2021.01.18

勝手にオレのチーム愛を聞いてくれ!…第2回『レバンガ北海道』現代書道家・アートディレクター八戸香太郎さん(前編)

「#勝手にオレ愛」第2回目はレバンガ北海道、現代書道家・アートディレクターの八戸香太郎さん(写真はご本人提供)
鹿児島南高-愛知学泉大-カリフォルニア州立大ベーカーズフィールド校-ベーカーズフィールドカレッジ出身。帰国後FIBA国際代理人資格をアジア初の受験取得。プロリーグ発足後まもなく資格返納しチームスタッフへ。富山-滋賀-岩手-大阪でスカウト/通訳/GM/クラブ代表を経験。現在は様々なカテゴリーのバスケ解説を務める。座右の銘「一緒に日本のバスケを熱くしよう!」

『勝手にオレのチーム愛を聞いてくれ!』、略して『勝手にオレ愛』は…バスキン編集部とバスケコメンテーターの井口基史氏がBリーグチームを愛する業界人を独断と偏見で選び、チーム愛を徹底的に聞くという、誰が喜ぶかわからないが愛を思う存分語れるという大変名誉あるインタビューです。

我こそはというオレ愛に自信のある業界の方自薦他薦は問いません。有名かどうかより愛の深さを問う企画です。アピールをぜひよろしくお願いいたします。

もちろん申込みフォームはありませんのでブースター/バスキン編集部/井口さんへ愛が届くように頑張ってください…。

「ファン・ブースターの皆さまへ」チーム愛優先ですので、特定チーム複数回やゼロの可能性をご了承下さい…#勝手にオレ愛

構成・文=井口基史

第2回『レバンガ北海道』現代書道家・アートディレクター八戸香太郎さん

好評企画の第2回「#勝手にオレ愛」は北海道が誇る現代書道家である、八戸香太郎さんにレバンガ愛を一筆語って頂きます!

■プロフィール
八戸香太郎(はちのへ こうたろう)1977生/北海道出身。
現代書道家・アートディレクター。1977年札幌生まれ。幼少より「書」を学び、大学時より京都で伝統的な書法と現代における書の可能性について研究。京都造形芸術大学大学院卒業後、大学講師を経てロンドンでアーティスト活動を開始。現在、ニューヨーク・東京・札幌をベースに幅広い領域で仕事を展開している。これまで20カ国以上で個展やパフォーマンスなどを発表。最近の悩みは朝起きてから筆を持つかバスケットボールを持つか決められないこと。スポーツではこれまで千葉ジェッツレバンガ北海道、北海道コンサドーレ札幌(プロサッカーチーム)、ヴォレアス北海道(プロバレーボールチーム)でスローガンやキービジュアルを手掛ける。Bリーグ専門番組「マイナビ Be a booster!」で題字も披露する、根っからのバスケ書道家。

レバンガ北海道などプロスポーツチームのキービジュアルなどを手掛けている

――八戸さんがレバンガ北海道(以下レバンガ)を好きになった経緯を教えてください。
八戸
 私は札幌市出身で、学生時代はバスケットばかりやっていました。というか私の半生は書道とバスケット以外していないですね(笑)。人生に大切なことは全てその中に含まれていると思っています。アーティスト活動ではブルックリンも拠点にしているので、NBAだとブルックリン・ネッツファンですが、今シーズンは(スティーブ)ナッシュヘッドコーチ、カイリー(・アービング)、ケビン・デュラント、そして(ジェームズ)ハーデンの移籍とスーパースターが揃い期待ですね。レバンガに身を捧げる前は、NBAファンの間でもよく聞く「日本のバスケは楽しくない」という時期も正直ありました。転機になったのは前身のレラカムイ北海道に折茂(武彦)さん、桜井(良太)選手が入団するとなった頃からです。

――なるほど。創成期から見てきたということですね。
八戸
 バスケに限らず、プロスポーツを通じた地域創生の可能性はずっと感じていました。スポーツは若い人から年配の方まで、性別も関係なく、貧富の差を超えてみんなが地元チームをハブにしながら一つになれる貴重なコンテンツだと思うのです。それはとても大切なものだと信じています。今も勝てば大喜びして、負ければふてくされたりもしますが、「オラが街のチーム」があるのは幸せなことですよ。当たり前じゃない。チームとの距離が近づいたのは、2010-11シーズンに財政難によるチーム存続危機があり、同じ年に東日本大震災が起きた時です。自分は当時ENプロジェクトという団体をつくり、被災地へ向けた復興支援を行っていました。その活動に賛同してくれたのが桜井選手であり阿部(友和)選手(富山グラウジーズ)でした。当時はチームの給料の未払いがあったり、本当に大変な時期だったと思いますが、募金活動で街頭に立ってくれたり、現地イベントに参加してくれたことで、スポーツ選手の価値を近くで感じることができました。周りがみんな笑顔になるんです。しかしチームは存続危機のどん底。リーグも震災で中断など、北海道のプロバスケの歴史は終わったか、と諦めかけたのですが、折茂さんが選手兼代表を引き受けてくださった……。現在につながるという、忘れてはいけないレバンガの歴史ですよ。チームが存在しなければ負けて悔しい思いもできなくなるんだという、あってあたりまえじゃないことを、強く体感した機会でした。

