2021.05.26

B2準優勝も「やり切った」茨城ロボッツ…闘う集団がつかんだ悲願のB1切符

茨城の平尾充庸は「チームとしてはやり切った」とコメント [写真}=B.LEAGUE
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

「楽しく闘う」を指針につかんだB1昇格

 B2優勝には、あと1勝届かなかった。でも、茨城ロボッツはBリーグ発足5年目で悲願のB1昇格を果たした。

 この結果をロボッツのファン・ブースターはどう受け止めているだろうか。捉え方は人それぞれだが、平尾充庸は「悔いがないといえばうそになりますけど、チームとしてはやり切った」と答えた。

「相手をもう少し苦しめたかったですけど。この結果が今のロボッツの限界なのかなと。負けてしまったことは悔しいですが、コロナ過でもこうしてB1昇格を達成できたことは本当に喜ばしいこと。今日の課題や優勝を逃した点は、来シーズン以降、B1の舞台で晴らして、群馬さんとも一緒にリーグを盛り上げていければと思います」

 優勝がかかった「B2 PLAYOFFS 2020−21」ファイナルの第3戦、茨城は75−98という大差で群馬クレインサンダーズに敗れた。それでも第2戦では、今季レギュラーシーズンで4戦全敗、ホームゲームでは34連勝を記録していた相手を敵地で撃破。強敵・群馬を追い込んだことは称賛に値するものだった。

 就任1年目でチームを昇格へ導いたのは、リチャード・グレスマンヘッドコーチ。「このチーム、選手たちのことを誇りに思います。群馬さんは素晴らしい選手やコーチ陣が揃っていますが、我々も同じように素晴らしい選手たちがいます」。指揮官も、ともに戦ったメンバーを称えた。

グレスマンHCは「このチーム、選手たちのことを誇りに思います」と称えた [写真]=B.LEAGUE


 今シーズン、グレスマンHCが得意とするアップテンポかつ攻撃的なバスケットで変貌を遂げた茨城。チームを束ねるキャプテンも、在籍5年目の眞庭城聖から4年目の平尾へバトンタッチされ新たなスタートを切った。

 東地区2位、41勝16敗の成績でレギュラーシーズン。その中でも浮き沈みがあり、まだまだ闘う集団にはなれなかった時期もあったと平尾は言う。

 闘う集団になるために必要なのは、厳しさなのか、楽しさなのか、それとも――。様々なことを選手同士で話し合い、チームが出した答えは「楽しむバスケット」だった。「そのためには40分間戦ってこそ楽しいバスケットができるわけであって、そこに辿り着けたことが今シーズンの良かった点なのかなと思っています」。

POでも際立ったキャプテン平尾の存在

 今回のポストシーズンにおいても、平尾はキャプテンの名にふさわしい活躍を見せた。「個人的にトーナメントは得意。大舞台というか、お客さんがいればいるほど燃えるタイプ」というポイントガードは、これまで天皇杯決勝の舞台に3度踏み入れ、天理大学時代にはエースとしてチームを過去最高のインカレ3位に導いている。

 群馬との最終戦ではベストパフォーマンスではなかったものの、先発として試合を作り、計7試合で平均14.4得点4.8アシスト。持ち前のリーダーシップと勝負強さで、チームが苦しいときの1本、勢いづける1本を沈めただけでなく、追いかけても届かないと分かっていたルーズボールを追いかけ、背中で戦う姿勢を示した。

 ホームの仙台89ERS戦でB1昇格を決めた瞬間は、一人コート上で泣き崩れた平尾。あの瞬間は「1つの目標が達成できたことで、自分の中で張りつめていたものが少し報われたこともあって。正直、最後のほうは覚えていないくらい自分の中でこみ上げるものがありました」と、少し照れくさそうに振り返る。

 ホーム、そしてアウェーでも最高の雰囲気を作ってくれたブースターへ向けても感謝を忘れない。

「昔と比べると、格段にお客さんの数が多くなっています。(水戸の街を)車で運転していても、ロボッツのステッカーが張ってある車をよく見かけます。まだ(Jリーグの)鹿島アントラーズさんや(水戸)ホーリーホックさんの方が多いですけど(笑)、でもそういう変化が目に見えるのは嬉しいですし、だからこそ結果を出さなければならないという思いです」

 32歳で初めてB1の舞台に立つ平尾は、そこで戦っているかつてのチームメートたちを「羨ましい」という気持ちで見ていた。だが来シーズンは、自分も肩を並べ、倒さなければいけない相手になる。

「ワクワク感も非常にありますし、しっかりとまたチームを作り上げて、B1でもロボッツの名に恥じないようにプレーしていきたいです」

 茨城ロボッツとしても、ようやくつかんだ念願のステージだ。結果を求めつつも、思う存分楽しんでほしい。

試合後、群馬の笠井康平と互いの健闘をねぎらった [写真]=B.LEAGUE


文=小沼克年

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