2020.06.04

田中大貴(アルバルク東京)×渡嘉敷来夢(JX-ENEOSサンフラワーズ) Bリーグ&WリーグMVP対談

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 最初に名前が売れたのは渡嘉敷来夢の方だった。中学時代からバスケ界にその名をとどろかせ、桜花学園高校に入学すると、2年生の春に史上最年少となる16歳での日本代表候補入り。桜花学園ではウインターカップ3連覇を含む8度の全国制覇を達成した。そして高校卒業と同時に日本最高峰のWリーグへと活躍の場を移す。一方、長崎西高校から東海大学へと進学した同期の田中大貴は3年生の時に日本代表に初招集され、渡嘉敷から数年遅れてトッププレーヤーの仲間入りを果たした。

 2人に転機が訪れたのは2016年。8月にリオデジャネイロ・オリンピックで女子日本代表がベスト8進出の快挙を成し遂げ、中心選手の1人として奮闘した渡嘉敷の名は日本中に知れ渡った。そして田中も9月、Bリーグ開幕戦の舞台に立ち、勝利したアルバルク東京のエースとして全国区の知名度を獲得した。

 両者はそれからも順調にステップアップし、田中はBリーグ2連覇、渡嘉敷はWリーグ11連覇に貢献。2019-2020シーズンのBリーグ、WリーグではともにレギュラーシーズンMVPを受賞した。

 日本バスケ界をけん引してきた田中と渡嘉敷は同期ながら、意外にも接点が多くなかった。しっかりと会話をするのは実質これが初めて。最前線を走り続ける両者はどんな想いで互いを、男女バスケ界を見ているのか。

取材・文=安田勇斗

田中は今シーズン4年連続ベスト5、自身初のレギュラーシーズンMVPを受賞した[写真]=B.LEAGUE

お2人は同期ですが、初めて出会ったのはいつですか?
田中 たぶん(日本代表の)合宿の時かな。
渡嘉敷 うん、そうじゃない?
田中 確か大学生の時に合宿で見かけたのが最初だと思います。

今は連絡を取り合ったり個人的な交流もあったりするのですか?
田中 たまーに、ですね。
渡嘉敷 ずっとご飯に連れていってとお願いしてるのに、なかなか連れていってくれないんですよ(笑)。
田中 (笑)。渡嘉敷選手は(張本)天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)とか、宇都(直輝/富山グラウジーズ)とかと仲がいいみたいですけど、自分はそこまで話したことがなくて。あいさつするだけでも緊張しちゃいます(笑)。
渡嘉敷 確かに合宿で会っても、「あ~」ってあいさつするだけだよね。
田中 どう話しかけていいのかわからないです。
渡嘉敷 何かよそよそしいんですよ。

高校時代はともに全国大会に出場していますが、お互いの存在は知っていましたか?
田中 自分はもちろん知っていました。高校時代から有名でしたし。一つ面白い話があって……。
渡嘉敷 修学旅行の話でしょ?
田中 そうです、そうです、そうです。自分は長崎の高校だったんですけど、学校中で「今日電車の中にすげえ大きい女の人がいた」という話がバーッと広まってて……。
渡嘉敷 修学旅行で(長崎に)行ってたんですよ(笑)。
田中 最初は渡嘉敷選手だってわからなかったんですけど、あとあと修学旅行で来てたらしいよって聞いて、「あっ、絶対そうじゃん」みたいな感じになりました(笑)。

皇后杯では7連覇を達成。渡嘉敷自身はWリーグと皇后杯の両大会でMVPを獲得[写真]=伊藤 大允

渡嘉敷選手は大貴選手のことをご存知でしたか?
渡嘉敷 その時は知らなかったですね。宇都さんと天傑は同じ愛知県の高校だったので知ってましたけど。当時はケータイもなかったですし、本当に他のチームの情報は雑誌でしか知らなくて。その後、東海(大学)に、長崎から来た人がうまいって聞いて。最初誰だろって思ってたんですよ、全然わからなかったから。そしたらもう、ほら、(大貴選手の方を指して)田中選手。大学で活躍しているのは聞いていました。