――そんな部分を見る機会があったのですね。忘れられない歴史の一部ですね。
八戸
 プロ野球の北海道ファイターズが移転という形で北海道に来たことで、プロスポーツを見る文化を作ってくれました。そして、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌は20年以上かけて、チームを応援していく喜びを教えてくれました。バレーボールではヴォレアス北海道が旭川を中心にとても盛り上がっています。一方、バスケはこれまで有力校はあるものの、トップチームが長く存在していなかった。今はレバンガがあることで、子供たちの意識がまったく違うことを感じていますし、先日開催されたJrウィンターカップでレバンガU15がベスト4まで勝ち進んでいます。彼らもレバンガグリーンのユニフォームを纏って戦うことに誇りを持っていると思うのです。地域にトップチームがあるというのはそういう効果も大きいと感じています。

Bリーグ専門番組「マイナビBe a booster!」でも作品を披露する

――レバンガ北海道のファン・ブースターの熱の高まりも教えてください。
八戸
 やけ酒なしには語れない歴史のせいもあるのか、ホームゲームでは激しい野次より、温かく見守る姿勢がありますね。下町だったブルックリン・ネッツのホームでは、移籍した選手への激しいブーイングもありますが、レバンガでは野口(大介)選手、関野(剛平)選手(共にサンロッカーズ渋谷)がホームに来ると、その日だけは黄色のユニフォームがやけに多くなるのをレンバンガブースターは気づいています(笑)。しかし誰も文句は言いません。『あ~分かる!分かる!』と理解を示すんですよ。また内田(旦人)選手や玉木(祥護)選手など、道産子選手の活躍は親戚のおじさん・おばさん気分でみんなが目を細めて観てますから!

――ここで北海道のおおらかさを使ってくるのですね。
八戸
 レバンガは2020年でクラブ創設10周年ですが、折茂さんが昨シーズン引退したことにより、折茂さんとともに走った10年を終えました。コンサドーレが20年以上かけて成長してきた姿を見ると、次の10年は選手だけでなく、ファン・ブースターにとっても非常に重要な10年になると思います。コート上で折茂さんに頼ることができない「俺たち・私たち」が創る、この先10年のまず1年目!という意味を込めて宮永(雄太)HCが「This is us」というスローガンを掲げました。それを私が僭越ながら書かせて頂いたわけです。スポーツチームにとってスローガンというのはそのシーズンの指針となる大事なものですから、書くほうはめちゃくちゃ緊張するのですが、最終的には宮永HCに書体を選んで頂きました。

レバンガの今シーズンのスローガン「This is us」も八戸が手掛けた

――そんな八戸さんが選ぶベストゲームはどの試合になるでしょうか。
八戸
 おおらかな北海道民の特徴として、負け試合は一切覚えていません(笑)。会場を出て仲間と悔しい一杯をやった後は「明日も試合だ!」と負けたことは完全に忘れています。ただ、自分のなかで興奮したのは、レラカムイ北海道がホーム開幕戦を迎えた時。あの雰囲気は忘れられません。プロバスケが北海道に生まれた瞬間で、これから歴史が始まるんだと感じました。またレラカムイからレバンガ北海道に生まれ変わったホームゲームもよく覚えています。チームカラーがレバンガグリーンに変わった事で、これから俺たちの色はこれになるんだなぁと改めて認識した瞬間でした。感無量でした。

――アートディレクターならでは、色でチームを認識する思い出ですね。
八戸
 歴史に残る試合でいえば、2018-19残留プレーオフ、レバンガの「祈りの地」として名高い、トッケイセキュリティ平塚総合体育館での横浜ビー・コルセアーズとのシリーズですね。レバンガを愛する誰もが、祈りの像のようになっていた時間でした。後半はほとんど試合を直視できない。まるでサウナに入っていたかのような、息ができない試合は前にも後にもあの試合だけです。歴史に残る一戦を戦った、横浜ビーコルセアーズさんのことは「ブラザー(兄弟の意)」だと思っていますし、レバンガを応援するファン・ブースターの気持ちが、一つになった試合でもありました。前回、この企画で登場したビーコルの皆さん! 横浜の凄さと川村卓也の凄さはレバンガブースター全員が知っていますよ!

 あの試合を乗り越えた我々には、たまにうっかり起きてしまう大きな連敗など、連敗のうちには入りません。あの激戦をチームとファン・ブースターが共に乗り越えた歴史が今につながっているんです。土俵際の粘り腰ではどこにも負けない自信がありますね(笑)。

――八戸さんも、だいぶ重症ですね。

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