2021.09.22

【B1クラブ展望/三河】期待の若手即戦力が加入…新たな歴史を切り開く1年に

シューター陣は移籍したが、シェーファーやコリンズワーズといったチームの核は残留した[写真]=B.LEAGUE
日本サッカー協会を経て、フリーランスのスポーツライター・カメラマンに。東海地方を拠点に、サッカー、バスケットボールなど様々なスポーツの取材を行う。

“アフタージェイアール”のチーム構築を模索するシーズンとなった昨シーズン。黄金期の三河が武器としてきた、インサイドを起点としたハーフコートバスケから「スペースを広く使い、ボールを動かして、人が動くバスケット」(鈴木貴美一HC)へのスタイル転換を志向し、経験豊かな指揮官の手腕と選手の高い遂行能力でそれを見事にやってのけた。勝負ごとにたらればは禁物だが、新型コロナウイルスでの中断や終盤のビッグマンの相次ぐケガがなければ……と考えてしまうほど、新生三河のスタイルは魅力的だった。

 この新たなスタイルを可能にしたのは、日々成長を遂げる日本人ビッグマン・シェーファーアヴィ幸樹、リーグ史上初となる4試合連続でトリプルダブルを達成したカイル・コリンズワース、そして一時期3ポイントシュート成功率のトップ3を独占した金丸晃輔川村卓也シェーン・ウィティングトンというリーグ屈指のシューター陣の存在があったからだ。そのシューター陣3人が今オフそろって移籍したこと、とりわけエース・金丸の移籍は小さくない痛手だ。それでも、今シーズンの三河には期待感がみなぎっている。

 大黒柱のガードナー、2年目となるシェーファー、コリンズワースが昨シーズン築いた土台を引き継ぎ、そこに日本代表候補に選出された経験を持つ西田優大角野亮伍細谷将司橋本晃佑、オールGリーグ・ファーストチームに選出されたジェロード・ユトフと即戦力選手が加わる。若手の伸びしろを加味すれば、昨シーズンと比べても遜色ない顔ぶれが揃った。むしろ、昨シーズンの課題だったディフェンス力は強化されたと言える。

 手薄になったウィングは、三河の次世代エースと期待される西田、角野が練習から激しくしのぎを削り、チームの士気を高めている。現在リハビリ中で開幕までに復帰は難しいが、今シーズンスモールフォワード登録されている橋本は、身長2メートル超ながら3ポイントの確率も高い“ストレッチ4”で、シェーファー、ガードナー、コリンズワース、橋本という超ビッグラインナップもひとつの戦術になりそうだ。

 チームとしては常に優勝を目標に定めながら、日本代表選手の輩出も指導の指針のひとつに掲げる鈴木HCが、シーズンを通してチームと選手のレベルをどこまで引き上げていくのか。その成長が、新しい三河の歴史を切り開いていく。

■KEY PLAYER/SG #18 角野亮伍

[写真]=B.LEAGUE


 三河の補強は、前シーズンの対三河戦でインパクトを残した選手を獲得するという傾向がある。例えばガードナー。「うちのビッグマンが全く歯が立たなかったので」とガードナーを獲得した当時、鈴木HCはそう語っていた。(もちろんその年得点王となったガードナーが大暴れしたのは三河戦だけではないのだが……)。長野も「三河戦ですごく調子が良くて、たぶんそれを見て評価してくださったんだと思います」と移籍当時のインタビューで話していた。

 今シーズン、その法則が当てはまるのは、秋田から加入した細谷と大阪から移籍した角野だ。細谷は1月の2試合で計28得点の大暴れ。特に第2戦はフィールドゴール成功率83.3パーセントと驚異のシュート確率を叩き出している。一方の角野は、西地区2位を懸けた最終節で先発。第1戦では36分の出場でで12得点を記録した。角野は、藤枝明誠高校時代に鈴木HCが率いる日本代表候補に選出された経験があり、その高いポテンシャルは以前から指揮官の知るところだったのだろう。

 アメリカの大学から大阪に加入した角野は、開幕当初はプロの洗礼を受けるも、CSを含めたラスト10試合でスターターの座を勝ち取り、平均30分出場。シュート確率はフィールドゴールが59.4パーセント、3ポイントが46.2パーセントと高い得点力でチームの躍進に貢献した。三河戦後、角野は「得点に絡む能力は自分でも自信を持っているところ。チャレンジしながらもミスをしなくなったところが(シーズンを通して)良くなってきた」と自らの成長に手応えを感じている様子だった。昨シーズンの勢いのままに、三河新スコアラーとして、そして日本代表の次世代スコアラーとして、その才能の開花に期待がかかる。

 文=山田智子

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