男子では大学を経由して社会人になる選手が多いですが、女子は渡嘉敷選手のように高卒選手も一定数います。他競技と比べても、男子バスケに高卒選手が少ないのを、大貴選手はどう感じていますか?
田中 自分も気になるというか、逆に女子が高卒でトップレベルのリーグに行くのがなぜか知りたいですね。
渡嘉敷 たぶんですよ、女子の方が選手生命が短いというのが一つ。それと、高校卒業後の4年間ってグッと伸びる時期なので、大学よりも実業団でやった方がいい、というのがあるのかなと。
田中 自分も早いうちに高いレベルを経験できるなら、どんどんチャレンジした方がいいと思います。海外を見ても、若いうちからプロでやっている選手が多いので、男子ももっと増えてきてほしいなと感じます。

男子はBリーグ開幕まで、女子はリオ五輪まで、そこまでバスケットの注目度は高くありませんでした。それまでお2人はバスケ界をどう盛り上げていきたいと思っていましたか?
渡嘉敷 こういうふうにしたいというものは明確にはなかったのですが、私はそれでも女子の中ではテレビに出たり、取材していただいたりしていたので、表に出る機会があれば積極的に女子のリーグもあるんだよ、というのを伝えていこうと思っていました。
田中 Bリーグができる前は、正直に言えば、この先どうなるのかな、ぐらいしか考えていなかったです。大学時代に日本代表に呼んでもらって、もちろん代表を強くしたい想いはありました。ただ当時は世界の舞台から遠ざかっていましたし、自分が盛り上げていく想像はできなかったですね。でも、Bリーグができてからは変わってきて、ワールドカップに出ることができて、この先にはオリンピックもあって、少しずつイメージができるようになってきました。

田中は得意のアウトサイドシュートに加え、ドライブやパスでも得点機を演出する万能型[写真]=B.LEAGUE

Bリーグが開幕して人気も高まってきた現状をどう捉えていますか?
田中 リーグは年々良くなっていると思います。以前のNBLも経験しているので大きく変わったと実感しています。ただそれは自分たちの力ではなく、周りの方々が舞台を整えてくれたからで、これからは選手たちがリーグのレベルをもっと上げていかなければと感じています。それが選手が負うべき責任ですし、今の環境を活かしてもっとリーグを盛り上げていければと思います。

Wリーグの現状はいかがでしょうか?
渡嘉敷 ホーム&アウェイ方式ではなく、いろいろなところで試合をしているのですが、場所によってはたくさんの方々が来てくれています。ただ、それがいつもというわけではないので。男子の試合は何度も見に行っていますが、どこもほぼ満席でうらやましいなと思います。選手としては満員の会場でプレーしたいし、そのような環境でプレーすることで、パフォーマンスももっと上がるのではないかと感じています。

今シーズンはともにリーグMVPを受賞しました。自身のプレーをどう評価していますか?
渡嘉敷 今シーズンは16試合しかできていなくて、良くも悪くもなく、何か変化があったシーズンというわけではなかったです。スタッツで言うと、3ポイントシュートを決められなかったので、次のシーズンに向けて修正していきたいです。
田中 大事な時期を迎える前にシーズンが終了してしまって。41試合こなして、コンディションもいい感じで、チームも勝ち星を重ねて東地区のトップ争いをしていたのでいいシーズンだったとは思いますけど、ここからという時に終わってしまって評価するのは難しいですね。

