2019.05.14

ファイナルで影を潜めた西村文男「貢献できなかったことがとても悔しい」

第2クォーターに2アシストをマークしたが、その後は見せ場を作れなかった西村[写真]=B.LEAGUE
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 新時代の頂へ——。Bリーグの3代目王者を決める最終決戦、「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2018-19」のファイナルが5月11日に横浜アリーナで開催された。

 会場は過去最高の12972名の大観衆が集結し、千葉ジェッツアルバルク東京のチームカラーでもある赤一色に染まった。52勝8敗というレギュラーシーズン最高勝率を記録して優勝候補筆頭として期待されていた千葉は、富山グラウジーズと栃木ブレックスを相手にそれぞれホームで2連勝してファイナルへ進出。盤石の状態で横浜アリーナへの切符を手にした。

 ゲーム途中からコートに立ち、絶対的な司令塔の富樫勇樹とはまた違うリズムやセンスでチームの流れを変えてきた西村文男は、この試合でも第2クォーターのスタートからコートに入った。序盤に田口成浩の3ポイントシュートやスティールからマイケル・パーカーへのダンクをお膳立てするなど、膠着していたゲームの流れを動かした。それでも、シーズンをとおして欲しい時に飛びだしていたアウトサイドシュートは相手の警戒もあり1本も決められず。無得点でファイナルを終えたのであった。チームとして目標にしていた悲願のチャンピオンをあと一歩のところでつかみ取ることができず、昨シーズンと同じ光景が千葉には突きつけられてしまった。試合後はタオルで顔を覆い、誰にも顔を見せることなく悔しさを露わにしていた。

 ミックスゾーンにやってきた西村は、今にもこぼれ落ちそうな涙をグッとこらえて一つひとつ丁寧に言葉を重ねながら試合を振り返った。「昨シーズンのファイナルと同じで第3クォーターで同じ流れになってしまったけど、今シーズンはそこでチームが崩れることなく最後まで点差を縮めて戦えたのはチームが成長した部分かなと思いました。それは本当に今シーズン積み重ねてきたものが最後しっかりと我慢強く出せたと思いますので、また来シーズン、チャンスがあれば一からチームをしっかり作り直したいなと思っています。個人的には何もできずチームに貢献できなかったことがとても悔しいです」。

試合後は、涙をこらえながら取材に応じた[写真]=B.LEAGUE

「自分の不甲斐なさというかチームの力になれなかった悔しさが出ましたね。いい方向にチーム通じて持っていけなかったのが個人的に悔しかったです」と試合後にベンチで見せた姿の理由を率直に話した。彼がミックスゾーンで涙を堪えようとした姿の時も、自分の不甲斐なさを話そうとした瞬間であった。

 昨シーズンとは違った悔しさが自分自身を覆ったのであろう。それはチームとしてやってきたことを全て出せたという言葉に表れていた。「昨シーズンとは違って不完全燃焼ではなくて、チームとして今シーズン作りあげてきたものが出せたと思っています。何が欠けているとか何が足りないとかではなかったと思います」。そして、全てを出せたファイナルだったかと問うと「そうですね、はい」と明確に回答してくれた。

 いつも冷静でいる彼が普段あまり見せることのない涙を目に溢れさせ、そして悔しさを隠すことなく露わにした。それだけ今シーズン、チャンピオンを獲得して歓喜の瞬間を迎えたいという強い想いの裏返しだったのかもしれない。そして彼は今シーズン、自身のキャリアで一番多くコートに足を踏み入れてチームの流れを変え続ける仕事人であった。この悔しさをバネに、来シーズン進化した西村文男を我々はきっと目にすることになるであろう。

昨年はケガに泣いたが、今シーズンは計59試合に出場した[写真]=B.LEAGUE

 流れを変える仕事人は、来シーズンも戦い続ける。

文=鳴神富一

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