2022.06.20

稀代のスコアラー『折茂武彦 引退試合』開催…盟友佐古HCのパスを受けラストシュート

折茂武彦の背番号にちなんで、引退試合に出場した選手たちにから9回宙に舞った [写真]=レバンガ北海道
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、20219ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

 6月18日、北海道立総合体育センター(北海きたえーる)で元日本代表の折茂武彦氏の「引退試合」が行われ、レバンガの薄緑色に染まったアリーナで「選手」としての最後の勇姿を披露した。

 現在はレバンガ北海道の社長としてスーツとシャツこそが今の「ユニフォーム」であるはずの折茂氏だが、日本のバスケットボール史に残る稀代のスコアラーが、ファンの前で再び「背番号9」を身に着けた。

 折茂氏が27シーズンにわたる現役生活に別れを告げたのは2019−20シーズンだった。しかしコロナ禍根によって予定されていた引退試合は2度に渡って延期となり、今回、ようやくイベントの開催が実現した。

 試合は往年の名選手たちを中心に構成された“Team Legend”と、田臥勇太竹内公輔比江島慎(いずれも宇都宮ブレックス)や田中大貴アルバルク東京)、竹内譲次大阪エヴェッサ)ら現役のBリーガー選手によるオールスターチーム・”Team Nine”の間で行われた。


 折茂氏とはトヨタ自動車時代のチームメートで現日本男子代表の指揮官であるトム・ホーバス氏がヘッドコーチを務めたLegendは、折茂氏をはじめ佐古賢一氏(北海道HC)、節政貴弘氏(元東芝ブレイブサンダース)、古田悟氏(元トヨタ自動車等ほか)、関口聡史氏(元トヨタ自動車)という往年のファンにとっては懐かしく、豪華な先発陣でティップオフを迎えた。

 試合は無論、折茂氏のためのものとなった。折茂氏が3Pライン外でボールを持てば、ほとんどがワイドオープンのシュートに。一方で、リング近くに位置取ってから味方のスクリーンを使って外に駆け出し、ワイドオープンを作ってからのシュートなど、現役時代によく使っていたプレーも見せた。

チームメートが作ったシュートチャンスを決めていった折茂氏 [写真]=レバンガ北海道


 後半は、Team Nineに移ってプレーした折茂氏は、シュートタッチが良くなり、味方である現役Bリーガーたちの協力もあって、調子を上げていく。真骨頂の3Pは前半、2本を決めるにとどまったが、後半には4本をヒット。コート上に吊り下がるビジョンには選手がスコアするたびに得点数が表示されたが、折茂氏の得点が20、30と積み上がっていくにともなって、会場のどよめきは熱を帯びていった。

 当然のことながら最初から最後まで「主役」だった折茂氏。最終的には42得点を挙げ、記録にも記憶にも残るイベントを演出した。試合後には参加全選手、スタッフがコート中央に集まって、背番号になぞらえて9度、折茂氏を胴上げ。

 それから「ラストショット」と称し、コートに残った「盟友」佐古HCからパスを受けた折茂氏は、会場がそれを静かに見守る中、3Pを一発で沈め万雷の拍手を浴びた。

 折茂氏のためのイベントは、他の豪華な参加メンバーもこの日ばかりはあくまで「サポーティングキャスト」だった。しかし一方で、折茂氏と佐古HCという高校2年生からの付き合いだという同級生の2人がともにコートに立ったということは、とりわけ彼らの現役時を知る者にとっては、また少し別の感慨をもたらしたとも言える。

 現在は北海道の社長とヘッドコーチという立場にある2人は、この引退試合に向けて1カ月間ほどトレーニングに励んできたという。そこも踏まえて、佐古HCは「2度目の青春を謳歌したような気分になりました」と破顔した。

 クロージングセレモニーでは、スキージャンプでオリンピックメダリストの葛西紀明さん、北海道の佐古HC、桜井、そして子息の佑飛さんから花束を受け取った折茂氏は、引退から2年も経ってしまったにも関わらずイベントの開催に尽力してくれた関係者と来場してくれたファンに感謝の気持ちを述べた。

「コートを離れてから2年経ちましたが、この景色は現役選手じゃない限りなかなか見られないもの。改めてこの景色は素晴らしいものだと思いました。シュートが入る。そして皆さんから拍手してもらえる。その中でプレーできるのが本当に幸せだったんだなと。27年間それをやってこられて僕のバスケ人生は本当に幸せだったんだと思います」

 日本大学を卒業後、トヨタ自動車で14年、そして北海道に渡って13年プレーした折茂氏にとって、元々縁のない北の地は、やがて氏にとってバスケットボール選手としてのまた新たな喜びをもたらしてくれた特別な場所だ。選手生活は終えたが、今後もその北海道で日本とレバンガのために尽力していくと誓った。

「日本のバスケ界のために、Bリーグのために、レバンガのために、そして僕を見捨てなかったこの北海道のために、ファン・ブースターのために、引き続き、一所懸命頑張ってまいりますので、よろしくお願いします」(折茂氏)

 参加全選手たちとコート一周をした折茂氏は、最後にコート中央へ戻り四方に深く礼をすると、センターサークルに口づけをして自身を特別な存在してくれた競技に別れを告げた。


文=永塚和志
写真提供=レバンガ北海道

BASKETBALLKING VIDEO