2022.09.30

HIU ZEROCKETS EXEの平野代表と佐藤マクファーレン優樹に聞く「HIU ZEROCKETSの新しいファンとの関係性」

HIU ZEROCKETS EXEの取り組みについて、平野代表と佐藤マクファーレン優樹に話を聞いた
2000年より、バスケットボール専門で取材活動中

 東京オリンピックで男女ともに決勝トーナメント進出を果たし、注目された3x3。国際バスケットボール連盟によってルールが整備されたのが2007年、日本バスケットボール協会が強化に動きだしたのが2013年という歴史の浅い種目だが、自国開催のオリンピックから正式種目に採用され、多くの国民の目に留まることとなった。

 その裾野は着実に広がり、世界初の3人制リーグとして誕生し、現在はフィリピンなども加わっている3x3.EXE PREMIERは年々参加チームが増加の一途。2022年は日本だけで48チームが参戦している。その中には興味深い特色を持つチームもあり、その1つがHIU ZEROCKETS EXE。FiNANCiEというプラットフォームを活用したトークンを導入して資金調達しているほか、所属選手の佐藤マクファーレン優樹が「バチェロレッテ2」に参加したことが先頃話題を集めた。他と一線を画す取り組みについて、平野将之代表と佐藤に話を伺った。

取材=吉川哲彦
取材協力=HIU ZEROCKETS EXE、FiNANCiE

ホリエモンの着想からスタートしたチームがFiNANCiEを用いて資金調達

 チームの誕生は2020年。実業家の堀江貴文氏が社会実験の意味も込めて、自身のオンラインサロンである「HIU」のメンバーに運営を一任して始めたものだ。これは、3x3.EXE PREMIERが低予算で参戦できるリーグであることが大きかったのだが、低予算といえども安定したチーム運営には年間500万円程度が必要。それを賄うためにトークンを導入したのだ。平野代表は以下のように語る。

平野 我々のチームはコロナ禍に立ち上がったという経緯があり、チームが設立したのは良いものの、試合をすることができない状況が続きました。そもそもプロスポーツチームは試合をしないと収益が成り立たないんですよね。試合がない時のチームの存在価値は何なのかということになりますが、当時はオリンピックの開催も延期になってしまった最中で、そんな状況で「オリンピック種目で注目されています」とか「ホリエモンです」と言ったところでスポンサー営業もままならない状態。「ホリエモンのチーム」と言うとどうしてもお金があると思われがちなんですが、決してそんなことはなくて、どのようにビジネスにしてやっていけるか自分たちで考えて行動してみなさいというのが堀江さんからの暗黙のメッセージで、一旦立て替えてくれているというイメージなんです。その意味で、FiNANCiEとの出会いは我々にとっては本当に生命線でした。

コロナ禍の中でのチーム運営は非常に厳しかったが、「FiNANCiEとの出会いは我々にとっては本当に生命線でした」と平野代表


 トークン活用による資金調達は約1300万円にのぼり、十分な成果を得た。とはいえ、平野代表の言葉にもあったように、チームは競技そのものが本来の存在意義。試合をし、少しでも良い結果を出すことが最優先事項だ。その点で、約40人という運営メンバーがチーム運営の“いろは”も知らなかった中、強化という側面においてはJIRO氏をGMに迎えたことが重要な意味を持つ。

平野 運営メンバーはバスケットの経験者はいてもバスケ業界の人脈があるわけではなく、専門性も持っていない。チームを運営することがお祭り騒ぎのようになってしまって、競技の部分は二の次になってしまったようなところがあったんですが、競技という本筋をないがしろにしてチーム運営は成り立たないという、その点の地盤固めをJIROさんがしてくれました。

 ストリートボール界に強い影響力を持つJIRO氏がチーム強化に携わったことで、創設2年目の2021年にRed Bull Half Court JAPAN 2021で優勝を果たし、その世界大会であるWorld Finalに出場。チームとして1つ目覚ましい結果を残すことができた。

創設2年目の2021年にRed Bull Half Court JAPAN 2021で優勝

ポジティブファクターが後押しして、コロナ禍をたくましく乗り切る

 コロナ禍の中でもようやく試合に臨むことができ、チームとしての本分の部分で確かな成果を生んだことは大きなトピックの一つ。そして、チームにはもう一つ大きなトピックとなる出来事が起こった。前述した、佐藤の「バチェロレッテジャパンシーズン2」参加だ。Amazon Prime Videoで配信されたこのリアリティーショーは話題を呼び、佐藤自身も反響の大きさを強く実感している。