同じバスケ選手として、お互いのプレーですごいと感じるところは?
田中 そうですね、うらやましいことばかりですね。
渡嘉敷 またまたまた、もうやめてよー(笑)。
田中 女子の中ではずば抜けてサイズもあるし、身体能力もあるし、与える影響力もすごく強いと思うので。勝手に、同世代ですし、自分は「渡嘉敷世代」と呼んでますんで。
渡嘉敷 勘弁してよ(苦笑)。
田中 渡嘉敷選手のように、自分もしっかりレベルを上げていきたいです。JX-ENEOSは今何連覇ですか?
渡嘉敷 11です。
田中 11ですよ!? それだけ勝ち続けることをどう思っているんですか? 想像できないですけど、そうした実績もうらやましいですね。
渡嘉敷 富樫勇樹千葉ジェッツ)選手にも「そんなに連覇してどう思うの? 移籍は考えないの?」って聞かれるんですけど、相手チームも毎年補強して強くなっているので、負けないための準備をすること、それ以上に強くなることが自分たちのモチベーションになっています。どこもうちを倒そうと全力で来るのでプレーしていて楽しいですね。
田中 まあ、自分も渡嘉敷選手の立場だったら移籍しないですね。勝ち続けたいです(笑)。
渡嘉敷 私はBリーグの試合をたくさん見るんですけど、田中選手はプレーの部分でブレないな、というか、余裕を感じられる。3本(シュートを)打って3本入らなくても勝負どころでもう1回タイミングが来た時にしっかり打って決めきれる、そのメンタリティとか、いや、すごいなって。こういう人がエースって言われるんだなと。

渡嘉敷は持ち前のフィジカルを活かしたプレーに加え、外角シュートなど得点パターンも豊富[写真]=兼子愼一郎

渡嘉敷選手は6月に、大貴選手は9月に29歳になり、20代ラストイヤーを迎えます。節目の1年をどう過ごしたいですか?
渡嘉敷 プレー面で満足していない部分もありますし、例えば男子だと私と同じ身長で3ポイントシュートやドリブルがうまかったり、ボールを運ぶのが得意な選手がいたりして。女子の中で身長が高いから「中」だけ、という固定概念にとらわれず、今は3ポイントシュートをたくさん練習しているのですが、20代最後の年はもっともっと練習して、いろいろなことができる選手になりたいと思っています。
田中 オリンピックを目指す身として、まずはしっかりと準備をしなければいけないと感じています。東京五輪に向けてもっとレベルを上げていけるように、今よりもいい状態で臨めるように、1年間がんばりたいと思っています。

東京五輪の話が出ましたが、その前に来シーズンが控えています。
渡嘉敷 今シーズンは中止になってしまったので、来シーズンこそ12連覇できるように、いいチームを作っていければと思います。
田中 自分は3連覇が懸かったシーズンでしたけど、来シーズンもう一度そこを目指して戦えるように、できることならお客さんが入ったアリーナでプレーしたいですね。

せっかくなので聞きたいこと、言いたいことなどあれば……。
渡嘉敷 好きな食べ物は焼き肉で、連れて行ってほしいお店は焼き肉屋さんです!
田中 11連覇と2連覇なんで、11連覇の方にごちそうしてもらいますね。
渡嘉敷 そこはリーグがより盛り上がっている方で!
田中 (笑)。自分が聞きたいのは、女子は男子に比べて試合数が少なくて、昔の自分たちと一緒で今はプロじゃないですよね。でも代表は女子の方が強くて、(オリンピックの)金メダルも狙える位置にいる。国内でもっと盛り上がってほしいと思うし、今のリーグの状況を選手はどう思っているんですか?
渡嘉敷 私はほぼプロのつもりでプレーしていますし、東京五輪に向けてもっとリーグを盛り上げていきたいと思っています。日本代表には他にもそういう意識を持った選手が多いですね。試合数については、私が入った頃はもっと多かったんですよ。いろいろなことが重なって、今の形になったのではないかなと思います。話は変わりますが、田中選手は自由に外出できるようになったら何がしたいですか?
田中 もともとアウトドア派ではないんですけど、もし行けるようになったら沖縄とかでゆっくりしたいですね。リーグ戦は途中で終わりましたけど、ずっとトレーニングは続けていて、あまり休めなかったので。一度どこかでまとまった休みが取れたら、落ち着けるところに行きたいです。
渡嘉敷 わかる! 本来ならリフレッシュしてる時期だからね。
田中 リーグの話に戻すと、個人的には、男女で一緒に何かできればいいなと思います。日本代表では男女で同じ日に試合があったりしますが、リーグでもそういう交流があったら面白いかなと。
渡嘉敷 男子の盛り上がりに寄り添っていきたいですね(笑)。例えばオールスターを同じ日に開催するとか。男子のファンが女子の試合を、女子のファンが男子を見るという機会が欲しいですね。
田中 今は交流がほとんどないので、どんどんやっていきたいです。

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