2020.05.25

【田中大貴レギュラーシーズンMVPインタビュー(後編)】もっともっと自分を来シーズンも高めていきたい

ゲームコントロールにディフェンスと田中大貴の仕事は多い [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

初のレギュラーシーズンMVPを獲得した田中大貴アルバルク東京)は授賞式で「フロント、スタッフ、コーチ陣、そしてチームメートに感謝したいです」と喜びを隠さなかった。後日、その田中に改めて今シーズンを振り返ってもらった。インタビューではチームメートやスタッフのこと、MVP受賞の意味、そしてどんな思いを持って今シーズンに臨んでいたかなどをたっぷりと語っている。



取材=入江美紀雄

全日程を消化して、もう一度シーズンMVPを獲得したい

――過去3回のシーズンMVPはどちらかといえばオフェンスに対する評価が大きかったと思います。それに対して、今回の田中選手の受賞はディフェンスの面でも高い評価を得たと言えるのではないでしょうか。
田中 アルバルクはディフェンスのチームだと思います。実際ルカ(パヴィチェヴィッチ)ヘッドコーチは「ディフェンスが良いチームじゃないと絶対優勝できない」と言っていますし、自分もそう思います。自分はディフェンスのレベルを引き上げて、チームのスタンダードを保つ役割も担っています。それでもオフェンスではどうしてもゲームをクリエイトしなければいけないこともあるので、ともにハードにプレーするのはなかなか難しいのですが、今後もそれを目指したいなと。どんなに疲れていてもどっちもできるように力をつけたいと思っています。

昨夏、中国で行われたFIBAワールドカップでの反省が田中を成長させている [写真]=Getty Images


――ベスト5に4年連続で選ばれたたことについてはどう思っていますか?
田中 もちろん選ばれたことはうれしいですね。この賞は選手やコーチの投票で選ばれてるので光栄です。ただ自分としては最低限選ばれないといけないのかなとも思います。逆に「これに選ばれなかったら情けないじゃない」ぐらいの気持ちを持っています。別に天狗になっているわけではないのですが、やはり(昨夏の)ワールドカップが終わってから、自分がどのように(東京)オリンピックで戦っていくのかを考える中、国内で結果が出せなくてその上のレベルで結果が出せるわけないと思っています。今シーズンはベスト5とMVPをいただきましたが、では全てが良かったかと言われればそうじゃないので、もっともっと自分を高めていきたいですね。

――ファイナルMVPは2シーズン前に獲得しましたが、今回初受賞したレギュラーシーズンMVPは意味合いが違いますか?
田中 ある意味短期決戦で決まるファイナルMVPと比べ、シーズンMVPは長い期間を通してしっかりとしたパフォーマンスをできないともらえない賞なので重みは違うと思います。NBAでもファイナルMVPとシーズンMVPでは周囲の評価もシーズンMVPに重きを置いているように見えます。ただ今シーズンは途中で終わってしまったので、来シーズン、すべての日程をこなした後、誰もが異論なく皆が納得する形でもう一度取るのが一番いいのかなと思います。

同じルーティーンになるように1週間のスケジュールを組む

――ネットでの受賞セレモニーでは、高校時代の恩師である後藤慶太先生や東海大学の陸川章監督など多くの方がメッセージを送られていましたが、特に胸に響いた言葉はありましたか?
田中 直前まで自分が受賞できるのかを伝えられてなかったので、全くビデオメッセージのことは頭にありませんでした。出演されたのが自分のバスケ人生にとてもプラスになる影響を与えてくださった方ばかりだったので、今回は最高の人選だったと思います。中学時代の先生ももちろんそうで自分の中で大きな部分を占めてます。比べることはできませんが、自分が大学に入ったばかりの時、父親を亡くして長崎に帰っている時、大学に戻るのかどうか、本当に落ちるとこまで落ちて、バスケットのことなど頭になくなって。長崎の家族とそのままいようかなと思うくらいでした。ビデオでも話してしていただいたとおり、陸川先生に「俺が(親)代わりになってあげる」というように電話で言われたことを今でも鮮明に覚えていますし、あの言葉にとても救われました。バスケットだけではなく、多くの部分でサポートをしてもらったので感謝の気持ちは大きいです。

――思い通りに外出もできない状況が続いています。普段の生活から気をつけていることは?
田中 なるべく同じような流れで過ごしたいなと思っていて。1週間のスケジュールを、基本同じルーティーンになるように、トレーニングをする日数、時間もある程度調整して、同じようなサイクルで行うようにしています。

――こういう機会がなければじっくり自分に向かい合う時間もないのでは?
田中 もっと自由に外に出てトレーニングだったり人と交流したり、違った刺激を受けるのもいいのかなと思います。でもこうやって何も無い時間があるのも新鮮なので。自分はあまり退屈せずポジティブにやれているのかなと思います。

三度ファンと喜びを分かち合いたい。田中の大きなモチベーションとなっているようだ [写真]=B.LEAGUE


――最後になりますが、シーズン途中で中止になってしまって残念がっているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
田中 今年は3連覇がかかったシーズンで、最後に横浜アリーナでファンのみなさんと優勝を喜びあえると信じていました。この2年間、自分の中でどれだけ嬉しかったのかを覚えていますし、今回も良い思いをしたいと思っていました。残念な形でそれは叶わなかったのですが、来シーズンも優勝を目標に、一生懸命準備して良いシーズンを送るつもりです。自分たちも試合だけでなくバスケットボールから長く離れて寂しい思いをしてます。それはみなさんも同じ気持ちでしょう。再開できたらよりもっと盛り上がれたり、一緒に熱くなれるように、今はやるべきことをしっかりやって、またお会いできる時に精一杯プレーできるように準備しておきます。会える日を楽しみにしています。

――ありがとうございました。

インタビューはネットを介して行われた

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