2019.03.28

矛を捨て、盾を選んだ名古屋ダイヤモンドドルフィンズの決断

B1第30節を前に、カミングス(中央)との契約を解除。バーレルを加えて終盤戦に挑む [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

 3月27日、B1リーグ第30節が行われ、西地区2位の京都ハンナリーズをゲーム差2つで追う名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、同4位の大阪エヴェッサを迎えての一戦。レギュラーシーズンは残すところあと11試合となり、チャンピオンシップ進出に向けて一戦一戦が重要となる中、ここからが真の正念場だ。

 名古屋Dは26日、2018年12月15日の琉球ゴールデンキングス戦以降、右ひざ半月板損傷のケガで戦線離脱していたジャスティン・バーレルをインジュアリーリストから抹消。入れ替わるようにして、36試合の出場でチームトップの平均23.2得点を挙げていたマーキース・カミングスとの契約を解除した。昨シーズンはキャプテンを務め、リーダーとしてもチームを支えるバーレルを外国籍枠のファーストチョイスとして選択するのは理解するところ。しかし、ディフェンス力が売りのヒルトン・アームストロングを残し、カミングスとの契約を解除したことが、ラストスパートをかけたい名古屋Dにとって吉と出るか、凶と出るかに注目が集まった。

 試合は大阪のソフトなディフェンスとシュートトラブルの隙をついた名古屋Dが開始から猛攻を仕掛けて13-0とリードを奪うと、この日好調だった満田丈太郎の連続得点、司令塔の笹山貴哉、戦線復帰したエースのバーレルの活躍により序盤でペースを握る。ジョシュ・ハレルソンの活躍などで前半終了時点で5点差まで詰め寄られたものの、後半開始から立て続けに得点を挙げた名古屋Dは、安藤周人の“4点プレー”も飛びだすなどゲームをとおして好調を維持。結局一度も相手にリードを許すことなく88-64の24点差をつけて大阪を一蹴し、バーレルの帰還を白星で祝うとともに、カミングス不在で臨むリスタートを素晴らしい形で決めることができた。

復帰戦で10得点6リバウンドをマークしたバーレル [写真]=B.LEAGUE

 試合後の会見に臨んだ梶山信吾ヘッドコーチはチームのトップスコアラーが抜ける影響について「戦い方は変わってくると思います。しかし、トランジションバスケットボール(速攻を主体とした早い展開のバスケットボール)は変えたくない。そこは今シーズン貫くところ」と力強く語り、続けて「中東(泰斗)や安藤、ポイントガードの笹山、小林(遥太)などもボールをどんどん前に運ぶことができる。ここは日本人ができるところだと考えています」と述べ、カミングスが担ってきた推進力を日本人選手たちに期待した。

 チームトップの16得点を挙げた安藤は、カミングス不在による役割の変化を問われると「自分のやることは変わらない」とキッパリ。「彼が残してくれた特徴的なことはトランジション。そこは僕にも真似できることもあります」と口にし、「彼がいて僕の3ポイントが活きることがあったが、今度は僕がキース(カミングスのニックネーム)の役割をがんばってやっていきたい」と語った。

ここまで1試合平均14.5得点を挙げている安藤 [写真]=B.LEAGUE

 今シーズンのバスケットスタイルを象徴する存在だったカミングスの退団。チームは選手登録枠や出場時間、金銭面など様々な要素から難しい判断を迫られただろう。チームをここまでけん引した“矛”を捨て、最後に勝ちきるために“盾”を取った選択がどのような結末につながるのか。チャンピオンシップ出場、そしてその先の結果が今回の選択の正否を判断することになる。Bリーグ3シーズン目もいよいよ最終盤。栄冠を勝ち取るため、何としても残留するため、各チームの思惑は様々だが、そこに生まれる物語も含め、ますます目が離せなくなりそうだ。

ベンチ裏にはファンからの寄せ書きも掲出された

文=村上成

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