2023.03.25

【インタビュー】川村卓也、キャリア再スタートへの思い「川村卓也の名前を忘れてほしくなかった」

川村が現在の思いやチームでの役割などを語った [写真]=B.LEAGUE
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“オフェンスマシーン”の異名を持つ川村卓也がBリーグの舞台に帰ってきた。コートから離れていた空白の期間を経て、3月に新潟アルビレックスBBと選手契約締結。すでにベンチ入りを果たし、コートに立つ日を今か今かと待ちわびている。そんな川村にインタビューを実施し、現在の思いやチームでの役割などをうかがった。(※3月18日取材)

■キャリア再スタートに「少し感慨深くなった」

――昨シーズン終了後、しばらくコートから離れていました。ご自身の決断に対する心境や経緯を教えてください。
川村 いろいろなことが重なりました。西宮(ストークス)に行って、いろいろと感じたことがたくさんありました。初めてB2に挑戦したことで見えたのは、自分の想像よりも違ったものでした。そのなかで、(現役に)戻るのであれば、B1に戻ってプレーしたいなと。でも、戻れる環境がなく、理想と現実が少し食い違っていました。うまくかみ合わず、チームが決まるということに進まなかったのが事実ですね。

西宮では自分がやりきったという思いでシーズンを終えられませんでした。もし(キャリアを)終えるのであれば、自分がイメージしていた終わり方とは少し違うのかなと。なので、昨シーズン終了後、チームが決まらないながらも、チャンスがきたら、それに応えられるようにしたいという気持ちを持っていました。昨シーズンの終わり方が自分のなかでは腑に落ちなかったというか、スパッと終えられるような形ではありませんでした。

――所属先を探している間、解説業など様々なことにチャレンジしていました。
川村 Bリーグコメンテーターとして活動し始めたのは、自分の性格を分析した時、しゃべるのが好きだったからです。話し手としてラジオのパーソナリティー番組をやったこともありますからね。解説業のお仕事をいただけた時に自分の特性、良さを活かせるだろうと思い、素直に反応することができたと思っています。第一にBリーグから“川村卓也”の名前が消えてほしくなかったし、忘れてほしくなかった。現場から離れて熱量が冷めてしまえば、コートへの思いや、バスケットボールに対する考え方や向き合い方に温度差が出てしまうと感じました。どんな形、どんなお仕事でもいいからBリーグ、そしてバスケットボールに関わっていたくて、その一つとして解説業、Bリーグコメンテーターの活動があったと思っています。

――Bリーグ界に名前が残り続けることはもちろんですが、自分の気持ちを常に高い温度で保っていたかったという部分が大きいですか?
川村 そうですね。レベルの高いバスケットを見て、それに触れるからこそ、落ちない温度があると思うんです。自分から「何かお仕事をいただけませんか?」と模索し、いろいろな方々に協力してもらってお仕事をいただけたパターンがあれば、そこでの評価を受けて「私たちの仕事もやってもらえませんか?」とお声掛けいただいたものもありました。バスケットボールに触れることができるありがたいお仕事でしたね。

――無所属の期間を経て、新潟アルビレックスBBへの加入が決定しました。このタイミングで決断に至った理由はありましたか?
川村 全然ないです。僕の事情というより、各チームの事情があったと思います。新潟アルビレックスBBに関して言えば、今シーズンの成績がなかなか伸びてこないなか、何か変化を加えたいと思ってくれて、そこで自分の名前が挙がったのかなと。今シーズンは昨シーズンまでと異なり、降格が発生します。チームとしていろいろと模索しながらの一手として、自分が声を掛けられたと思っています。

ベンチでも積極的にチームを盛り上げる [写真]=B.LEAGUE

――お話を受けた時の率直な感想は?
川村 「ありがとうございます!」でしたね、本当に冗談抜きで。またバスケットボールのコートに帰ってこられて、ユニフォームを着られるかもしれないという可能性を目の前に持てたことだけで、自分のなかで大きな変化でした。練習生でもいいので、やはりB1のチーム、組織に関わっていたかった。そこで自分がもうダメだと思ったら、素直に身を引くべきだと思っていました。自分のなかで区切りがつかないのに、あちこちに行くのもまた違うと思っていました。B1に所属している新潟で練習生としてスタートさせてもらうことができ、本当に感謝の思いで、少し感慨深くもなってしまいました。

――練習に参加して、ご自身のなかで手応えはいかがでしたか?
川村 週5でジムに行っていましたが、バスケットボールの動きをやってこられたわけではありません。筋力は落ちていなかったかもしれないけど、バスケットボールに必要なアジリティーや動きの部分で最初は対応できませんでした。自分の気持ちは前のめりで、自分をアピールしたいと思っていても、自分のイメージと体の現状がついてこない。それが最初の1週間でしたね。ただ、黙ってシュートを打たせてもらったら、たぶん一番入ると思います。チームメートとシューティングをしていると、嫌でも周りのシュートが見えるのですが、「やっぱ、俺のほうが決められるな」と思える部分がある。それがあるから、なかなか身を引けないのかなと思いながら練習しています。チームメートはシーズンを過ごして、後半戦を迎えているところ。彼らの体の状態と比べると、やはり出遅れているというか、まだまだ追いついていない部分もあると思っています。ただシュートに関しては、今日までシュート勝負を求められて一度も負けたことがないので、「みんな、まだまだだな」と言いながら家路についています。

