2021.06.02

宇都宮は王座奪還ならず…死闘に敗れた安齋竜三HC「千葉さんが気持ちで上回った」

宇都宮の安齋HCは「千葉さんが気持ちで上回った」と相手を称えた[写真]=B.LEAGUE
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

死力を尽くした最終決戦

 6月1日の「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2020−21」GAME3。宇都宮ブレックスは62−71で千葉ジェッツに敗れ、4シーズンぶりのBリーグ制覇をあと一歩のところで逃した。

 初めて2戦先勝方式が採用された今シーズンのファイナル。GAME1では千葉が、GAME2は宇都宮が球際の強さで上回り、ともに20点以上の差で決着した。だが、王座奪還と初優勝がかかった最終決戦はまさに死闘。チームが一つになり、互いに心血を注ぐプレーと声で闘い、僅かな差で千葉が上回った。

 敗戦のショックを抱えたまま、試合後の記者会見に臨んだ安齋竜三ヘッドコーチと選手たち。

 安齋HCは、「本当に選手たちはシーズンをとおして自分たちのやるべきことをしっかりやってくれて、1戦目にああいう負け方をしても2戦目にしっかりやり返してくれました。本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思います」と称え、「僕自身は申し訳ない気持ちでいっぱいですけど、応援してくれた皆さんやスポンサーの皆さん、関わってくれた皆さんに本当に感謝しています。千葉さんの素晴らしい気持ちとプレーが僕らを上回ったんじゃないかなと思います」とコメントした。

「もっとできたのではないか」と一番悔しさをにじませていたのは、比江島慎

 ファイナルを前に「優勝することが恩返し」と意気込んでいた比江島は、それを成し遂げるためチームプレーを優先しつつも、時に強引なアタックでチームを勢いづかせた。しかし、川崎ブレイブサンダースとのセミファイナルから4試合連続で4ファウルとディフェンスにやや不安が見られ、千葉とのGAME3では無念のファウルアウト。試合終了残り1分44秒にオフェンスファウルを取られてしまった。

 その前の攻撃では1対1から1点差に迫るジャンプショットを決めていただけに、「さあ、ここから」という思いもあっただろう。「チームに申し訳ない気持ちがいっぱい」と無念さをにじませたエースは、「また来年やり返したい」と静かに前を向いた。

比江島は「来年やり返したい」と前を向いた[写真]=B.LEAGUE

「誰が見てもいいゲームだった」と遠藤は手応え

第3戦でチーム最多の13得点を挙げた遠藤はシーズン最終戦に手応え[写真]=B.LEAGUE


 惜しくも2度目の栄冠には届かなかった。だが、遠藤祐亮は「誰が見てもいいゲームだった」と、今シーズンの最終戦に手応えを感じていた。

「ゲームの入りから相手も自分たちもしっかり自信を持ってプレーできていました。本当に最後の最後まで分からないようなゲームをこの3戦目で千葉さんとできたことは本当に良かったと思います。及ばなかったのは自分たちに何が足りないことがあったと思いますけど、正直今はわからないです。これを次につなげるのが自分たちだと思っています」

今シーズンの宇都宮はジョシュ・スコットLJ・ピークという即戦力、ルーキーの荒谷裕秀も加わりリーグ最高勝率で東地区を制した。田臥勇太や遠藤を筆頭に、初年度の優勝を知るメンバーは現在チームに6名。そこから比江島、テーブス海など新たな選手が入団したことで、選手層は一層厚くなった。

 ライアン・ロシターが「(選手同士が)融合して良いチームができている。お互いがお互いのことを気にかけているところが、チームとして一番良くなった要因だと思います」と言えば、渡邉裕規も「新しく入った選手にも脈々と『ブレックスメンタリティー』が伝わっている」と強さの秘訣を口にする。

 優勝という目標を掲げた天皇杯とチャンピオンシップは、どちらも準優勝という結果で終えることになった。だが、コロナ過にも関わらず大好きなバスケットができたことについては、安齋HC、そして選手たちも感謝の意を表す。

「ファンの皆さんも応援に行きたいけど行けないという状況もありながら、今日も最高の雰囲気でバスケットができたことは本当に幸せでした。負けてしまって悲しい思いもありますけど、自分たちはファンの皆さんを誇りに思いますし、チームメートも誇りに思います」(遠藤)

 オフェンス力に長ける比江島がディフェンスで相手を苦しめ、ピークもルーズボールに体を投げ出すという姿は、このチームに加入していなければほとんど見ることのできない光景かもしれない。継承しつづける『ブレックスメンタリティー』というチームカルチャーがあるからこそ、宇都宮は誰が出ても120パーセントの力でボールを追いかけ、見ているものを魅了し続ける。

 文=小沼克年

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