2016.12.14

【ウインターカップ展望】“群雄割拠”の今大会は本命不在、50校の頂点に立つのはどこか

大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 全国高等学校選抜バスケットボール大会、通称「ウインターカップ」は高校バスケットボールシーズンを締めくくる、最高峰に位置づけられる大会。サッカーの「選手権」、バレーボールの「春高」と同様の「高校スポーツ冬の風物詩」だ。東京、大阪をはじめとする11の都道府県に複数の出場枠が与えられる高校総体(インターハイ)に対し、ウインターカップに出られるのは各都道府県で1チームのみ(東京、総体優勝・準優勝チームの所属都道府県は2チーム)。「都道府県ナンバーワン」の看板を背負った男女合計100チームが聖地、東京体育館に集い、しのぎを削る。

 昨年までの3年間、明成高校(宮城)の八村塁(現ゴンザガ大学)という怪物を軸に回っていた高校男子界だが、今年は一転して群雄割拠の様相を呈している。その中でも優勝候補の筆頭と目されるのが東山高校(京都)だ。総体で準優勝、主力と大澤徹也コーチが京都選抜として出場した国体で優勝し、勢いに乗る。キャプテンの岡田侑大、コンゴ民主共和国からの留学生カボンジ・カロンゴ・パトリックの“ダブルエース”を司令塔の藤澤尚之が自在に動かす。特に、2年生ながら206センチの圧倒的な高さ、強さ、うまさを持ち合わせるパトリックを止めることは至難の業だろう。

 総体の覇者、福岡第一高校(福岡)も再びの戴冠を期す。重冨周希と友希の双子ガードが織りなす高速バスケットは見どころ満載。夏の決勝では序盤、東山にリードを奪われる展開だったが、後半の第3クォーターで31得点を奪い一気に流れをひっくり返した。ウインターカップへの出場は5年ぶり。東京体育館だけが持つ独特の雰囲気に飲まれることなく、鍛えぬかれた脚をフルに活かして強く、速く、粘り強く戦いぬけば、2005年以来遠ざかっている冬の杯を十分に狙える。

 以上の2チームをトーナメントの右下と左上に配する今年のウインターカップ。本命不在の今大会は注目チームが目白押しだ。

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 福岡第一を第1シードに据える左上のブロックでは中部大学第一高校(愛知)と船橋市立船橋高校(千葉)に注目。1回戦を勝ちあがると福岡第一との対戦となる中部大第一は総体の3回戦でのリベンジなるか。星野京介坂本聖芽ら活きのいい下級生ポイントゲッターを擁し、地力もある。1戦消化して体が温まったところで福岡第一の初戦をたたけるこの組み合わせは、中部大第一にとっては願ってもないチャンスだろう。毎年個性的な選手をそろえる市立船橋は、今年も面白い人材が豊富。195センチの赤穂雷太をポイントガードに据え、195センチ95キロの田村伊織がミドルレーンを走って速攻に絡む。総体では形ばかりの印象が否めなかった「ポイントガード赤穂」だが、1年をかけてじっくりと作りあげてきた成果はいかほどか。

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 左下のブロックは帝京長岡高校(新潟)が一歩リードか。「歴代最高レベルの留学生」とも評されるタヒロウ・ディアベイトを軸に、強じんなフィジカルを活かしたバスケットボールを展開。総体でベスト8に入った開志国際高校を県予選で破り、勢いもあるが、初戦で試合巧者の尽誠学園高校(香川)と明成の勝者との対戦というのは、なかなか厳しい組み合わせだ。初出場の総体でベスト4に入り、第2シードとなった県立福島南高校(福島)は小気味の良いバスケットを展開する。高さはないが、U-18日本代表の水野幹太ら5人全員がアウトサイドから攻撃を仕掛けられるのが特徴。初戦で対戦するのは恐らく4度の優勝を誇る洛南高校(京都)だが、長身のオールラウンダーがそろう洛南にとって、福島南の強みはそれほど大きなディスアドバンテージにはならないはず。大ケガから完全復帰した司令塔、柳川幹也が彼らをうまく操ることができれば、上位進出も大いにあり得る。

 県立山形南高校(山形)が第3シードとなる右上のブロックは最激戦ブロックとなりそうだ。樋口雄気、斉藤諒馬を軸に粘り強いバスケットを展開する山形南の、初戦の相手は正智深谷高校(埼玉)か。長身オールラウンダーの山口颯斗、U-16日本代表の常田耕平ら能力の高い選手を擁しつつ、こちらも堅いディフェンスが持ち味。昨年準優勝の土浦日本大学高校(茨城)も、虎視眈々と上位を狙う。総体はU-18アジア選手権でエースの杉本天昇を欠き初戦敗退に終わったため、今大会こそはという思いは並大抵ではないだろう。小室悠太郎、大倉颯太ら国体準優勝メンバーを多数擁する北陸学院高校(石川)は3回戦が最初の山となりそうだ。留学生ドゥドゥ・ゲイを大黒柱に据える八王子学園八王子高校(東京)、センターの田中旭を中心に勝負強いシューターがそろう浜松学院高校(静岡)のいずれかとの対戦が予想される。

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 右下のブロックは、桐光学園高校(神奈川)、福岡大学附属大濠高校(福岡)、北陸高校(福井)が東山への挑戦権を競う形となるか。福大大濠は、鍵冨太雅西田優大らU-18日本代表組を筆頭に能力、サイズともにピカイチの選手層を誇りつつも、昨年度から全国大会で全く勝てていない。鍵冨、西田を欠いた総体でも1回戦で桐光学園に敗れているが、もうこれ以上は負けられない。何とか3回戦まで勝ちあがって、フルメンバーで桐光学園を破りたい。とはいえ、2回戦で対戦する古豪、北陸も市橋歩ら力のあるメンバーをそろえる。伝統のディフェンスと爆発的なオフェンス力で、福大大濠と同様にかつての輝きを取り戻すチャンスをうかがっている。ジュニアオールスターで全国優勝したメンバーがそろう桐光学園は総体ベスト16。司令塔の新田嵐、センターの植松義也の成長がカギとなりそうだ。

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 1回戦から白熱の好ゲームが予想される今年の男子。青春のすべてを懸けた高校生たちの奮闘を、ぜひ会場やテレビで見届けてほしい。

文・写真=青木美帆

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