2020.09.30

それぞれの開幕へ…プレシーズンマッチで激突した宇都宮ブレックスと富山グラウジーズの“今”

プレシーズンマッチを行った宇都宮と富山[写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 時が止まったあの2020年3月から約半年、10月2日にいよいよ待ちに待ったBリーグが開幕する。どのチームも最終調整段階に入っている中、9月27日のブレックスアリーナ宇都宮では今シーズンも優勝候補の一角と目される宇都宮ブレックスが、浜口炎ヘッドコーチを招へいして新たなスタートを切った富山グラウジーズを迎え撃った。

交流する両指揮官[写真]=鳴神富一


 外国籍選手も早期に入国が完了し、ほぼチームの体制が固まりつつある宇都宮。プレシーズンの好調さをそのままに、この日も攻守両面でインテンシティの高いバスケットを展開する。課題とされていたゲームの入りも悪くなく、第1クォーター中盤からゲームのペースをつかんだ。

 一方の富山は大黒柱になり得る外国籍選手のジュリアン・マブンガが、数日前にチームに合流したばかり。ファン・ブースターの前に勇姿を見せるのも、この日が初めてという状況だった。ビッグマンは橋本晃佑のみという状況もあってか、この日はスモールラインナップを敷き、ドライブからのオフェンスやアウトサイドシュートで応戦していく。

 それでもロスターがほぼそろった宇都宮にインサイドから得点を重ねられ、苦しい展開を変えることができなかった。加えて昨シーズン新人王を獲得した前田悟が前半に負傷、後半早々にはマブンガをもケガで欠き、後半はほぼ日本人選手のみで戦うこととなる。

 そうした状況もあって、宇都宮は終始ゲームの主導権を握り続け、最終的スコア106-66で勝利。宇都宮はプレシーズンゲーム6戦全勝でシーズン開幕を迎えることとなった。

プレシーズン全勝も油断の色は見えない宇都宮

「現状の課題に対してしっかりとプレーを改善できた」と総評した宇都宮の安齋竜三ヘッドコーチ。このゲームの前週に行われた川崎ブレイブサンダースとの練習試合で相当の課題が露呈したと話していたが、この日を含めた直近の2試合で改善され、手応えを感じている様子だった。

 それでも、久しぶりにホームアリーナで迎えるシーズン開幕戦に向けて、油断の色は見えず。対戦相手となる琉球ゴールデンキングスのチームケミストリーの良さに警戒心を滲ませつつ、開幕戦への意気込みを語る。

「現状はプレータイムもある程度シェアできて、選手個々の良さも出てきたと感じています。開幕戦はチームとして戦いながら、激しい琉球さんのディフェンスに対して、どうオフェンスを組み立てるのか。あとはメンタルですね、まずは初日の40分間しっかりと良い状態を保って戦い、ホームなので勝利という結果は求めないといけない。そこだけに集中して準備していきたいと思います」

HCにつづきロシターも琉球への警戒心を語った[写真]=鳴神富一

 この日活躍したライアン・ロシターも、「開幕に向けて良い準備ができた」と試合を振り返りながらも、琉球のチームケミストリーには警戒心を見せた。

「琉球は元から長く一緒にプレーしている選手が多い、そこで積み重ねてきた素晴らしいチームケミストリーを持って戦ってくるだろう。開幕戦は誰にとっても、少し違う緊張感や通常のリズムに乗れないなど難しい部分がある。それでもしっかり準備をしてベストなパフォーマンスを出したい」

 そして優勝候補の一角として「チームに加入して8年間、ずっと目標は優勝すること。我々はいつもそれを狙えるチームであったと心から思っているし、そう言い続けられるチームはリーグでも数少ない。やはり優勝を目指す為には1日1日の積み重ねが大事で、これからも継続して努力を重ねて優勝を目指したい」と締めくくった。

浜口炎HCの下、新たなチーム像を描く富山

 一方の富山はロスターが全員そろわない中で開幕を迎えることとなる。「開幕1週間前に宇都宮さんのようなリーグでもトップレベルのチームと対戦できて良かったです。選手にはハーフタイムと試合後に伝えましたが、ゲームに対して準備をしてファイトするという部分はもう少しできたと思います」と浜口ヘッドコーチは試合を振り返った。

 開幕戦の相手は昨シーズンまで指揮をしていた京都ハンナリーズ、奇しくも古巣対戦となる。ハンナリーズアリーナに乗り込んで行う開幕戦について浜口HCは、「率直に楽しみです。開幕戦はどんなことが起こるか分からない。チーム一丸でアウェーに乗り込んで、ぜひ勝利をつかみ取りたい」と意気込んだ。

 これまでの富山は個の力とオフェンス力を強みとしていたが、浜口HCはそこに堅いディフェンスを加えて、新たなチーム像を描こうとしている。

「グラウジーズにはこれまで培ってきた良い文化があるので、それを継続しつつ僕が考えていることを加えて、チームとしてステップアップできればと思っています。ボールハンドラーが多いですけど、それでもボールシェアして選手のイージーショットを生み出したい。ディフェンスも少しずつファイトしてエナジーを出してきているので、このまま向上させていきたいと考えています」

プレシーズンマッチで古巣対戦を迎えた橋本[写真]=鳴神富一

 今夏、宇都宮から富山に加入し、早くも古巣対戦が実現した橋本は、「今日は古巣対戦ということで充分気合が入っていました。前半は少し緩んでいたディフェンスも、後半には自分たちがやろうとしている部分を少しは出せたと思います」と試合を振り返った。

 また、プレシーズンで古巣対戦を迎えるとは思っていなかったようで、「思いの外、早く凱旋試合が来たなと(笑)、 久しぶり感はなかったです」とコメント。一方で“故郷”での試合にやはり特別な思いはあったようで、「ここは自分がプロキャリアをスタートした場所で、さらには生まれ育った街にあって…やはり改めてブレックスアリーナはいいなと感じました」と感慨深い様子だった。

 そして来たる開幕戦に向けては、力強く意気込みを語った。「開幕まであと1週間しかないですけど、プレシーズンで重ねてきた良い部分は伸ばし、悪い部分はしっかり修正して、しっかり一戦一戦を戦っていきたいです」

 再び動き始めた時間、今シーズンは新たなスタイルで開幕を迎えるBリーグ。あのド派手でセンセーショナルな開幕戦から時が経ち、記念すべき5シーズン目を迎える。節目のシーズン、この逆境を乗り越えた先には再び日本バスケの明るい未来が待っているはずだ。ここで敢えて最後にこの言葉を伝えたい。

「準備はいいか?」

文・写真=鳴神富一