2020.05.24

【田中大貴レギュラーシーズンMVPインタビュー(前編)】馬場雄大のアメリカ挑戦をモチベーションに替えて

初のレギュラーシーズンMVPを受賞した田中大貴にロングインタビュー [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

初のレギュラーシーズンMVPを獲得した田中大貴アルバルク東京)は授賞式で「フロント、スタッフ、コーチ陣、そしてチームメートに感謝したいです」と喜びを隠さなかった。後日、その田中に改めて今シーズンを振り返ってもらった。インタビューではチームメートやスタッフのこと、MVP受賞の意味、そしてどんな思いを持って今シーズンに臨んでいたかなどをたっぷりと語っている。

取材=入江美紀雄

信頼厚いベテランたちとチームを支える

――レギュラーシーズンMVP受賞おめでとうございます。まず今シーズンを振り返ってほしいのですが、3連覇を目指すシーズンの開幕直後はケガ人が出たこともあり、なかなかベストメンバーが組めない苦しい状況でした。そのころを振り返ってください。
田中 自分としては(馬場)雄大(テキサス・レジェンズ)がチームから離れると開幕前に分かった時、自分たちにとってかなりダメージがあるだろうと覚悟はしていました。昨シーズンのようにうまくいかないこともあるのではないかと。でも雄大がいなくなったから成績が落ちたと言われるのは本意ではないですし、「自分たちだけでも戦えるぞ」ということをアピールしたかったのでモチベーションにもなりました。

――逆にやってやろうという感じですか?
田中 仮にそうなってしまったらチームを離れた雄大も申し訳なく思うでしょうし。だったら「いなくても大丈夫」というくらいの成績を残してやろうと思ってました。

――その中で長い期間離脱することもなくシーズン過ごせたのは久々ではありませんか?
田中 今シーズンは2試合休んだだけでしたが、これまでのシーズンと違って自分がいないことが周りの選手の負担になるとも思っていました。事実、(小島)元基が離脱した時、安藤(誓哉)が見ていてかなり負担になっていたように感じました。今まで見たことのないような疲れ具合だったので、自分もケガして抜けるのはまずいという思っていました。ですから今シーズンは全試合に出るつもりでいたので、普段以上にコンディショニングに気をつけてましたね。

ベテランの菊地祥平(右)が試合だけでなく練習からチームをけん引 [写真]=B.LEAGUE


――シーズン序盤はベテラン勢がしっかりとチームを支えていたように見えました。
田中 (菊地)祥平さんには信頼を置いています。自分のやるべきことをチームでも一番分かっていて、それをひたすら全うする方です。今までやってきた経験があってこそだと思うので、とても頼りになります。特に自分たちが夏の間、代表活動で抜けた時、チームに残っている人数も少ない中で、ハードな練習をベテランの選手が率先して行っています。それだけに信頼は厚く、チームにとっても大きな力だと思います。そしてタケさん(正中岳城)は昨シーズン、プレータイムがそこまで多くなかったので試合勘への心配もあったとも言えます。しかし、普段から練習やその後の取り組みなど、Bリーグになる前、トヨタ時代からその背中を見てきていますから、そんな心配もありませんでした。2人の存在は自分たちが大崩れしない一つの要因にもなっているのかなと思います。チームを支えてくれている頼もしい選手たちです。

自身のプレーが年々成長していると実感

――2連覇中のアルバルク東京に対して、各チームが様々な策を打ってきたとも言えます。
田中 今シーズンは(サンロッカーズ)渋谷や秋田(ノーザンハピネッツ)が良い例で、動けるビックマンが激しいディフェンスを仕掛けて来る傾向にありました。宇都宮もそうですね。自分たちもそれに対してどうやってアジャストするのかを練習でもずっとやってました。

「最も成長した」と田中が太鼓判を押したのがベンドラメ礼生 [写真]=B.LEAGUE


――田中選手にマッチアップをしてくる相手選手についてはどうですか?
田中 Bリーグのアワードを獲得したり、日本代表のメンバーはいつも通り安定して力を発揮していたと思いました。自分が特に成長したと思えたのが(ベンドラメ)礼生(SR渋谷)です。良いシーズンを送ったのではないでしょうか。対戦しても気合いが入っているのがわかりましたし、プレーにも責任感が出ていたように見えました。彼は最終的にワールドカップのメンバーに選ばれませんでしたが、それに対する思いを持ってのシーズンだったのでしょう。そういうこともあり、開幕前の記者会見で「今シーズン注目している選手は?」という質問に彼の名前を出しましたが、その通りになったのかなと思います。

――アルバルクではフィニッシャーでもありながらボールハンドラーの役割も持っています。ボール運びをしてピックの起点になったり、最後にシュートを放ったりと仕事は多いと言えます。アレックス・カークとの連携も年々良くなっていると思いますが、”ゲームを作る”ということに関する成長度はどう感じていますか?
田中 年々良くなっていると思います。練習も試合も重ねてますし、長くやればやるほど成熟していくものではないでしょうか。ルカ(パヴィチェヴィッチ)ヘッドコーチが就任した当初よりは良くなってなきゃいけないというものはあります。

――手応えを感じますか。
田中 はい。でももっと完璧にこなしたいとも思っています。試合だけではなく普段の練習から完璧にできるようにしたくて。それは自分の中でルカHCに教えてもらっていることがモチベーションにもなっていることにもつながっていて、彼に認められたいという思いもありますから。今まで世界のいろんな国でいろんな選手を指導して見ているので、彼が求めるレベルに一緒にやっている間になるべく近づけるようになりたい。どこかで認めてもらいたいなという思いがあるので、普段から彼にアピールしていて。それがモチベーションの1つになっています。

(後編に続く)

取材はネットを使って行われた [写真]=アルバルク東京

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