2020.01.28

海外挑戦から一転、アルバルク東京に電撃加入した津山尚大が語る移籍の経緯と“変わらない目標”

A東京で新たな挑戦に臨んでいる津山[写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 今シーズン、自身の夢でもある海外挑戦のために海を渡った若きガードがアルバルク東京と電撃契約を結んだ。23歳の若武者、津山尚大である。昨シーズンはライジングゼファー福岡に所属して、持ち味とする強気なプレーを武器にB1の舞台で活躍したガードだ。シーズン終了後に海外挑戦を表明し、クラウドファンディングで挑戦のための資金を募ったことも話題になった。さまざまな支援と彼自身の努力もあって、カナダのプロリーグであるNBLのチームと契約を結び、高校時代から夢であった海外でのプレーの第一歩を踏んだと思われた。しかし、彼のTwitterで2019年12月19日に契約していたチームから契約解除されたというツイートが流れてきた。同時に言葉として残したのが日本でのプレーを選択するというものだった。

 その時の心境を「正直パニックで、今後どうしようかなという感じだったんですけど…」と吐露した津山は続けて一連の経緯を詳細に語ってくれた。

「チームと契約できているという話だったんですけど、実際に行ってみるとトライアウトからという感じでした。僕がもっと準備をしておけば良かったんですけど、そこからトライアウトが始まって15人の枠には残れたのですが、最終的な12人のロスター枠からは外れてしまって、契約に至りませんでした」

「クラウドファンディングで支援してくださっている人達のためにも、今シーズンはしっかりと海外でやろうかなという思いでやっていましたけど、どのチームもシーズンが始まっていて…。このままだと1カ月以上もバスケができない状態が続きそうでしたし、いろいろな方と相談をしました。僕ももう23歳ですし、1シーズン無所属で空けてしまうのはキツいと感じて。最終的にはヨーロッパでのプレーを目標にしているので、ルカ(パヴィチェビッチ)ヘッドコーチの元でやりたいと思ってアルバルクへの入団を決意しました」

「津山はチャンピオンシップを戦う上で1つのビックピース」

 アルバルクとの連絡は双方がコンタクトを取りたがっているタイミングで実現。ある意味で縁を感じたと津山は語った。相思相愛の関係性は、彼への期待を込めたルカHCの言葉からもうかがえる。

「通常であればポイントガードは安藤誓哉小島元基、アメリカに移籍した馬場(雄大)選手の穴を埋める田中大貴をポイントガードにシフトする案も考えていました。しかし小島がケガでシーズンを離れる事になり、キャプテンの正中岳城も部分部分でつないでくれていた中で、安藤のポイントガードのポジションをサポートするということで津山の獲得を決断しました。非常にハードワークするし、スキルもあって、中途半端なプレーを嫌う選手です。もっとパフォーマンスレベルを上げてほしいですし、このチームで彼が持っている気持ちと持ち味を全面的に出してほしいですね。チームとして、彼は後半戦からチャンピオンシップを戦う上で1つのビックピースだと感じています」

 ヘッドコーチにも期待されている津山は、久しぶりの試合でのプレーにうれしさを感じながらも「3連覇を目指しているチームなのでプレッシャーはありますけど、フレッシュな気持ちでプレーしたいです。ルカHCからはガードとしての役割への要求が日に日に高まっていて、自分自身ガードというのに固執しすぎて、少しプレーに迷いが生じた時もありました。だけど、自分は他のガードにはなれないのでアグレッシブに得点を狙う持ち味を出しながら役割を果たしていきたいです」と意気込んでいる。

「自分のバスケ人生の中で初めてバスケにのめり込んでいる」

 前人未到のリーグ3連覇というチームの目標の先には、自身が目標の一つであり夢でもある、日本代表として日の丸を背負う未来も見据えている。

「やはりアルバルクは日本代表の選手になれる可能性が高いチームなんじゃないかなと感じていますし、練習中から田中大貴選手や安藤誓哉選手といった代表選手とマッチアップして、今まで以上に日本代表への意識は強くなりました。レベルの高い練習やプレーができる、すばらしい環境でバスケをさせてもらっていると感じています」

 そんな彼はカナダ経由の東京行きと、生活面でも今シーズンは非常にハードだったことは間違いない。そのことについてうかがうと、予想していた答えとは真逆で彼の口からは感謝の言葉が発せられた。

「今シーズンは、自分のバスケ人生の中で初めてバスケにのめり込んでいるかなという感じですね。カナダでもずっとバスケしかしてこなかったですし、今も体育館と家と試合会場の行き来だけしかしていないです。休みの日もどこにも行かず、体育館にずっといたので。でも、それが僕にとっていい環境に居させてもらっているなと感じるので、感謝の気持ちでいっぱいです」

 最後に津山は今シーズンの目標に関して将来を見据えた形で力強く語ってくれた。

「個人的には、また来シーズン海外に挑戦する気持ちではいます。だけどアルバルクに入ったからには、今はこのチームのために、ファンの方々のために、まずは3連覇できるようにしっかりと練習してがんばっていきたいです」

「あくなき向上心」

 津山のさらなる成長が、アルバルク東京のリーグ3連覇という前人未到の挑戦を推し進めるに違いない。

文・写真=鳴神富一

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