11月18日から3日間行われた3x3男子日本代表強化合宿のメンバーで、3x3のキャリアが長いのは落合知也と小松昌弘の2人のみ。2人は3x3PREMIER.EXEがスタートした当初から参戦し、国内の3x3シーンを引っ張り続けてきた選手だ。海外の強豪チームとも渡り合ってきたその実績を考えると彼らこそが代表候補にふさわしく、強化合宿に招集されて然るべき選手であることは疑いようもない。
その中で小松は、今回の代表候補メンバーの多くを占めるBリーガーではなく、一般企業に勤める“リーマンボーラー”だ。しかしながら、現役のプロ選手がそろう中で、小松は上記の理由で彼らに3x3の戦い方を伝授するという重要な役割も担っている。
「いろんなチームや選手と試合をしてきて、誰がどういうことをやってくるかという知識はあると思うので、二の手三の手が出せるというのが僕の強み。ただ、それを仲間がわかってないと意味がない。このプレーをしてダメなら次はこうしようといったことをコミュニケーションをして、なるべく簡単なシュートを狙うこと。1対1であれば海外の選手はタフですし、高さもあると思うので、そこで戦わない局面に持っていくことが僕の仕事なのかなと思ってます」
多くの選手が「5人制とは別物」と言うように、3x3はその戦い方を体で覚えることがスキル以上に重要とされる。試合形式で行われたこの日の合宿では、2本の試合のうち1本目には小松は出ず、ベンチからチームメートの4人に逐一アドバイスをしていた。それによって相手の得点が止まる時間帯もあるなど、サイズのある相手に「インサイドでほとんどやられなかった」と試合を優位に進められたことを小松自身感じ、その経験値が日本代表にとって確実にプラスになることを証明してみせた。
リーグ創設当初から3x3PREMIER.EXEを主戦場としてプレーを続けている小松は、そこに参戦している選手の代表としてこの強化合宿に臨んでいる意識もある。その中で、Bリーガーが多く招集されている現状も踏まえたうえで、代表候補メンバーでの自身の役割を見定めている。
「いろんな選手、特にストリートと区分していいのかどうかはわからないですが、その人たちから応援していただくことは非常に多くて、『Bリーグに負けるな』と言われることもあります。もちろん負けるつもりで合宿に来てるわけではないですし、僕にも強みはあると思ってます。とは言いながらも、Bリーグの選手が持ってるものはストリートでは味わえない部分もある。応援してくれる人たちの想いはもちろん受け継ぎつつ、最終的に日本がメダルを獲るためにはそれぞれの良いものを出し合っていかないと良くないという想いもあります。僕の経験値を僕のものにするだけでなくBリーガーにもシェアしていくべきだし、Bリーガーの強みである部分を僕も盗んでいかないといけない。今ある状況の中で何がベストか、その中で何ができるかを考えて行動したいと思います」
3x3キャリア組の経験とBリーガーのスキルを融合させるうえでも、重要なのはやはり落合と小松がその経験を周囲に伝えること。数々の経験を重ねてきた小松は、プレー以外の面でもチーム内で大きな役割を果たすことになる。
「海外で戦わないとわからないことは結構あると思うんです。レフェリーもそうですし、環境もそう。食事が合わないなんてこともあると思うので、そこでタフに戦えるかどうか。実際に行った時にあまりにも差があるということがないように、落合と僕でチームに共有していく必要性はあるのかなと思います」
ここから月1回にペースアップする合宿を経て、小松が日本代表にどのような変化をもたらすかは大きな見どころの1つだ。
文=吉川哲彦