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『B MY HERO!』
西地区で名古屋ダイヤモンドドルフィンズと激しい2位争いを演じている京都ハンナリーズが、今シーズン、初のブレックスアリーナ宇都宮で栃木ブレックスと対戦した今節。第1戦は試合開始から一気に持っていかれたが、第2戦はブレックスアリーナ独特の雰囲気にも慣れ、それぞれの選手が自身の役割に徹したことが勝利につながったと言えるだろう。
京都の伊藤達哉のバスケットカウントで始まったこの試合。しかし、開始1分3秒、その伊藤がディフェンスの際に栃木のジェフ・ギブスのドライブをまともに受けて転倒。コート上で処置が行われたが、伊藤は担架で運び出されて試合に戻ることはなかった(試合後、伊藤について、試合会場から救急搬送されたが入院等することなく、チームに帯同して帰京したとチームから発表があった)。
京都にとって絶対的な司令塔を失ったことが、チームの結束をより強固なものにしていったと、試合後、記者会見に臨んだ浜口炎ヘッドコーチは強調した。さらに「栃木の強みであるリバウンド、特にオフェンスリバウンドとリーグで最も激しいと言われるディフェンス、さらにそのディフェンスからミスを誘って走る、この3点に注意して第1戦も試合に入ったが、アリーナの雰囲気に押されて自分たちのプレーができなかった。しかし、第2クォーターから次第に自分たちのプレーができるようになったのがこの勝利につながったと思う」。
もちろんジュリアン・マブンカが39得点10アシスト8リバウンド、デイヴィッド・サイモンの23得点8リバウンドの驚異的なパフォーマンスがなければこの勝利はなかっただろう。それに加え、ゾーンをミックスさせた攻撃的なディフェンス、そして晴山ケビン、片岡大晴が見せた思いきりのいいシュートの積み重ねも効果的だった。
そして何より40分間、特に第4クォーターの栃木の追いあげにも屈しなかった京都の集中力の高さは素晴らしかった。京都は連敗を免れ、栃木と1勝1敗でこの対戦を終了。名古屋Dとの2位争いは予断を許さないが、非常に貴重な勝利を挙げられたはずだ。
「何とも言い難い試合展開。(長いシーズン)60試合もあれば、このような試合もある」
記者会見場に現れた栃木の安齋竜三HCは淡々と試合を振り返った。試合開始から9連続得点を許し、早々にタイムアウトを請求せざる得ない展開になった場面では、「出だしのディフェンスがソフトだった。自分たちがしなければいけないディフェンスのルールを守れないケースもあったし、エナジーのなさも気になった」とコメントした。
ティップオフから2分50秒間、安齋HCが指摘する9連続失点の場面では、この日両チーム最多得点を奪われたマブンカにはまだ得点はなかった。ただし、「伊藤選手のバスカンから始まったわけだが、彼の得意な方に抜かせてしまうし、その時、ディフェンスは何もしてなかった。加えて自分たちはターンオーバーも犯してしまい、一気に引き離されても仕方なかった」と、この試合を凝縮する内容だったとも言える。
「昨日はしっかりとした試合ができただけに、今日は相手(京都)も向かってくるのはわかっていたはず。チャンピオンシップになれば2試合勝たなければいけないわけなので、この点はまだまだ改善の余地がある。前向きにとらえれば、まだ成長できるチームであるということ」
試合の勝ち負けよりも1プレーであったり、チームのルールをいかに遂行するかに厳しい目を持つ安齋HC。16日の勝利でCS進出を決めた後の試合だけに、嫌な予感もあったかもしれない。「(アルバルク)東京や千葉(ジェッツ)のようなチャンピオンチームに勝つには我慢すること、そして勝ちきることが大事」と常々口にしている。チャンピオンシップ出場を決めて、さらに上を目指すために、栃木は貴重な課題を再確認したと言えるだろう。
文=入江美紀雄