12月27日、東京体育館で「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子準々決勝が開催された。初出場ながらベスト8に進出した県立厚木東高校(神奈川県)は、福岡大学附属大濠高校(高校総体1/福岡県)に65-98で敗れたが、目標としていたメインコートの舞台を存分に駆け抜けた。
厚木東は普通科のみの、ごくごく普通の公立校だ。学力推薦もスポーツ推薦もなく、全員が一般入試をクリアしなければならない。
練習環境は、公立校の中でも厳しい方かもしれない。コートの外のスペースがほぼない狭い体育館は雨漏りがし、何年もの間壊れたまま修理できずにいるリングがある。そんな体育館を4つの部活で共用し、オールコートが使えるのは週2回。完全下校は19時厳守。しかし、環境と好選手に恵まれた県内のライバルを破り、各都道府県の代表校を3校倒して、チーム発足当初から目標としていたメインコートにたどり着いた。
インターハイ王者は、とてつもなく強かった。エースの東野恒紀は第1クォーター途中から足の痙攣が止まらず、抜群のスピードをフルには生かせなかったし、キャプテンの佐野龍之介はルーズボールのダイブで大会5日前に負ったねんざが悪化し、思うように動けなかった。
もっと戦えるところを見せたかったというのが東野の本音だが、チームが磨いてきたディフェンスはやり切れたし、「どう考えても負ける点差でしたけど、思い出づくりにはしたくない。最後まであきらめさせたくなかったです」という永田雅嗣郎コーチの思いを受けて、主力が最後まで全力で戦い抜いた。
「友情、努力、勝利」といえば某少年漫画誌のコンセプトだが、今年の厚木東はそれを地で行くチームだった。
ベンチメンバーの望月健太は「チームのためになるなら」とあえてシックスマンを志願し、総体予選までまったく出場機会のなかった大原瑞生がスタメンになった。総体予選前に大けがを負った副キャプテンの佐藤光は、救急車に運ばれながらも「お前、ちゃんと切り替えろよ」と動揺した佐野に笑いかけたという。
エースの東野は、精神面の脆さと向き合い続けた1年だった。永田コーチと何度も話し合いを重ね、コートの中では佐野に支えられ、この1年で見違えるようにプレーが安定。トップスピードのドリブルは福大大濠ですら止められず、多くの観客や関係者の目をくぎ付けにした。
中学の県選抜でプレーして以来、東野は佐野と同じ高校でプレーしたいと願い、その気持ちを伝えた。お世辞にも勉強は得意とは言えないが、必死に受験勉強に励んだ末に合格を勝ち取っている。「ドライブしたときに見えないとちょっと不安になります」と話す相棒について、「これから大学とかでバスケを続けても、龍之介みたいな人には出会えないと思います」と、照れることなく言える。
残念ながら部員全員の話は聞けなかったが、こういったエピソードが全員から出てくるのではないかと思わせるのが厚木東の強さであり、魅力。お互いを信じ合い、支え合い、高め合ってきた彼らの3年間に、心からの拍手を送りたい。
文=青木美帆