2021.01.12

若きBリーガーを発掘する『B.DREAM PROJECT』…選手の思いとクラブの考え方

『B.DREAM PROJECT』にはクラブとの契約を目指して選手、コーチたちが集まった [写真]=B.LEAGUE
1986年生まれ。バスケットボールのライターとして3x3が得意領域。国内外のトレンドを追い、競技の歴史を紡いでいます。5人制もbjリーグ時代から、Bリーグに至るまでカバー。また毎年の楽しみは代々木のALLDAYに行くこと。

コロナ渦でチャンスを失われた中、Bリーグ入りを目指す選手たち

 プロ志望の意欲的な若い選手、コーチを対象としたBリーグの人材発掘プロジェクトである『B.DREAM PROJECT 2021』が1月10日、11日の2日間に渡って開催された。2017年からスタートしたこのプロジェクトも今回で6度目。Bリーガーとして活躍することを目指して、過去5度の開催でのべ524名の選手が参加をしているが、契約に至った人数はわずか1割以下の43名、合格率にして8パーセントの狭き門である。

 それでも過去には、ここでチャンスをつかんだ選手がいる。例えば丹野合気だ。当時、明星大学に在学しながらこれを経て東京エクセレンスに加入し、得点力のあるガードとして成長を遂げたすえに、今シーズンよりB2西地区・ライジングゼファー福岡との契約を勝ち得た。いわゆるトライアウトからプロへはい上がった選手の一人である。

 今年は2021年3月31日において満22歳以下の男子を対象に、まず初日のRound1に67名が集まった。15歳から22歳の選手たちが5~6人のチームに割り振られ、試合形式となる2度のスクリメージによって、23名に絞りこまれた。そして2日目のRound2は事前選抜者20名に、Round1をパスした合計43名が8つにチーム分けをされ、プロ志望のコーチ(6名)を交えた2度のスクリメージに参加。多数のBリーグクラブ関係者が視察に訪れる中、その後20名に選抜され1度、最終的に10名がピックアップされてもう1度、スクリメージが実施され、トライアウトは終了した。

 参加選手は皆、限られた時間で自分を最大限に表現しようと、コートで奮闘した。昨春から続く新型コロナウイルス感染症の影響で、若い世代がバスケを披露する大会は中止を余儀なくされ、また大会があったとしても辞退の憂き目にあったチームが存在したことも記憶に新しい。彼らはこの舞台に様々な思いを持って挑んでいた。

「地方の大学で(プレーしているので)見ていただく機会がなかなかありません。それでも自分はプロに行きたいと思っているので、応募しました」と話してくれたのは、富山大学3年生の森川凌。初参加ながらRound1を突破し、Round2では最後の10人まで生き残った。その10人では最も小さい168センチの身長ながら、大学に加えてSOMECITYでも活躍する彼らしく卓越したボールハンドリングや1対1の駆け引きの上手さでマークを外して、ドライブや3ポイント、アシストを重ねてインパクトを与えてみせた。

 彼の挑戦の背景にはコロナ禍も影響した。「(昨冬は)インカレの出場を決めていたのですが(チームが出場を)辞退をすることになったからということもあります」と、Bリーグクラブが注目をする大学バスケ最高峰の舞台に立てなかった思いも彼の中にはあった。2日間を終えて「自分のプレーが出せて、それで最後まで残れたので良かったです」と。やれることはやった。あとは吉報を待つのみだ。

富山大学3年生の森川凌は168センチの身長ながら最後の10名に残った [写真]=B.LEAGUE

 明治大学4年生の植松義也も最後の10名に選抜され、インパクトを残した選手の一人だ。190センチを生かしたディフェンスで強さを発揮し、3ポイントシュートなどアウトサイドでプレーする力も兼ね備える。加えて即席チームの中心としてコミュニケーションを取り、仲間をリードする姿もあった。

 彼もまたコロナ禍と無縁ではなく、昨年春から夏にかけて同大バスケ部も活動自粛を余儀なくされたという。当時は部のトレーナーから送られるトレーニングメニューや、人がいない時間帯を狙って外のリングでシューティングを重ねたと振り返り「コロナで一人のときに頑張らないと、やっぱりプロになったときに頑張ることができないと思って取り組みました」と自分と向き合い続けた。

