2016.12.25

前橋育英マネージャーが涙の終戦、唯一の3年生が「大好き」なバスケットに捧げた試行錯誤の3年間

ベンチから戦況を見つめる前橋育英の根岸マネージャー(中央) [写真]=大澤智子
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 インターハイ不出場の悔しさをバネにウインターカップにやってきた前橋育英高校(群馬県)。しかし県立豊浦高校(山口県)に46ー53で敗れ、1回戦敗退に終わった。加賀谷寿コーチは「オフェンスリバウンドが取れないのが負けパターンなのですが、それがモロに出ました。3年生がいないからメンタル的に弱いんでしょうね」と振り返る。

 加賀谷コーチが言うように前橋育英には3年生のプレーヤーが1人もいない。そんな中で、唯一の3年生としてチームを支えてきたのが、マネージャーの根岸瑞基だ。

 バスケットは好きだけど、強豪チームでプレーするには実力不足。そんなことを考えていた入学時、根岸はチームがマネージャーを募集していることを知り、門をたたいた。プレーヤーは全員スポーツコースに所属し、水曜日と金曜日は4時間目から部活を始めることとなっているが、進学コースの根岸は7時間目まで授業があるため参加できない。「申し訳ない気持ちもあった」と振り返るが、限られた曜日の中で精いっぱいチームに貢献することを考え、行動していたという。

「大切にしていたのは先を予想して行動することです。小さなことなんですけど、次のメニューにはボールがいくつ必要とか、みんながつらい時間帯だから飲み物の補充は早めにしようとか」

 加賀谷コーチは根岸のことを「とにかく真面目」と評したが、試合中の様子からもそれがよく見てとれた。ファウル時の審判のハンドサインを毎回食い入るように見つめ、少しでも不確かな認識があればコーチ陣や部員に確認する。「自分の仕事は正確にデータを取ってみんなに伝えること。そこは絶対に間違えちゃいけないですから」

 どんなビッグプレーにも表情一つ変えることなくスコアに向き合い、試合後もベンチの撤収や荷物整理に奔走していた根岸。しかし取材では一転、「入部のきっかけはなんだったんですか?」という最初の質問に答える段階から目を赤くし、声を震わせていた。

 マネージャーでもいいから、とにかくバスケットに携わっていたかった。「それだけバスケットが好きなんですね」と向けると、「はい、大好きです」。その後はしばらく言葉にならなかった。同級生も同じコースの仲間もマネージャー仲間もいない中、1人で試行錯誤を続けてきた3年間の、様々な思いがよみがえったのかもしれない。

 本当は受験勉強に専念するため、インターハイ予選後に引退するつもりでいた。しかし、加賀谷コーチや保護者たちの説得もあってウインター予選から復帰。これで正真正銘の引退となり、ようやく受験勉強中心の日々が始まる。大学でバスケットに携わる予定は今のところない。だからこそ最後の東京体育館は忘れられない思い出となった。

「バスケから離れる前に、ウインターカップという大きな舞台に立たせてもらえて本当に幸せです。こんな僕にもちゃんと接してくれて、下級生たちには感謝しています」

文=青木美帆