2023.03.20

移籍後初の“渋谷ダービー”は「楽しかった」…小島元基が今後のSR渋谷にもたらすもの

移籍後初の渋谷―ダービーに臨んだSR渋谷の小島 [写真]=B.LEAGUE
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

古巣対決に秘めていた小島の思い

 小島元基サンロッカーズ渋谷の一員として初めての“渋谷ダービー”は、2試合のうち1試合のみの出場にとどまった。

 3月18日のGAME1は、現状のコンディションを考慮して出場を回避したという。しかし、GAME2では浜中謙ヘッドコーチやトレーナー陣からもGOサインが出た。「みんなも疲れているし、少しでもチームの助けになりたい」。小島自身もそんな思いを胸に秘め、昨シーズンまで5年間在籍していたアルバルク東京との古巣戦に臨んだ。

 前日の初戦を3点差でものにしたSR渋谷だったが、この日は相手の堅い守備に屈し、54得点に抑え込まれ敗戦。SR渋谷の背番号10は第1クォーター途中からコートに立った。第2クォーターではジェームズ・マイケル・マカドゥとのピック&ロールからジャンプショットを沈めて初得点をマーク。直後には今流行りの“ペッパーミルパフォーマンス”も披露した。第3クォーターではノールックパスでマカドゥのダンクをお膳立てするなど、小島は約20分間の出場で6得点5アシストを記録。その一方で、「申し訳なかった」と悔やむミスもいくつかあった。

 昨季まで自分が背負っていた「1番」のジャスティン・コブスには、ショットクロックギリギリで3ポイントシュートを決められ、小島は思わず頭を抱えた。ボール運びでA東京の守備に捕まる場面もあり、最終クォーターではセバスチャン・サイズに豪快なブロックを浴びせられた。

「正直、もうちょっとコンディションがいい時にやりたかった」。今季のレギュラーシーズンでは最初で最後のダービーマッチだっただけに、試合後には本音を漏らす場面もあった。それでも小島は、「チームとしてはずっといいゲームできているので、次に繋がる試合だったと思います」と総括。今季のA東京はルカ・パヴィチェヴィッチHCからデイニアス・アドマイティスHC体制へとシフトしたが、素直に「楽しかった」と感想を述べた。

「ルカがいなくなってチームもガラッと変わってしまいましたけど、でも本当に渋谷ダービーはやっていて楽しかったですし、いい試合でした。まさか(岡本)飛竜がアルバルクに入ってマッチアップするとも思っていなかったので、それも面白い出来事だなと」

 試合終了後にはいつものようにコートを一周した。「名前が元基で言いやすいので、みんな『元基~』って言ってくれました。嬉しかったですね」。SR渋谷のユニフォームを着て元気な姿を見せた小島へ向け、アルバルクのファンからも温かい声が送られた。

「もう少し体調のいい時に対戦したかった」というものの、「楽しかった」と小島 [写真]=B.LEAGUE

浜中HC「偉大な経験をサンロッカーズに還元してほしい」

「今日は彼が出て起点になってくれた部分はすごく大きかったです。終盤にターンオーバーがあったりしましたけど、その辺はしっかり修正してくれると思っています」

 チームを渋谷ダービー連勝へと導くことはできなかったが、指揮官の小島へ対する信頼は変わらない。今シーズン新たなポイントガードが加わったことで、浜中HCはまずベンドラメ礼生への負担が減ったと話す。小島とベンドラメは東海大学時代の同期であり、開幕前にはベンドラメも「一緒にやりたいなと思っていた」と加入を歓迎していた間柄だ。

 浜中HCは「私自身が彼に求めることはいくつかありますけど」と前置きしたうえで、「1つはベンドラメの“相棒”として期待しています。大学時代から一緒にプレーしていますし、ベンドラメも小島がいることによってゲームメイクや試合の運び方が楽になるという話をしています」と明かす。そして、今後のリーグ終盤戦だけでなく、その先に向けても小島の経験値がより重要になると力を込めた。

「やはりレギュラーシーズンのチャンピオンリングを2つ持っていることは相当偉大なことだと思います。その経験を小島が小島らしくプレーしてサンロッカーズに還元してほしいですし、チームに新たな文化を根付かせてくれることを求めています」

 現在のSR渋谷は、20勝22敗で中地区3位。同地区2位とは6勝差、上位2チームがチャンピオンシップに出場できるワイルドカード争いでも7位に位置しており、「全部勝たないといけないくらい」と小島も気を引き締める。

 小島は2017−18、2018-19シーズンにBリーグ2連覇を味わった。連覇を達成した2018-19シーズンでは、ワイルドカード枠から“下剋上”とも言える優勝も経験している。それだけに、これからの巻き返しを見据える司令塔の言葉には、柔らかい口調ながらも自然と説得力がある。

「やっぱり一致団結しないといけないです。全部勝つことは相当タフなことなので、みんなが1つになることが戦術よりも何よりも一番大事、でも、今もすごく雰囲気がいいんですよ。ケガ人が少し出てますけど、その中でも誰かの穴を全員でカバーして1つになれてる。なので、それを一つひとつ積み重ねるだけかなと。結果はついてくると思うので、今はそれ待ちですかね」

 チームメイトとはまた違った輝きを放つポイントガードは、持ち前の明るさと負けん気の強さを武器に、SR渋谷を高みへと押し上げてくれるはずだ。

2度の優勝経験を持つ小島が今後どのようにチームへ良い影響をもたらすか [写真]=B.LEAGUE


取材・文=小沼克年

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