2022.12.02

「成長の場を求めてチャレンジを続ける」三遠の佐々木隆成の感謝と恩返し

成長の場を求めて今季からB1でプレーする三遠の佐々木 [写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 今シーズン、初めてB1の舞台に足を踏み入れた1人の司令塔が輝きを見せている。三遠ネオフェニックス佐々木隆成だ。地元の豊浦高校から大学は関西の雄である天理大学に進学。在学中に大阪エヴェッサに特別指定選手として加入するも、ルーキーシーズンは熊本ヴォルターズの練習生からスタートする。そこから着実に力をつけ、持ち前のスピードと180センチの身長から繰り出される豪快なダンクシュートも含めた強力なフィジカルを武器に、B2の舞台で「超攻撃的ガード」として名を馳せてきた。

 11月30日に行われたB1・中地区首位攻防戦、アウエーでのサンロッカーズ渋谷戦。チームの主力が相次ケガ欠くというアクシデントに見舞われ、しかも外国籍選手も1人という状況の中、チーム全体で最後まで懸命に戦い抜いたが、惜しくも敗戦を喫して首位陥落となった。佐々木自身はこのゲームで18得点6アシストと結果を残して、チームをけん引した。

「チャンスは平等ではないですけど、しっかり全員に与えようと思っています。ただ、そのチャンスをつかみ取るのかは僕ではなく、個々の選手次第」という言葉を、試合後の会見で残した、大野篤史ヘッドコーチ。その言葉を受け止めて、チャンスをつかみ取っている1人が佐々木ではないだろうか。

 大野HCはその佐々木に関して「彼自身はロールプレーヤーだと思っていて、最後にボールを離したがる。だけど、自分は彼に対して『苦しい時に打開して、チャンスメイクして、最後は自分でゲームを決めるんだよ』ということを、夏から口酸っぱく言ってきました。それができるんだよと同時に伝えていて。今は良いパフォーマンスをしているけど、もう少しやれるかなと感じています。一方で戦うことに対しては、チームも含めて、やっと表に出てきているかなとも思っています」と、今後の期待を込めた評価をしている。

 佐々木自身、初めてのB1に序盤は戸惑いを抱きながらのプレーだったという。しかし、今は自分らしさを取り戻してコートで戦っていることを明かした。

「B1のレベルが分からない中で、練習中も自信を持ってプレーできず、試合でもゲームコントロールへの意識が強かった。自分のプレーができない期間があった中で、大野HCやチームスタッフが『もっとできる』と声を掛けてくれるなど、僕の自信を上げてくれました。チームメートも僕を信頼して動いてくれています。そのお陰で今は自信を持って臆することなくプレーできていますし、責任感を持って、自分がやるんだという気持ちを忘れずにやっていきたい」

 自分らしさを取り戻した佐々木にとって、今回の移籍は「色々な不安もあったけれども、どこまでやれるか。自分の中でのチャレンジ」だった。様々なオファーの中で三遠を選んだのには、自分自身の成長という言葉がポイントとなっている。

「僕がチームを選ぶ大きな1つの基準は、常に自分が成長できるかです。どこで一番実現できるかと考えた時に、クラブが大きく変革することなど含めて、僕が成長する環境が物すごく整っていると感じました。その中で大野HCの存在は大きかった。本当に三遠に来て良かったです」

 地元の山口県からスタートした佐々木はバスケットボール人生の階段を確実にステップアップし、今はB1のステージに立っている。「全く想像も、思ってもいなかったです。だから、オファーが来たときは物凄くうれしかったですね」と、これまでを振り返りつつ、感謝の言葉を口にした。

「本当に今まで関わってくれた方には感謝しかないです。ここまで来られたのは僕の力ではなく、その方々のお陰。本当に周りに恵まれているなと感じています。熊本でもたくさんの方にお世話になり、相談に乗ってもらいました。遠山(向人、熊本HC)さんを始め、色々な方も見ていると思うので、皆さんへの恩返しは三遠で活躍することだと感じています。そこはずっと背負って過ごしていきたい気持ちです」

 感謝と恩返し、その気持ちを持って佐々木は前に進んでいく。

「チームが勝つことが大きな目標であって、今までと同様に目先のことではなく、目の前の相手を1つ1つ倒していくことに専念したいです。ここまでチームスタッフには自分自身を押し上げてもらったので、素晴らしい環境下でもっともっと色々なことを学んで吸収し、勝利という形で恩返ししたいと思っています」

 気持ちは謙虚に、でもプレーは大胆かつアグレッシブに。佐々木の成長と活躍が、三遠の新たな未来を作る一翼になるに違いない。

責任感を持ってシュートを打てるようになったと佐々木 [写真]=鳴神富一


取材・文・写真=鳴神富一

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