2019.03.09

サンロッカーズ渋谷で存在感を放つ盛實海翔「自分が思っている以上にできている」

特別指定選手ながらSR渋谷存在感を示している盛實 [写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 3月8日の青山学院記念館には金曜日の夜にも関わらず3580名の大観衆が集まり、熱狂的な会場に生まれ変わっていた。渋谷区の花であるハナショウブのカラー、紫色に彩られたチーム初の3rdユニフォームに包まれたサンロッカーズ渋谷の面々。現在中地区首位でもある新潟アルビレックスBBに試合の主導権を終始渡さず、92-77のスコアで快勝で連敗を「4」でストップ。チャンピオンシップのワイルドカード争いで崖っぷちの状況でもあっただけに、この1勝は今後の流れを変える大きなターニングポイントとなったに違いないだろう。

 相手に対して一度も逆転されない形で快勝したSR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチは「練習からまずは連敗をストップするために今日に集中しようということをずっと話していました。アウトサイドシュートが非常に調子が良くて入ったというのはありますけど、ディフェンスでほぼほぼ準備してきたことを選手がしっかりやってくれました。少しやられた部分はありましたが、そこも想定内で選手たちがその部分も含めてしっかりプレーしてくれたと思います」とゲームを振り返った。加えて、今日の試合に向け、ある逸話を話してくれた。「最後は敗れてしまいましたが、先週名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ)さんが新潟さん相手にいいバスケットをしていて、そこも参考にしました。実は名古屋の遠山(向人)アシスタントコーチに1時間くらい電話していろいろと話をしました。元上司なので、いろいろと話を聞いて。話を聞いた上で自分たちのディフェンスや僕が考えているバスケットスタイルをミックスしてやった感じです。遠山さんには何か今度おごります(笑)」と笑顔で語った。

 そんな試合のコート上で輝きを見せていたのが盛實海翔である。現在専修大学の3年生にして昨年12月末に特別指定選手としてチームに加入したガード。後半戦からすでに12試合の出場、平均出場時間も15分弱としっかりと戦力として活躍を見せている。レフティーであるという特徴もあるが、ボールを持った瞬間の独特なステップとリズムで相手をいなし、打点の高い華麗なアウトサイドシュートも魅力的だ。この日は相手のファウルを受けながら3ポイントを沈め、加えてステップバックからの3ポイントにゴール下への華麗なアシストなど13得点3アシストの活躍を見せて会場を大いに沸かせた。

試合では4本の3ポイントを沈めた[写真]=鳴神富一

「ユニバーシアード代表に向けた合宿から昨日戻ってきて、チームで1回練習して今日を迎えました。なので相手への対応などは多少難しい部分はあったんですけど、周りの選手が声掛けてくれましたし、そういう部分ではやれた感じでしたね。個人としては、まあまあという感じですかね。シュートが入ったのは良かったんですけど、大事な部分でミスしたりしたのが目立ってしまったので。もっとしっかりとした判断ができた部分もあったので、まだまだかなという感じです」と、試合後は冷静に振り返った盛實。コートに立てている現状に関しては、「すごくありがたい状況ですし、いい経験ができてプラスになっているという風に感じています。正直自分が思っている以上にできているというのはあります。最初チームに来た時はフィジカルの部分で課題をすごく感じていましたが、その中でも試合で使ってくれて自分の良さがところどころ出せているかなと思いますね。プレーに関してはそんなに意識している部分はないですけど、大学とでは役割が違うので。ここではキャッチ&シュート的なことが多くあったりするんですけど、そういう意味ではボールが来たら迷わずシュートを打つと決めています。でも、いつもどおりシュートを打っている感じです」と分析する。

 その冷静さは普段からも変わらないみたいで試合に臨むにあたり、今まで全く緊張したことがないという強いハートの持ち主でもある。「緊張は全然しないです、今までもないですね。結構前日とかにしっかりイメージして試合に臨んでいて、そういう準備はしっかりするようにしています。練習の時もそうですが、寝る前とかにイメージトレーニングはやっています。有名な選手の話を聞いたり見たりすると、しっかりイメージトレーニングしているというのがあったので真似してみようと思ってやっています」と緊張しない秘訣を語ってくれた。

 彼が参考にしている選手を聞いてみると、ジェームス・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)やマヌ・ジノビリ(元サンアントニオ・スパーズ)の2人を挙げた。その理由として「能力よりも巧さでプレーするような選手のプレーはすごく参考になりますし、真似できるようなプレーもあるのでよく見ていますね。巧さで魅せるという部分に関して、自分の中でしっかりと楽しむことを第一にながら、どの舞台でもたくさんの方が観に来てくれている中でそういう人たちに楽しんでもらえるようなプレーを魅せたいなとは思っています」と話してくれた。

 伊佐HCが記者会見で「可能であれば、すぐにでも契約したい選手ですね」と言わせる逸材は、そのコメントに関しては笑顔で素直に嬉しく感じていた様子だった。最後に今後の目標をうかがうと「今の時点で明確な目標とかはないんですけど、皆さんから注目されたり、皆さんが楽しんでくれるようなプレーができる選手になれればなと思います。大学でのプレーもまだありますし、プロ選手になった時とかに皆さんが注目してくれて楽しんでくれるような選手になりたいですね」と語った。

 彼のプレーで会場が沸く瞬間が増えるにつれて、チームの勝利を大きく引き寄せられるだろう。SR渋谷にとって彼がいる時間の中でいかに上位との差を詰められるか。チャンピオンシップ進出への大きなカギの1つになるに違いない。

写真・文=鳴神富一

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