 今回、昨年に続く2度目の挑戦…加えて昨夏にはBリーグのとあるクラブのトライアウトに挑戦したことも明かした。それゆえに「大学(最後の)シーズンを終えましたが、スカウトの人から声がかかりませんでした。でもBリーグに行きたい気持ちがあります。本当にここに懸けています」と、その思いは強い。「プロになることがゴールではなく、プロで活躍するために、プロになりたい選手たちを抑えて、自分がプロにならないといけないと思う」とプロジェクトを通過点に、きっかけをつかみ取る決意を感じさせてくれた。

明治大学4年生の植松義也「自分がプロにならないといけないと思う」と決意を語った [写真]=B.LEAGUE

クラブのトップに聞いた獲得したい「選手像」

 一方で、視察したクラブ関係者にとって、このプロジェクトはどういった意味合いを持つのか。過去にこの場を通じて選手を獲得したB3トライフープ岡山でヘッドコーチ兼GMを務める比留木謙司氏と、同東京エクセレンスの代表取締役社長である向井昇氏は現状、大学バスケの有力選手がB1やB2上位クラブに声が掛かる状況を踏まえて、次のように語った。

「眠っている才能を発掘することも我々の仕事の一つであります。トライアウトに来る選手は根性のある子が多く、そういった意味で非常に有意義な場だと思います」(比留木氏)

「(B1やB2上位に)声が掛からなかったけれども、プロ志望の気持ちの強い選手、技術のある選手をピックアップできる機会として活用させていただいています」(向井氏)

 そしてチームによって判断基準は異なるが、練習に呼びたくなる選手について、比留木氏の場合、大前提を踏まえてこう話した。

「プロはバスケットボールをしてお金をもらっているわけであり、それは練習も試合も一緒ですよね。こういった場所で一生懸命プレーを続ける、1分も手を抜かずにできなければ、そもそもプロのコートに立つことは不可能なわけです。ですから、特にディフェンスでどれだけやり続けられるか。あとはバスケットIQで、どれだけ集中力を落とさずにプレーができるか。この2点に尽きると思います」

 さらに2人に話を聞くと、選手の「人柄」、「人間性」も獲得にあたり重視していることを言及した。もちろん、これは声をかけた人材をチーム練習に招いてからの話になるが、両者が持つ考え方や思いをすり合わせ、同じ方向を見て歩んでいけるか、ここは大きなポイントだ。

「クラブのカラーにあった選手でなければ、選手も続かないですし、僕らもチームは生き物だと思います。だから、入れるからには覚悟を持って選手を獲得しますし、覚悟があるからこそ中途半端なリサーチはできません。まずは選手の人柄を知りたいです」(比留木氏)

「プロジェクトの対象は皆さん、若い選手です。プレーだけではなく、人間形成的な部分をクラブとして重きを置いています。プロとしての振る舞い、言い換えると社会人としての考え方をクラブから説明し、(お互いが話をして)そこを納得していただける選手と一緒にやりたいと考えています」(向井氏)

 バスケットボールをしてお金をもらう以上、やはりその過程はシビアである。プロになりたい気持ちだけあっても、バスケの技術だけあっても、また人柄がよくても不十分である。すべてそろうと判断され、またそういうチームと出会う必要がある。だが視点を変えれば、プロとしてどうありたいか、Bリーガーとしてどう活躍したいかを常々、具体的にイメージし、それを日頃の練習や生活から意識して取り組み続けることが、目標に近づくことへつながるだろう。逆境をはね返し『B.DREAM PROJECT』からBリーガーとしてのスタートラインに立つ選手が現れることを期待したい。今回も全日程の終了後には、一部の選手がクラブ関係者に呼ばれたシーンが見られた。道を切り拓くチャンスが、ここにはある。

プレーはもちろんのこと、人間性も問われるとチームのスタッフは語る[写真]=B.LEAGUE

文=大橋裕之

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