2020.01.17

「復興最中の地元に元気と勇気を」…信州ブレイブウォリアーズの三ツ井利也は悲願のB1昇格を目指す

地元出身選手として信州でプレーする三ツ井[写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 2019年10月に日本列島を襲った台風19号、日本各地に大きな爪痕を残し、甚大な被害をもたらしたと同時に日本人は改めて自然の脅威というものを知った。その中でも、非常に被害が大きかったのが長野県であった。千曲川が氾濫して堤防も決壊、長野市や千曲市を中心に街の広範囲が浸水した。その地域をホームタウンとして活動しているのが信州ブレイブウォリアーズだ。昨シーズンB2優勝を果たすもB1ライセンスを取得できず、今シーズンこそはすべてをクリアにしてB1の舞台へと意気込んでいた最中、台風の脅威に襲われた。

 10月13日に「ことぶきアリーナ千曲」で行われる予定であったホームゲームは延期となり、アリーナ周辺は浸水の被害に見舞われたとともに、すぐにでもゲームができる状態のままで避難所となった。そして選手やスタッフの一部は自宅に帰れず、球団事務所で一夜を過ごしたという。

 その延期された試合が1月13日に同じアリーナで行われた。復興応援ゲームとして被災された地域の方を500名招待、そして有名アーティストでもあるET-KINGが試合後にライブを開き、アリーナには2312名が集結。試合も現在西地区で好調をキープしている香川ファイブアローズに大勝して、ファン・ブースターは歓喜の喜びに包まれ、アリーナ全体が熱気に溢れた。

信州の試合を観戦するファン・ブースター[写真]=鳴神富一

「すべてが変わり果てた状況になって、改めて災害の怖さを知った」

「家の前まで水が来ていて、家が危ない状況だったので家族で少し避難しました。でも、千曲川に近い親戚や地域の人々などかなりの人数が被害に遭い、心が痛んだと同時に気が少し動転してしまったのを覚えています。県民自体がこういう経験をしておらず、慣れていないのもあって…自分は幸運にも被害は少なかったですが、もっと怖い思いをした人、つらいい状況にある人もいて、やっぱりショックでした」

 台風に見舞われた当日の事を答えてくれたのは、地元出身の選手である三ツ井利也。東海大学付属第三高校(現東海大学付属諏訪高校)から東海大学と全国でも強豪の学校を渡って、4シーズン前に信州へ加入。今シーズンはB2リーグ第17節終了時点で全試合スタメン出場、持ち味でもあるディフェンスで存在感を残しており、チームに欠かせないプレーヤーの一人だ。

 実は彼の住んでいる実家のあたりは長野市篠ノ井という地域で、台風19号で甚大な被害を受けた地域の一つである。生まれ育った大好きな街が無残な姿に変わっていく様子を見て「もう考えられなかったです。すべてが変わり果てた状況になっていて、改めて災害の怖さを知り、身に沁みて感じる日々を過ごしていました」と率直な言葉を口にした。

 チームとして「復興」を大きなテーマとして掲げたこの試合は、シーズンの中でも節目になる試合となったことは間違いない。試合後、勝久マイケルヘッドコーチは「あの災害が起こって、その後再開したホームゲームからは『我々ができる事をやっていく』という想いでやってきました。今日は、チームに改めて話をしたというよりは『いろいろな意味で大事な試合だからね』とだけ伝えて。それだけで全員が分かってくれたと思います。全員が被災者の皆さんのためにという想いでプレーしているように見えました。今日は素晴らしい雰囲気をファン・ブースターが作ってくれて、逆に僕らが力をもらえた事に感謝しています」とコメントしてくれた。

 三ツ井もこの試合に懸ける思いは強かったようで、地元出身という言葉を使いながら熱の入った言葉を口にした。

「地元出身だからこそという気持ちはありますし、千曲市と長野市を拠点としてやっているチームとしては、少しでも被災された方に勇気と元気を与えたかった。その一つの手段として、僕らが一生懸命エネルギーを持ってプレーするのが大事かなと思っていて。この振替の試合が決まってからは、本当にしっかりと準備をしましたし、今日はいつもよりも気合が入って、少し力も入りましたね」

「より一層長野県のためにプレーしていきたい」

 元気と勇気を与えたい、そのためには昨シーズン為し得る事が出来なかったB1昇格が一番だろう。三井にとっては、地元のためにという想いはもちろん、同級生の活躍も昇格するためのモチベーションになっている。

「昇格への想いはとても強いですね。昨シーズン優勝してもB1に上がれないという悔しさを味わって、もう同じ事は繰り返したくないです。フロントもすごく頑張っている中で、僕らは目の前の試合を一生懸命プレーして、観ている人にずっと応援してもらえるようなチームを作り上げることが必要です。B1では大学の同期が活躍していて、関野(剛平/サンロッカーズ渋谷)は天皇杯で優勝して、寺園(脩斗/三遠ネオフェニックス)はチームで活躍している。彼らを見ているとすごく刺激になりますし、いつか同じ舞台で戦いたい。今シーズンは何としてもチームで成績を残して、本当に満を辞してB1に臨めるようにしたいです。このままでは、まだまだB1では通用しないので、チームとしてビルドアップをして結果を残したいですね」

 シーズン中ということもあり現在はなかなかボランティア活動などができず、歯がゆい想いを抱いているという三ツ井。それでも、今の自分たちがやるべきことは何なのかを、しっかりと認識している。

「『スポーツで長野を元気に!』というコンセプトでやっています。まだまだ復興までは程遠い場所もたくさんあるので、僕らが懸命にプレーする事でみなさんが少しでも元気になったり、明日への活力が生まれたりしたら一番意味があると感じていて。その気持ちを変わらずに持ち続けながら、より一層長野県のためにプレーしていきたいと思っています」

文・写真=鳴神富一