2019.03.10

栃木ブレックス、昨季の借りを返す快勝…渡邉裕規が29得点、比江島慎は古巣戦でホーム初先発

今季2度目のスタメンに起用された比江島慎 [写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 3月9日、チーム史上最多となる4548名のファンが詰めかけたブレックスアリーナ宇都宮。それは栃木ブレックスvsシーホース三河の一戦がいかに注目されていたカードだったかを物語っていた。昨シーズンのチャンピオンシップで三河に敗れた栃木は、選手やチームスタッフだけでなく、ファンも含めてリベンジの時を待っていたに違いない。

 さらに比江島慎は初の古巣戦。逆に生原秀樹は栃木凱旋となった。特に比江島は元チームメートで、阿吽の呼吸を見せてアリーナを湧かせていた金丸晃輔とのマッチアップに期待が高まった。しかし、金丸と桜木ジェイアールがチームには帯同しているものの試合を欠場。予想とは違った形でゲームがスタートした。

 そんな比江島はホーム初スタメンでコートに立つことになったが、少し緊張していたという。「今までうまくいっていた中でのスタメン起用だったので、自分が出てプラスにならないといけないというプレッシャーを感じていました。スタメンで出た割にはスタッツとしては少なかったかなと。もっと残さないといけないと感じています」。古巣と対戦する人生初体験には「どうなるのかというようなワクワク感がありながらも対戦は楽しみにはしていました。いつもとは違う感じがありましたけど、平常心を保って、チームルールを守ってプレーしていました。これまで着ていた(三河の)ユニフォームの選手が目の前にいて不思議な感じで。試合はあっという間に終わった気がしますね」と率直な感想を口にした。

チームハイの19得点をマークした岡田侑大 [写真]=鳴神富一

 しかし、ゲームは三河が栃木のお株を奪うような非常にハイテンポな展開でペースを握っていく。その中心にいたのが若干20歳の岡田侑大。彼がボールをプッシュしながらドライブやアウトサイドシュートで得点を重ね、アリーナをどよめかせた。最終的にチームハイの19得点を挙げたルーキーは「第1クォーターはいつもにはないようないいリズムのオフェンスが展開できたけど、後半に入って自分たちのディフェンスの戻りが遅くて相手のファストブレイクやゴール下でイージーに決められました。明日はそこを改善していきたいです。エース2人がいない中で自分がチームに勢いをつけたいと感じていて、みんながどんよりしたムードの中でも自分が点数を取れば流れに乗るんじゃないかと考えて、出だしからプレーしました」とゲームを振り返った。比江島や両チームのヘッドコーチも想像以上のプレーぶりに、すごいいい選手と試合後に彼を賞賛した。

今季最多の29得点をあげた渡邉裕規 [写真]=鳴神富一

 三河に流れそうだったゲーム展開をストップしたのが、渡邉裕規。第1クォーターだけで18得点と、ゲーム後半に起こる “ナベタイム” が序盤から始まった。最終的にゲームハイの29得点を挙げた彼は「リズムよく打てましたし、シュートが1、2本打って落ちなかったこともあって、自信を持って打ち続けられた。重いミスが続いていたのでチームを鼓舞するのもありますけど、昨シーズンの悔しさを思い出さないといけないですし。その上で相手はエースが2人出ていない状況で、ミスやだらしないプレーをするのが一番後悔の要因になるので。ワンシーンごとにしっかりとやっていかないと勝てない相手なので、そういう部分がコートに出たかなと思いますね」と自身のプレーを振り返った。

 ハイスコアの50-49で折り返したゲームは、第2クォーターから効果を見せ始めた栃木らしい激しいプレッシャーディフェンスがより顕著にコート上で繰り広げられると、三河は徐々にタフショットが多くなってリズムを失っていく。徐々に点差が広がり、最終的に98-77のスコアで栃木が快勝して、ホームを守った。

 三河の鈴木貴美一HCは敗戦の中にも前向きなコメントでゲームを総括した。

「金丸選手と桜木選手が不在の中で若い選手がアグレッシブに前半からやってくれていい戦いができたと思います。ただ第3クォーターに入ってから若さが出て、ミスからブレイクされてしまうという栃木さんの得意な部分を許してしまいました。しかしチームとして非常にいい経験になったと思っています。こういう経験をしっかり無駄にしないように、彼らがもっともっと成長できるように明日も今日以上にがんばりたいと思います」

 一方、栃木の安齋竜三HCは次のような言葉を残した。

「金丸選手と桜木選手が出られないという中でアグレッシブに、よりインサイドの2人に集中してくるかなとゲーム前から予想していたんですけど。出だしからディフェンスが軽くて後手後手でゲームに入って、切り替えたり立て直したりするのに時間かかりました。やるべきプレッシャーディフェンスだったり、ポストに入る前の段階でのディフェンスをがんばれるかなどを1週間やってきましたが、そこが第1クォーター以外はある程度タフショットを打たせて自分たちのペースだったと思うので。明日は出だしから40分間やるべきことを継続して、相手がアジャストしても自分たちが上回れるようにしたい」

 大活躍だった渡邉は、第2戦への意気込みを語った。

 「昨シーズン、刈谷の地でチャンピオンシップでやられてシーズンが終わってしまった。まずはその借りを返すことが大前提で。他の対戦相手とは違う意味合いがこのホーム2連戦にはあって、三河さんとはチャンピオンシップで当たらなければここでしか対戦がありません。明日勝つことが大きな意味合いを持っているのもありますし、今日の反省を活かして昨シーズンの借りをもう1つ返したいと思います」

昨シーズンの借りを返すために戦う栃木の意地か、チャンピオンシップ進出に向けて負けられない三河の意地か。第2戦のブレックスアリーナも超満員となることが予想される。フィジカルで激しい40分間が繰り広げられるのは間違いない。

文=鳴神富一

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