2021.09.22

【短期連載・TOKYOの先へ】山本麻衣(トヨタ自動車/3x3女子日本代表)

ポイントガードとして着実に経験を重ねている山本[写真]=Wリーグ
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 東京2020オリンピックでは、3x3女子日本代表がメダルこそ届かなかったものの5位と健闘。そして5人制では快進撃を続けて準優勝、銀メダルを獲得した。

 日本だけでなく世界を熱狂させた日本代表選手たちにオリンピックのことや10月から始まるWリーグ、さらにはその先についての話を聞いた。

 第3回は3x3女子日本代表の山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)。得意とする外角シュートを勝負強く沈め、幾度となく日本を勝利へと導く働きを見せた若きガードは、初となる五輪の舞台で何を感じたのか⁉

初の五輪は「本当に楽しむことの難しさを感じた大会」

――初めて出たオリンピックの感想を教えてください。
山本 すごくいい経験になりましたし、改めて本当に楽しむことの難しさを感じた大会になりました。

――どういった辺りで難しさを感じましたか?
山本
 周りからも「楽しんでおいで」と声をかけてもらったのですが、それでもオリンピックの舞台は、他の国際大会とはまた違った大会でした。そこでプレッシャーに打ち勝ち、自分のプレーを楽しんで表現することの難しさを知りました。オリンピックに出場してメダルを取る人たちは本当に強い人たちなんだと出てみて痛感しましたね。

――いつもと違うプレッシャーを感じた?
山本
 大会中、なんか変な感じだったというか…。今思うと、それはプレッシャーだったのかなと思います。

――そういった中で大会を振り返っての自身のプレーは?
山本
 なかなか調子が上がらず、最初の頃はシュートも入らず、動きもあまり良くなくて。それでも徐々に、大会の中で修正できたとは思います。

――準々決勝のフランス戦は惜しい試合でした。
山本
 フランスは予選ラウンドで日本に負けていたので、相手の気迫が上回っていたというのは正直あると思います。あとは、ディフェンスが私たちの強みで、そこからリズム作るのですが、あの試合は相手に2ポイントシュートをやられすぎました。それで自分たちに流れを持って来ることができませんでした。

――ただ、大会では優勝したアメリカに予選で勝利。アメリカにとってそれが唯一の黒星です。
山本
 素直にうれしかったですね。オリンピックが終わってから、アメリカの選手たちがすごい人たちと知って、「この人たちとプレーしてたんだぁ」と思いました(笑)

――山本選手自身、高さへのハンデはどう補っていましたか?
山本
 インサイドを攻められた時は、ハンデは感じるのですが、タフに戦ったらシュート落としてくれることもあるし、みんながカバーしてリバウンドを取ってくれるので。それに1点やられても2点を返すという考えでした。3x3の場合、倍の点数になるので、2点を取るのは相手にもダメージが大きいんです。

――常に動いていて、スタミナが必要だと感じました。
山本
 特に日本の運動量は多いですね。あとは、シィさん(篠崎澪/富士通レッドウェーブ)のように、あれだけギュンギュン動いてくれたら…本当に助かります(笑)

 どの試合だったか忘れましたが、後半のかなりしんどい時間帯に、タイマーが止まらなくて。その時、(ボールを持っている)シィさんの方にボールをもらうために顔は出したけれど、本当はきつかったので『シィさん、行ってー!』って内心思っていたんです。そうしたら、行ってくれて(笑)。辛い時にこそシィさんがドライブなどをしてくれたので、心強かったです。

――山本選手はガードですが、試合展開などは考えながらプレーしていましたか?
山本
 はい。ボールキープなどはあまりないのですが、チェックボールになった時のセットオフェンスは私が何をやったらいいかを考えてコールしたり、コミュニケーションも率先して取ったりしていました。

――コート内外でオリンピックを感じたエピソードがあったら教えてください。
山本
 無観客だったのですが、自国開催ということもあり、ボランティアの方たちのサポートが、これまでの海外での国際大会とは全く違いました。すごくサポートしてくれて、試合に入りやすかった。ストレスなく大会に臨めました。

――選手村での生活はいかがでしたか?
山本
 選手村は…広すぎて、移動が大変でした(笑)。いろんな国の方がいて、すごく楽しかったんですけど、移動が(笑)。宿泊棟からバスが離発着するところまでが、遠いわけではないのですが、試合後で疲れている時は、暑さもあったのでしんどい距離でしたね。

 それと、日が経つにつれ、お花を持ってたり、メダルをかけたりして選手村に帰ってくる選手たちを見かけるようになるんです。それを見ながら「いいなぁー、私もほしいなぁ」と思っていました。

――男子の3x3日本代表だった富永啓生選手とは子供の頃から知り合いだったようですね。
山本
 そうですね。ただ、小さい時の記憶はないんです。私も啓生も高校生の頃に母親同士が三菱電機コアラーズでチームメートだったと聞きました。高校卒業するまではそこまで交流もなくて。でも今回は、(選手村の)オリンピックマークのところで一緒に写真を撮って母親に送りました。

オリンピックでは2ポイントシュートを積極的に放った[写真]=fiba.com

トヨタ自動車でも「自分の役割をしっかり果たしたい」

――オリンピックを通して3x3への反響はあったと思います。
山本
 インスタグラムのDMなどでメッセージくれた方もいました。初めて見たという方も多かったですし、面白いと言ってくれた方もいて。私の祖母は、「3x3は見やすい」と言ってました。コートが一つで、カメラもそんなに動かないから、見やすいのかもしれないですね。それこそ祖母は、勝ったアメリカ戦も何回も見て、今も見ているみたいです(笑)

――21歳でオリンピックを経験しました。
山本
 勝てなかったけれど、すごく良い体験ができてと思うので、今後に絶対生かしていきたいです。

――オリンピックを通して感じた今後に向けての手ごたえと課題は?
山本
 日本のスピードと機動力はどの相手にも通用したし、自分自身も2ポイントシュートとドライブは通用したと思っています。

 課題は、大事な場面でのシュートを決め切ること。それと、普通にやったらできるようなことを苦しい時間帯でもちゃんと表現してプレーできる強さが足りないと感じました。

――3x3の活動で5人制に生かせそうな点があったら教えてください。
山本
 リーダーシップを取ることは3人制でやってきたので、そこは5人制でももっと出していきたいです。プレー面では3x3では2ポイントシュート、5人制では3ポイントシュートと、ドライブが武器でもあるので、3ポイントシュートを打って、ディフェンスが出てきたらドライブもできるというところを出していきたいです。

――トヨタ自動車での活躍にも期待が高まります。
山本
 試合に出たらその時の状況をしっかり読んで、今、何を必要とされて出ているのかを理解して、自分の役割をしっかり果たす。それが責任でもあるので、そこを今シーズンはしっかりやっていきたいですね。トヨタ自動車は、個の能力が高いと思うので、それがかみ合えば大きな力になると思います。

――10月から始まるWリーグ、山本選手から見た女子バスケットのおもしろさを教えてください。
山本
 個の能力もありますが、それだけでなく、チームで、みんなでカバーしあってオフェンスなどを行っていくところは、おもしろいと思います。速い展開のバスケットを見ることができると思います。

取材・文=田島早苗

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