第92回天皇杯・第83回皇后杯(オールジャパン2017)が1月2日に開幕し、8日に女子決勝、9日に男子決勝が開催される。長い歴史を誇りながら、Bリーグ開幕をきっかけに国内のバスケットボールに興味を持ったファンは、どういう位置付けの大会かピンと来ないところもあるのではないか。そこで、オールジャパンを楽しむためのポイントを5つ挙げてみたい。
①オールジャパンは「2冠」のうちの1つ
まず、BリーグやWJBLの各チームにとっては“2冠”のうちの1つであるということを知っておく必要がある。昨季までのNBLとWJBLのチームは、開幕前に「2冠達成」を目標に掲げるチームが多い。特に、この大会での優勝回数が多いチームほど、「まずはオールジャパンで1冠」という意識が強い傾向がある。女子で言えば大会3連覇中、リーグ戦でも8連覇中のJX-ENEOSサンフラワーズは2冠に懸ける想いが強いだろう。オールジャパンで敗れると、たとえリーグ戦で優勝しても選手は口をそろえて「2冠を達成できなかった」と反省する。
そもそもオールジャパンは、各リーグよりも長い歴史を持つ。多くの選手やコーチは学生時代からなじみがあり、彼らにとっては「あるのが当たり前」。リーグ戦を中断して行われるが、この大会に懸ける意気込みは強い。
その意味では、bjリーグ勢の5チーム、特に初出場となる3チームにとっては難しい大会になる。リーグ戦が半分残っているタイミングで、負けた時点で終わりというトーナメント戦を戦う難しさを身に染みて感じるだろう。出場経験の有無による選手間の温度差も懸念されるところだ。
②男女同時開催、普段見られないチームも見られる
Bリーグのファンにとっては、気になるのは当然ひいきチームだが、同じ日に同じ会場で複数の試合が行われるため、他チームの試合も見ることができる。同一リーグだけでなく高校、大学、実業団、クラブチームまで一堂に会する大会。様々なカテゴリーのチームを見比べる絶好の機会だ。
そして、Bリーグのファンにぜひ注目してほしいのが女子。リオデジャネイロ・オリンピックでの日本代表の躍進はまだ記憶に新しいところ。代表選手のスキルフルなプレーはもとより、彼女たちに立ち向かう他のWJBL選手、次代の“アカツキファイブ”を担う学生など、見どころは満載だ。4日と6日は、代々木第一体育館でBリーグ勢が試合を行う一方、隣の第二体育館でWJBL勢も試合に臨む。2020年の東京オリンピックに向けてさらなる強化を図る中、どのような選手がいるか“ハシゴ”してチェックしてみてほしい。
③トーナメント一発勝負
正式名称に天皇杯、皇后杯と冠せられているように、サッカーと同じトーナメント一発勝負というのが大きな特徴。バスケットボールは番狂わせが起こりにくい競技だが、それでも過去にはインパクトのあるアップセットもあった。インカレで優勝を争う大学は毎年のように「打倒トップリーグ」を公言し、インカレ後も4年生が引退せずに激しい練習を積む。また、Bリーグ同士やWJBL同士のカードでも、リーグ戦で分の悪かった相手にオールジャパンで勝って溜飲を下げたい思いがある。アンダーカテゴリーのチームのチャレンジャー精神と、下位に沈むチームの意地が垣間見える大会でもある。
④学生がトップリーグ相手に通用するか
上記のように、学生にとってはトップチームに挑戦するまたとない機会。自分がどの程度通用するのかを知る機会であると同時に、存在をアピールするチャンスでもある。それは見る側も同じことで、すごいと思う選手がトップチームと対峙した時にどこまで活躍できるのかという楽しみがある。逆に、学生をよく知らないファンが試合を見て「この選手はプロで活躍できそう」などと“青田買い”をするのも面白い。将来のBリーガーやWJBLの選手、さらに日本を背負う選手をこの大会で見つけてもらいたい。
⑤中立地開催の妙
トーナメントであると同時に、ホーム&アウェイではない中立地開催という点も特徴。特に完全ホームタウン制のBリーグチームの場合、各チームにどのような影響を与えるのかが気になるところだ。移動に関しては、普段のホームゲームと同じ感覚で臨めるアルバルク東京やサンロッカーズ渋谷が有利だが、応援に関しては、その2チームよりも近隣県に本拠を置くクラブのブースターの方が多く会場に駆けつけ、チームの助けになるかもしれない。
東京までの距離に差がある以上、完全に五分五分の条件にはならないが、多くのブースターが集まるのはどのチームか。応援のまとまりも含め、ブースター同士の戦いも面白そうだ。
このようにBリーグや日本代表だけでなく、いろいろなチーム、いろいろな試合を見ることでさらに日本のバスケットを深く知ることができる。オールジャパンはそのきっかけになる大会だ。
文=吉川哲彦