12月25日、東京体育館で「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子2回戦が開催。船橋市立船橋高校(千葉県)は洛南高校(京都府)の前に敗退し、2回戦でコートを去った。そしてそれは、保泉遼と野﨑由之という、市立船橋が誇る2大ポイントゲッターの高校バスケが閉幕したことでもあった。
2人にわかりやすい仲の良さはない。学科が違うので学校生活で話す機会もないし、練習後はバラバラに帰る。もちろんオフに遊ぶこともないし、接骨院でたまたま居合わせたときも、特に食事をするでもなくそれぞれ帰ったそうだ。
ストイックに自分の世界を追い求める寡黙な保泉と、カッとなって言いたいことをすぐに言う野﨑。キャプテンと副キャプテンとしてチームをまとめる立場になってもなかなか意思疎通が取れず、険悪な雰囲気になることも多かったと保泉は振り返る。
それでもお互いの力は認めるところだったし、自分たちがやらなければ勝てないという自負もあった。
シード校として臨んだインターハイでまさかの初戦敗退に終わってからは、その思いが強くなった。”しゃべれないキャプテン”と近藤義行コーチに怒られ続けてきた保泉は、フリースロー時に仲間たちを集めたり、ここぞという場面で手を叩いて鼓舞。自分のプレーに固執しがちだった野﨑も「自分以外をどう活かすか。まわりに声をかけてリラックスさせて、点をとってもらえるような存在を目指しました」と言う。
近藤コーチは毎年、自分のことを後回しにして後輩を活躍させることを最上級生に求めていると話す。2人はしっかりとその役割と果たせるまでに成長した。
県予選前には野﨑の提案で、バッシュをナイキIDで揃いのものにしている。以前も2人は同じバッシュを履いていたが、先に購入した野﨑は「揃っていたら気持ち悪いから色を合わせるな」と保泉に言い含めたという。「最後くらいはいいかなって……」。野﨑は照れくさそうに笑った。
大一番となった洛南戦は序盤から流れをつかんだが、第2クォーターにオールコートバスケットを封じられ、アウトサイドからの単発なシュートが増える。それでも保泉、野﨑、大澤響生らが勝負強くそれを沈め、庄司理宇や兼重パトリックが高さに劣る相手エースを守ったが、第3クォーター終了間際、庄司が負傷退場してからは苦しかった。
最終スコアは77-88。保泉は20得点(3ポイント3本)14リバウンド6アシスト、野﨑は30得点(3ポイント8本)10リバウンドという素晴らしいスコアを残してラストゲームを締めくくった。
試合後、選手たちはコートで円陣を組んだのち、涙ながらにお互いをたたえ合った。保泉と野﨑は仲間たちの背中の少し離れた場所でこっそりと抱き合い、泣いた。
「シュートの確率が悪くて、頼りっぱなしでごめん」(保泉)
「そんなことないよ。俺らでしっかりこのチームを支えて、いいゲームができたじゃん」(野﨑)
「3年間ありがとう……」(保泉)
なんともアンバランスな2人が、高校バスケットボール生活で最初で最後にかわした、心からの気持ちだった。
文=青木美帆