2020.01.28

主力不在のチームの中で責任感を強める藤井祐眞「今は一番判断を求められるポジションにいる」

司令塔として責任感を強める藤井[写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 Bリーグもオールスターブレイクが明けて、いよいよ勝負の後半戦がスタートした。今シーズン、チームのバスケットボールスタイルを一変させて、ここまで中地区首位をひた走る川崎ブレイブサンダース。横浜アリーナでの開幕戦で宇都宮ブレックスに対して素晴らしいゲームを見せると、11月頭からは怒涛の16連勝を収めるなど順調と言える前半戦だっただろう。天皇杯では苦しいロスター状況でありながらも準優勝を収めており、チーム力のベースアップは確実に見えている格好だ。

 苦しいロスター状況の要因が、主力である篠山竜青マティアス・カルファニの負傷離脱だ。チームを率いる佐藤賢次ヘッドコーチは常々「チーム全体でどう戦うか」を強調しているが、やはり司令塔と前半戦躍進の原動力になった外国籍選手の離脱は痛い。そんな中で篠山に代わって初のオールスターゲーム出場を果たし、今まではチームのシックスマンだった藤井祐眞がスタメンとしてチームを牽引している。彼の持ち味は何といっても攻守両面での積極性だ。

 佐藤ヘッドコーチは藤井について「彼のプレーはいつも通りです」と話し、彼の積極性を評価しながらも、今後はチーム全体がその積極性をコートで見せていくことが重要だと強調した。

「プレーでチームを引っ張ってくれていますし、常に変わらないプレーをしてくれているので、彼に何か必要というよりは彼についてくる選手が増えていかなければいけないと思っています。藤井は藤井のままがんばってもらって、他の選手に期待したいと思います」

司令塔として接戦の中で進化を続ける

 その藤井は、もともとはスコアを積極的に狙いながらゲームのリズムを変えていくプレーヤーとして評価が高い。しかし現在は、司令塔のポジションで日々勉強しながら進化を続けている。その中で責任感がより増している様子だ。

「ゲームのラストに関して、そしてチームを勝たせられるポイントガードとして、今は竜青(篠山)さんがいない中で自分が一番判断を求められるポジションにいます。今まではどうしても自分が2番ポジションで竜青さんにチームのコントロールを任せていた部分があったので……。自分自身にとってこの状況はいい練習にもなると思いますし、接戦の中でもっと勉強して試合でいい判断ができるようにしたいです」

 チームスタイルをガラリと変貌させて好調をキープしたチーム、藤井自身も今のスタイルに関しては非常に自分とマッチしていると、前半戦を振り返りながら語っている。。

「チームとしてはもうまったく別なチームになっていて、本当にインテンシティが高い試合を毎試合継続していました。しかし敗戦した試合ではそのトーンが少し落ちて、エナジーが足りない状況が続いて流れが悪くなっていました。そこをどれだけ高く保てるかが重要だと感じています。賢次(佐藤ヘッドコーチ)さんからチームコンセプトをシーズン最初に聞いたときに、自分の持ち味でもある『がんばって、がむしゃらにボールを追う』が全面に出せると思って非常に楽しみでしたし、今はもっとそれを体現したいと感じています。コートに立っているときは全力でやるべき事ができれば一番いいと思っているので、それを今後も常に意識していきたいですね」

負傷中の篠山はベンチからチームを鼓舞している[写真]=鳴神富一

「竜青さんやマティがいないのはこのチームに課せられた課題」

 その前半戦の後にあった北海道でのオールスターゲーム。選手入場では篠山と相談して決めたという「蟹、そして篠山と会場をつなぐテレビ電話」で会場を沸かせて、見事にベスト入場賞を獲得した。彼自身、初のオールスターゲームであったが本当に楽しめたと答えてくれた。

「あの雰囲気も初めてでしたし、楽しく過ごせました。ただ、選手入場で満足した部分があって、あれで『よっしゃ、終わりだ』みたいな気持ちになってしまったんです。もし次にチャンスがあって出場できれば、スキルズチャレンジは優勝を取りにいきたいです。また試合でも得点やアシストの部分で、もう少しアピールできたらと思っていて。それでも今回は、初体験でしたが非常に楽しくプレーできました」

 彼にとっても初体験の夢のような時間が終わり、チームの目標である初のリーグ制覇を目指して残り試合を戦う時間がやってきた。天皇杯で惜しくも頂点に立てなかっただけに、川崎が抱くタイトル獲得への想いは非常に強い。その中で藤井は一つひとつの試合を大事にしていく事を強調した。

「60試合ある中で勝ち負けが一番重要な事ですけど、どんなに良くても負けるときはあります。今以上に内容にこだわって、納得できる負けなのかどうなのかが大事。優勝できるチームになるためには1試合1試合課題に向き合わなければいけなくて、その課題を見つけるには今いるこのメンバーで100パーセントの力を出してプレーしなければいけない。今、竜青さんやマティ(マティアス・カルファニ)がいないのはチームとして厳しいですけど、それもこのチームに課せられた課題の一つだと思っています。残りの後半戦をしっかり戦って、その先にあるチャンピオンシップ、そしてリーグ優勝という所を見据えて1試合1試合大事に戦っていきたいと思います」

 好調な川崎が悲願のリーグ制覇を成し遂げるために、チーム全体が藤井のように今出せるベストをコート上で出し切って戦う事が重要となるだろう。大切にコツコツと戦っていけば、先は必ず見えてくるはずだ。

文・写真=鳴神富一

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