「常連校が順当に県予選で優勝して、平成29年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)ベスト16に入った」。単純な図式に見えて、そうではない。今年の桐光学園高校(神奈川県)は、どん底から必死にはいあがって全国の舞台にやってきた。
1月の新人戦はベスト8敗退。5月の春季大会も5位に終わった。3年生は春季大会の敗戦を長く引きずり、新たに加わった過酷なトレーニングに「辞めたい」と漏らす主力が何人も出た。全国常連の強豪校にあるまじき状態だった。
6月の関東大会(Bブロック)で準優勝したことを手がかりに、チームはようやく自信を取り戻し始めた。自分の気持ちを言葉に出せない選手が多い中、ポイントガードを務める小針幸也が率先して声を出し、気持ちのこもったプレーでチームを引っ張るようになった。
「後輩がミスした時に切り替えさせる言葉だったり、フリースローの時に次のディフェンスの形を伝えたり。負けている時も慌てず落ち着ける声を掛けるようにしていました」
中学時代に県選抜で主力を担ったメンバーがそろう中、小針は県はおろか市の選抜にも入ったことがない選手。コツコツと重ねてきた努力で、県予選、インターハイと、試合を追うごとに上達や成長を感じさせた。「ディフェンスをよく見るようになって、点数が取れるようになりました。うまくなっている実感があります」と、少し照れくさそうに話した。
今年の神奈川男子は壮絶な団子状態。全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(ウインターカップ)予選も勝ちあがりは困難ではない。桐光学園は県立厚木東高校という最大のライバルを倒すことに全力を注ぐこととなるが、全国大会を3試合戦った経験を糧に県を勝ち抜き、さらにもう一つ上の景色を見れるだろうか。
文=青木美帆