――これまでのキャリアでボールに触れず、トレーニングに終始する時期はなかったと思いますが。
川村 なかったですね。ボールを触らないのは長くても3カ月。昔はオン、オフの切り替えだとカッコつけて、シーズンが終わった瞬間から次のチーム始動までボールを触らないみたいなこともありました。でも、それは自分なりのオン、オフの切り替えでした。だけど、触りたくても触れないこの10カ月以上だったので、状況が違いますよね。ボールを触りたくて仕方なかったし、シュートを打ちたくて仕方なかった期間でした。

――そういった意味ではモチベーションが高まっているのでは?
川村 モチベーションはすごく高いです。(シーホース)三河戦もFE名古屋(ファイティングイーグルス名古屋)戦も出られませんでしたけど、いつ出番がきてもいいように準備して過ごしています。その時のためにモチベーションを落とさず、体の調子もしっかりと上げていきたいです。

――初のベンチ入りを果たした15日の三河戦では、特別な思いがこみ上げてきたと思います。
川村 解説席や放送席で見るコートと、自分が実際にウェアを着て立つコートは全く別物ですね。間違いないと思いましたし、まだもう少しコートにいたいと改めて感じました。川村卓也に少しでも期待してくれるブースターさんの姿を見ると、その声に応えたいし、頑張りたいです。

■「また皆さんの前で会場を沸かせられるようなシュートを決められるように」

チームメートに声を掛ける川村 [写真]=B.LEAGUE

――ベンチからチームを盛り上げました。チームからはリーダーシップやメンタリティーも求められていると思いますが、ご自身の立ち振る舞いで意識している部分はありますか?
川村 コート外で何もできないというわけではないと思っています。これまでベンチにいて気がついたことが多くあるし、ベンチメンバーから教えてもらったことが自分の気づきになって、次のいいプレーにつながったことが何度もありました。そういう意味でもベンチにいて、試合に出られなくても、自分自身の役割としては何かプラスになることができればと思いながら過ごしています。

――18日のFE名古屋戦で10試合ぶりの白星を手にしました。自身加入後から現在に至るまで、何かチームの変化は感じますか?
川村 僕がチームに対して気がついていることはたくさんあります。例えば、流れがうまく続いていかない時に全員が一気に頭を下げるとか、チームとしてやりたいことができないとか、ミスが続いた時にみんなで誰かのせいにするとか、ミスから逃れようとするとか。チームを見ていて、そういったことを正直に感じるんです。自分が入ったことでなくせるかと言ったら違うんですが、「それをやる必要はないよね」と伝えることはできると思っています。自分が入ったことで、何かが大きく変わるとは思っていないけど、みんなの気づきになって、チームの変化につながっていけばいい。そういった意味ではコートにいる時よりも声が出ていますからね。僕が来てからまだ1勝1敗なのをプラスに捉えて、残りの19試合を勝率5割でいけば、残留がだいぶ色濃いものになってくると思っています。前回の三河戦も勝てる試合でした。そういったゲームを一つひとつ取っていくことができれば、必ずステップアップすると思うので、そのなかの1人のキーパーソンになりたいと思っています。

――コート内外でよく話す選手はいますか?
川村 池田(雄一)、杉本(天昇)、小池(文哉)。杉本と小池に関しては、彼らから近づいてくるので、弟のような存在です。しょうもない絡みばかりですけど(笑)。イケさんは僕と同じぐらいプロキャリアを過ごしてきた選手なので、バスケットボールはもちろん、冗談やざっくばらんに話しています。特定の名前を出しましたけど、いろいろな選手と隔たりなくコミュニケーションを取りたいと思っているので、それは毎日実行していますよ。

――キャプテンの澁田怜音選手は、川村選手と同じ盛岡南高校出身です。彼の印象は?
川村 直属の後輩ということもあって、最初は僕に対してめちゃくちゃ緊張していましたけど、今はノリツッコミしてくるようになって。今の若い子という感じで、僕のことをなめていますね(笑)。

――最後に川村選手の復帰を心待ちにしていたバスケットボールファンへ向けて、メッセージをお願いします。
川村 しばらくコートから離れていて、川村卓也というバスケットボール選手としての立ち位置を示すことができませんでした。そして、今回、新潟アルビレックスBBに本契約させてもらえたことで、自分のなかでの熱量がぐんぐん高まっています。また皆さんの前で会場を沸かせられるようなシュートを決められるようにと思いながら、日々頑張っています。新潟は今、非常に苦しい位置にいるので、ぜひ僕の背中を押しつつ、チームの背中を押してもらえると助かります。よろしくお願いします!

取材後の22日、新潟デビューを飾った [写真]=B.LEAGUE

※本稿はBリーグ応援番組『B MY HERO!』で実施したインタビューをテキストとして公開したものです

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