての代表活動でも一緒の部屋で、今回もいろいろな話をしました。やはり年齢が近い方がコミュニケーション取りやすいなと思いましたね。その中で遠慮しながらプレーしてしまっていた部分もあって、エルマン・マンドーレアシスタントコーチからジョーンズカップでプレーしていた時のようにアグレッシブにプレーすればいいよと言われていました。それでもなかなかうまくいきませんでしたね」

現在24歳の高橋はオフェンス力が武器[写真]=B.LEAGUE

 タフなスケジュールの中で参加した代表合宿だったが、素晴らしい経験を積めたようだ。「ある意味夢みたいなところだったので、今回はいい経験ができたと感じています。最終的なメンバーに入らなかったとしても、この経験は今後につながっていくと思います。非常にうまい選手たちと一緒にプレーするということで、彼らのプレーを見て勉強させてもらいながらいろいろなものを盗みました」

 経験とともに自分自身が実感した収穫と課題も今回の合宿で見えてきている。「スピードを活かして走るというのが自分の持ち味なので、その部分はしっかりと表現できました。あとはクイックネスを活かしてディフェンスの背後にカットしたりと動きの部分で感覚をつかみながら練習に参加できたと、そういう部分はうまくいったと思います。 しかしシュート力が他のメンバーと比べるとあまりにも足りないというのが今後の課題と練習していて感じました。さらにはフィジカルの部分で強化していかないとディフェンスでも相手を抑えることができないという部分もあって、そういう部分も足りないなと実感しました。そういう課題を一つひとつクリアにしていきたいと思っています。またバスケットに向き合う気持ちの作り方というのも勉強になって、滋賀には素晴らしい経験あるチームメートがいるので積極的にいろいろと聞いて実践していきたいと感じています」

 彼が日本代表でもプレーして活躍するために、そのヒントを滋賀のショーン・デニスヘッドコーチはこう分析している。それは彼自身が抱いた課題にもリンクしているようであった。「彼自身素晴らしい逸材だと思いますが、どうなったら素晴らしい選手になれるのか彼自身が気づいていないような気がしています。高いプロ意識を持ってやり続けることができれば、コンスタントに結果を出せる選手になってくると感じてます。今はそのレベルに達していません。そうなるためにはしっかりとハードワークをし続けることが重要だし、さらにはバスケットをもっと見て学ぶという知識の部分でも向上すべきです。もっと貪欲にバスケットボールに取り組んでほしいです」

 貪欲にハードにアグレッシブに、このことを自分自身で感じて気づくことができた今回の代表候補合宿への参加。この経験が彼のバスケットボール選手としての飛躍のきっかけになる、そう感じた日であった。

文=鳴神富一

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