2016.12.27

劣勢で失った言葉と敗北で流した涙、嫌われ役を担った正智深谷の2年生常田耕平の苦悩は進化の糧に

土浦日大との試合後に悔し涙を流す正智深谷の常田耕平 [写真]=大澤智子
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 言葉を失った。正智深谷高校(埼玉県)の常田耕平は、ベスト8進出を懸けた土浦日本大学高校(茨城県)との試合中、これまでに感じたことがないプレッシャーの中でもがいていた。

 先手を取ったのは正智深谷だった。アウトサイドのシュートが面白いように決まり、第1ピリオドは25ー17でリード。しかし土浦日本大は第2ピリオドでさっそくギアを入れ替え、前半終了間際に逆転された。

 この時から、常田の頭には「負け」の二文字がちらついていた。ハーフタイム中には必ず、選手一人ひとりに何かしらの声を掛けるようにしているが、この試合に限っては掛ける言葉が見つからなかった。

「どういう言葉を掛ければみんなが盛りあがるかもわかっていたはずなのに、頭が真っ白になったというか。チームの雰囲気を上げるためにはどんな言葉でも掛けなきゃいけなかったのに言葉が見つからなくて……」

 成田靖コーチが「チームの大黒柱」と評する2年生。気持ちでチームを引っ張り、3年生に対しても敬語を使わず檄を飛ばす。キャプテンの山口颯斗は「最初は正直嫌だったし、むかつく時もあった」と渋い顔をしたが、常田本人は「少しでもチームのためになるのであれば、たとえ悪い言葉でも言わなきゃいけない。うざがられようが嫌われようが、そういう立場の人間にならなきゃいけないことは理解しています」と腹を決めていた。

 この選手は褒めたら乗る、この選手は厳しく言わないとズルズル行ってしまう。全員の特徴は把握しているし、その日のコンディションによって掛ける言葉を変えなければいけないこともわかっている。それなのに、肝心な試合で、肝心な場面で言葉が出てこなかった。後半一気に畳みかけられ、第3ピリオド終了時には30点ビハインド。そのまま83ー97で敗れた。「そういう言葉を自分が掛けられていたら、もしかしたら勝てていたかもしれない。シュートが入らなかったとかそういうことよりも、苦しい時にしゃべれなかったのが一番悔しいです」と涙にくれた。

 チーム事情のため、試合状況に応じてガードとしてプレーすることもあればフォワードに転じることもある。「本当は1、2番に専念させてあげたいんだけど」と成田コーチも少し申し訳なさそうな表情だった。プレー面でも精神面でも下級生らしからぬ重圧を背負ってきた1年間だったが、それが自らの役割だと真摯に受け止めている。

 流した涙と失った言葉。最上級生となる来年、同じ場所で取り戻す。

文=青木美帆