2020.01.26

河村勇輝がB1デビュー戦で存在感を発揮。富樫勇樹はチーム掌握力に舌を巻いた

一晩でプレーブックを覚えたという河村勇輝。すでにチームを掌握 [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

あっさりとB1最年少記録を更新

ボールを持てばリングを目指した河村勇輝 [写真]=B.LEAGUE


 豊橋市総合体育館に詰め掛けた3036名のファン・ブースターの視線は、1人の高校生に注がれていた。特別指定選手として三遠ネオフェニックスと契約した河村勇輝は、1月25日の千葉ジェッツ戦でB1デビューを果たしたのだ。

 前日の入団会見の際、鹿毛誠一郎GM兼アシスタントコーチが出場を明言していたが、チームのアクシデントもあり、意外と早くその時が訪れた。三遠の先発ポイントガードの鈴木達也が開始1分31秒、腰を抑えてベンチに下がった。代わりにコートに入ったのは寺園脩斗だったが、第1クォーター残り時間3分41秒、大歓声の中、河村勇輝がコートに立った。

 河村は外しはしたものの、いきなり3ポイントシュートを放ってみせた。直後、マッチアップする富樫勇樹にピック&ロールから2本連続でシュートを決められただけでなく、ターンオーバーも犯してしまう。

 しかし、ここで動揺しないのが河村と言えよう。次第にゲームをコントロールし始めると、残り45秒にフリースローを獲得。そして、何事もなかったかのように2本をきれいに決めてしまった。18歳8カ月23日、河村はB1史上最年少出場と史上最年少得点の2つの記録を更新した。

 そのクォーターの終了間際には、ボールを奪った太田敦也からパスを受けて、一気にリングを目指した。最後は千葉のコー・フリッピン大倉颯太の間を割ってレイアップシュートを決めると、ファン・ブースターのボルテージは一気にピークに達した。

 試合は、第3クォーター、ディフェンスの強さを増した千葉が三遠にイージーシュートを許さず7得点に抑えると、完全にゲームを掌握。終わってみれば三遠を56点に抑えて、連勝を6に伸ばした。

周囲が高評価を与える中、河村は反省のコメント

千葉の富樫勇樹ともマッチアップでも臆することなくプレッシャーをかける河村 [写真]=B.LEAGUE


 試合後、記者会見で実際に河村とマッチアップした千葉の富樫勇樹は「高校生とは思えなかった」と驚きを隠さなかった。富樫が舌を巻いたのが河村のチームを掌握する力だという。「多分数日しか練習してないはずなのに、すでに他の4人を(思い通りに)動かしていましたね」とコメント。

「初めて自分より年下でワクワクさせる選手」と河村のことを認めている富樫。「天皇杯(2次ラウンド)の時も言いましたが、今でもすぐプロになった方がいいと思っています。でもそれを決めたのは自身なのでとやかく言う立場ではありませんが、僕のように高卒からプロになる選手が出てきてほしいから」と河村にエールを贈った。

 三遠の河内修斗ヘッドコーチは 河村について「高校生と見ていない」とコメント。河村に対して「一人のプロとしての覚悟を持って三遠に入団してくれました。今日の試合もポイントガードとしてチャンスなら3ポイントシュートを打ち、ドライブでもいいアタックをしてくれたし、エナジーを持ってディフェンスをしてくれました」と評価した。「河村がコートに入ると、確実にバスケが速くなります。自分たちもそれに続かないと」と、河村のパフォーマンに脱帽だ。

 その河内HCが河村について驚いたことを明かしてくれた。「初めて会った際に三遠の(オフェンス、ディフェンスのシステムを説明した)プレーブックを渡したら、一晩で覚えてきました。今日もターンオーバーを犯す場面がありましたが、そのあとにしっかり修正できる。バスケIQは本当に高いと思います」。

 最後に記者会見に登壇した河村は「緊張もなくすっと(ゲームに)入れました」と最初にコートインした時の心境を振り返った。そして「自身としてはターンオーバーが多く、敗因の一つを作ってしまいました」と反省の弁を述べた。

 河村は「自分のバスケが通用する部分はありました。いろんなことを感じられた試合だったと思います」と感想を述べる。通用した部分は「スピードです。このスピードを使いながらいろんなバスケをしたいし、脅威になると思います」と分析した。

 第3クォーター以降、パフォーマンスが落ちたことに関しては、「前半の最後のほうで相手選手の膝が太ももに入ってしまい、ハーフタイムでテーピングを巻いてもらいました」という状況でのプレーだったことを明かす。後半は敗戦濃厚の場面でコートインすることもあったが、「プロとして40分間しっかりとプレーすることを考えていました。最後まで諦めない、流れを変えられるプレーができるようにしたいと思っていました」と振り返る姿は、まさにプロそのものだった。

デビュー戦とは思えない落ち着いた表情でプレー [写真]=B.LEAGUE


「これからお互いもっとわかり合えればもっといい方向に向かうと思います。自分もチームももっとやれるはず。この反省をしっかりして明日の試合を戦います」

 プロとしてプレーするのは大学での活動が始まるまでの限定期間。その中で「爪痕を残したい」という河村。すでにデビュー戦で存在感を示しただけに、次は自身が目指す「勝利に導く司令塔」の姿を見せてほしい。

文=入江美紀雄

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