2023.05.30

牧隼利と松脇圭志…千葉Jに立ちはだかった琉球ゴールデンキングスの“両翼”

琉球のリーグ制覇に貢献した松脇(右)と牧 [写真]=池川昭宣
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

 5月28日に行われた「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2022−23」の第2戦、前日の試合を落とした千葉ジェッツは何としてでも勝たなければならなかった。第3クォーターを終えた時点でのスコアは54−57。千葉Jは3点ビハインドで勝負の10分間を迎えたが、琉球ゴールデンキングスのセカンドユニットが立ちはだかった。

 まずはコー・フリッピン。ファイナルのGAME1では約10分間で3つのミスを犯した男は、続くGAME2では前日の出来を払拭するかのように存在感を発揮した。最終クォーターでは13得点をマークし、終わってみればキャリアハイとなる21得点を記録。日本生命ファイナル賞に輝いたフリッピンの大活躍には、桶谷大ヘッドコーチも「最後、コーがオフェンスで爆発してくれて、Xファクターとして相手の一番嫌のところで点数が取れました」と称えた。

 フリッピンとともに琉球のバックコートを支えたのは、牧隼利松脇圭志だ。2人はGAME1でも自分の仕事を全うし、初優勝を大きく手繰り寄せた。

 特別指定選手として加入した2019−20シーズンからチームに在籍する牧は、昨年のファイナルはケガの影響によりベンチで見守ることしかできなかった。しかし、今シーズン途中から復帰を果たすと、ファイナルのGAME1では約25分、GAME2では約20分のプレータイムを獲得。守備では富樫勇樹にしつこく食らいつき、攻撃ではハンドラー役を務めるとともに、コーナーからの3ポイントシュートとタフショットでも長距離砲を沈めた。

「1年前の僕からすれば、この舞台に立てていることが考えられない」。苦しい時期を乗り越えたシューティングガードは、生え抜きの先輩にあたる岸本隆一田代直希とリーグ優勝を成し遂げられたことに安堵した。

「隆一さんとか田代さんは琉球の歴史を知っている人なので、責任の重さや重圧を感じているんだろうなと思っていました。やっぱりあの2人と優勝したかったですし、それをもたらすことができたのは良かったです」

1年前はベンチで見るしかなかったファイナルの舞台で牧は躍動した [写真]=池川昭宣


 もう1人のシューティングガード、松脇にとっては移籍1年目での快挙達成だ。横浜ビー・コルセアーズとの「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2022−23」セミファイナルでは、初戦で5本の3ポイントをマーク。そのため、千葉Jのジョン・パトリックHCも対戦前から警戒を強めていた。

 それでも26歳のシューターは、GAME1から6本中3本の3ポイントを決め、翌日も4本中2本という確率で6得点を記録。ディフェンスでは相手の原修太に引けを取らないフィジカルの強さを披露し、外国籍選手からオフェンスファウルを奪う場面もあった。

 GAME2の最終盤では交代を告げられたが、フリッピン、牧とともに第4クォーターの勝負どころを担った松脇。「本当にこのチームは層の厚いチームだと思っていますし、今日はセカンドユニットがはまったと思います」と勝利のポイントを挙げた。

「全員でやるバスケットがキングスの強みです。それを全員が共通理解できている分、コートに出ていても出ていなくても(同じ方向に)気持ちが乗っているんじゃないかなと思います」

 そう琉球の強さの要因を話す牧の言葉と、最後の10分間をベンチで見守った岸本がファイナル直前に語っていた言葉が重なる。

「最後に勝ち切るためには、コートに出ている選手やコーチ、ベンチにいるメンバー含め、みんなが同じ考えを共有できていることが大きなポイントかなと。本当にみんなが意思統一を図って、同じことを考えていることがすごく大切だと思います」

 ダブルオーバータイムまでもつれた大激闘を制したGAME1、今シーズン連敗していなかった千葉Jから連勝を奪ったGAME2の勝利は、磨き上げたチームワークの賜物だった。

松脇は値千金のシュートを何本も決めた [写真]=池川昭宣


「個人的には課題だらけ」(牧)

「まだまだ課題はある」(松脇)

 初のBリーグ王者に輝いてもなお、牧と松脇は個人の出来には満足していない。学生時代から日本一になることでしか味わえない喜びも、その一歩手前で涙をのんだ苦い経験もしている琉球の両翼は、これからも貪欲に、前だけを見て突き進む。

取材・文=小沼克年

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