2021.05.13

アウェーでCS開幕を迎える富山グラウジーズの浜口炎HC「新たな記録を作る」

富山グラウジーズの指揮を執る浜口炎ヘッドコーチ[写真]=B.LEAGUE
富山県を拠点とするフリーライター。バスケ、バレーを中心に地元でスポーツ取材を重ねる。アテネ夏季五輪、サッカードイツW杯、欧州サッカー、MLBなどで海外にも出向いていたが、この10年はご無沙汰。医療やものづくりの現場取材も、豊富な経験を持つ。

「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2020-21」で富山グラウジーズは、西地区覇者の琉球ゴールデンキングスとの対戦が決まった。浜口炎ヘッドコーチは「アウェーでしっかり戦って、このメンバーで新たな記録を作りたい」と意気軒昂。2シーズン前、CSに初進出した富山は準々決勝で千葉ジェッツに連敗しており、チーム史上最高成績を残すべくモチベーションを燃やしている。

文=横田直

オフェンスの富山vsディフェンスの琉球…今シーズンは1勝1敗

 今シーズンの富山はリーグ1位となる平均89.2得点の攻撃力で、過去最多となる39勝を挙げた。フィールドゴール成功率50.0パーセントもリーグ1位で、ジュリアン・マブンガジョシュア・スミスの両外国籍選手を中心としたアタックは屈指の破壊力を誇る。3ポイントシュート成功率も37.4パーセントでリーグ4位。コートのどこからでもシュートを狙うことができ、タレント揃いのチームの魅力を浜口HCが引き出したといえるだろう。「私たちは点を取ることが得意なチーム。(CSの琉球戦では)早い展開に持ち込んで、ハイスコアゲームにしたい」と、浜口HCは勝利への青写真を描く。

 一方、琉球は平均75.2失点とリーグで3番目に少ない。リーグ2位となる平均36.8リバウンドで制空権を握り、リーグ6位となる平均7.0スティールに象徴されるようなタイトなディフェンスが持ち味だ。今シーズン、両チームの対戦は富山のホームで開催された2試合のみで、第1戦は富山が85-67の圧勝、第2戦は琉球が富山を抑え込み、85-76で雪辱した。

 浜口HCは「彼らは守備が得意なチーム。われわれのホームで戦った時は、第1戦はウチの展開でいい試合ができたと思う。だが、第2戦は第1クォーターでつまずいて、なかなか得点が伸びなかった。今回はアウェーなので、最初からアグレッシブにプレーし、メンタル面で押されないようにしたい」とし、序盤の攻防をカギと見ている。

 ビッグマンの出来もまた、勝敗の行方に大きく作用するだろう。琉球はジャック・クーリーキム・ティリドウェイン・エバンスの3外国籍選手がタイムシェアしながら相手の弱点を突いてくる。富山は、琉球戦勝利にも貢献したリチャード・ソロモンを4月に不祥事で契約解除したうえ、日本人ビッグマンの橋本晃佑もケガで欠いている。そういう意味でも、インサイドでの攻防はスミスの奮闘にかかる期待が大きい。

 2シーズン連続でリバウンド王に輝いたクーリーへの対応も重要となりそうだが、浜口HCは「クーリーに対して特別な対策は立てていない。うちにはジョシュ(スミス)がいて、どちらかといえば対策を立てる必要があるのは、彼らがジョシュに対してだと思う」とニヤリ。「クーリーであれば、ジョシュに対しマンツーマンで守ってくると思うので、うちとすれば普通にゲームできるだろう」と話し、今シーズン発揮してきた攻撃バスケを継続できるともくろむ。

インサイドの大黒柱であるスミスにかかる期待は大きい[写真]=B.LEAGUE

「フレッシュな状態でCSに入れることはうれしく思う」

 浜口HCは就任初年度で富山をCS出場へと導いた。「シーズン前は東地区の上位4チームに入ることを目標にしていた」と言い、結果に自信を深めている。新型コロナウイルスの感染拡大によって試合の延期や中止が目立つなか、富山は60試合をスケジュールどおりこなすことができた。

「CSの対戦相手がぎりぎりまで決まらなかったのは誤算だったが、(レギュラーシーズン終了からCS初戦までの)この2週間で、選手のケガの具合も回復した。フレッシュな状態でCSに入れることはうれしく思う」。CSの第1戦が富山は今月3試合目なのに対し、琉球は6試合目。琉球は4月に試合中止が相次いだ後、終盤7試合を2勝5敗と停滞ムードで終えている。その一方で富山は3連勝でレギュラーシーズンを締めくくり、サンロッカーズ渋谷とのワイルドカード上位争いを制する好循環を生んだ。

 決戦の舞台となる沖縄アリーナは、4月21日がこけら落としとなったものの、その後琉球は同会場で1勝4敗とホームアドバンテージをつかみ損ねている。浜口HCは、そのような琉球の状況について「新しいアリーナになってあまり勝てていないが、彼らもリセットされ、しっかりCSに入ってくると思う。もともと、沖縄のブースターと会場は全チームを通して一番いい雰囲気がある」と警戒する。

 昨シーズンまで9シーズン京都ハンナリーズを指揮していた浜口HCは長年、同地区のライバルとして琉球と対峙してきた。bjリーグ最後の2シーズンは、琉球を上回り地区優勝を果たしたものの、Bリーグ開幕以降は直接対決でも最終順位でも琉球の後塵を拝している。「B1の中で一番メンタルが強いのは、間違いなく琉球だと思っている。そこに負けないでのまれないで、しっかり戦えればと思う」。Bリーグとなって初めて琉球を上回ることができれば、浜口HCにとっても富山にとっても、未知のステージへと踏み出す一歩となるだろう。

前回出場時はQFで敗退。今回琉球に打ち勝って新たなステージへ進めるか[写真]=B.LEAGUE

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