配信番組をきっかけに佐藤(前列中央)の人気はうなぎのぼり


佐藤 ちょうど最終話が配信された直後に千葉でエキシビションゲームがあったんですが、そこにもたくさんの視聴者の方が来てくださって、試合開始前から炎天下の中で待ってくださる方もいたんですよ。初めて3x3を見てすごく面白かったという声もいただいて、僕を通して競技の魅力を知っていただけるというのはすごく嬉しいですね。その後の試合でもかなりの数の方に足を運んでいただいて、他チームの選手からも『これだけの人が集まると楽しいね』と言ってもらえたので、少しでも3x3の認知度を広めて、より盛り上がっていければと思います。

 佐藤はかつてBリーグなどで計6シーズンプレーした5人制のプロ選手だった。世界に挑戦したいという目標があった佐藤は、オーストラリア国籍を持っていることもあり、馬場雄大がプレーしたNBLの下部リーグであるNBL1のトライアウトを受け、1チームからトレーニングキャンプ参加の打診を勝ち取った。しかし、そのキャンプ開始が2020年の2月。新型コロナウイルスの影響をまともに受け、話は立ち消えとなってしまった。それでも「『世界へ』という目標は捨てられなかった」という佐藤の運命はここから大きく変わり、HIU ZEROCKETS EXEとの縁が生まれる。

佐藤 当時3x3もすでにやっていたんですが、チームを立ち上げた堀江さんのSNSを見たファンから『佐藤選手がいたら良いんじゃないか』というメンションをいただいたので、そこでコンタクトを取らせていただいて入団させていただきました。次の年には世界大会に出場して『世界へ』という目標を一つ達成できたので、3x3に完全に転向して良かったと思いますし、逆に5人制をやっていたらバチェロレッテ2の旅にも参加できなかった。競技に取り組みながらいろんなチャレンジができるという、いわゆるデュアルキャリアの良いところを見せることができたんじゃないかと思います。

佐藤は「競技に取り組みながらいろいろなことに挑戦できるのが3x3の魅力」と語った


 より世界への道が開かれ、かつ多様な関わり方ができる3x3だからこそ、こういった成果を生むことも可能。佐藤はその他にも「いろんなロケーションでプレーできるのが魅力の1つ。ファンにとっても、1試合10分間なので良いテンポでいろんなチームを見ることができますし、休日の一環として組み込みやすい。ショッピングモールで試合をすることも多いので、日常の中に非日常を持ってこられるというところが面白いですね」と競技の魅力を語りつつ、その中でも自身が籍を置くHIU ZEROCKETS EXEについては「常識にとらわれないところが魅力」だと佐藤は言う。HIU ZEROCKETS EXEは大会前に開くロスター検討会議にトークン保有者を招き、出場メンバーの選定に意見を述べることができる。他では見られない斬新な企画だ。

佐藤 普通ならファンの皆様とそういう会議をするという発想もないと思うんです。試合に出るメンバーはもちろん最終的には平野代表とJIROさんの判断になりますが、選手としてはファンの方から見られている、しっかりパフォーマンスを出さないといけないという緊張感が出ますし、平野代表やJIROさんとは違った視点のインプットもあると思うんですよね。率先してトークンを取り入れて結果も残しましたし、ファンの皆様との交流も今までにない形を作り上げている。これから人気競技になっていく中、常識破りでユニークな存在だなと思いますね。

 その歩みを始めたばかりで課題はまだあるが、「これからのスポーツの在り方として必要だし、ファンの皆様との関わり方の一つとして大事になってくる」と佐藤が言うように、HIU ZEROCKETS EXEはファンを巻き込む新しい形を示した。今後はさらに多くの人を巻き込むプラットフォームを開拓し、FiNANCiEにも還元していきたいと平野代表は語り、日本代表候補入りも目標にしているという佐藤は「コート内ではまた世界にチャレンジしていけるように、コート外では3x3にはいろんな正解があると思うので、また1つの正解を作れるチームになっていきたい」と強い意気込みを見せた。バスケット界に新しい価値を創造することができるか、これからの展開を注視したい。

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