2017.12.28

飛龍最後は力尽きる。下級生に託されたベスト4進出の夢

インターハイ、ウインターカップの両方でベスト8入りを果たした飛龍のキャプテン伊東[写真]=加藤夏子
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

 大会5日目を迎えた12月27日、『ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会』男子準々決勝、福島インターハイ、ベスト4の帝京長岡高校(新潟県)と飛龍高校(静岡県)が対戦。足を使ったハードなディフェンスをベースに、しっかりとボールを回してチャンスを作るオフェンスは共通の特徴。互いにそれを存分に発揮した試合展開は、1本のシュートの成否が勝敗に直結するという、非常にスリリングなものとなった。

 「前半は準備していたものが裏目に出ました」と試合後話してくれたのは飛龍の原田裕作コーチ。3、4番ポジションのところでポストアップして突破口を開こうというのが原田コーチの指示だったが、後半は「自分たちのバスケ、速い流れを作って、ボールを動かしながらズレを作ってどんどん仕掛けるバスケができたのではないかと思います」の言葉どおり、オフェンスに本来の躍動感がよみがえってきた。

 それに呼応するように伊東潤司、金井星也の3ポイントシュートが決まりだし、第4クォーター開始1分20秒でついに同点に追いついた。ここからは一進一退の展開となる。帝京長岡も司令塔、祝(ほおり)俊成が積極的にシュートを決めて譲らない。

伊東は帝京長岡戦で6本の3ポイントを含む22得点をたたき出した[写真]=加藤夏子

 55-55の同点のまま、残り時間は3分を切った。帝京長岡は佐野翔太がドライブを決めてリードを奪う。飛龍は同点、もしくは逆転を狙って攻撃を仕掛けるが、帝京長岡のディフェンスを崩せない。そして、残り26秒、ボールを持った関屋心がドライブでゴールに迫るが決めきれず…。その後、帝京長岡は佐野が落ち着いてフリースローを2本決めて、粘る飛龍を振り切った。

 6本の3ポイントシュートを決め、両チーム最多タイの22得点をあげた飛龍の伊東は「相手が1枚上手でした。全然ファウルをしないですし、リバウンドまでしっかりしてきました。そして勝負所でシュートも決めてきました」と、涙をこらえて試合を振り返る。「今大会では身長は小さくても飛龍の走るバスケは全国で示せたと思います。後輩たちには、この悔しさを糧にしてほしい。メンバー的にも一人ひとりの能力が高いので、自分たちの分までもっと上を目指して頑張ってほしい」とエールを贈った。

2年生の関屋は14得点6リバウンド5アシストをマーク[写真]=加藤夏子

 「関屋は普段なら決めきれる選手。あそこで3点ではなく、2点を取りにいった判断は素晴らしいと思います。しかし、帝京さんのディフェンスがボディーブローのように効いていたのかなと感じます。関屋がその中でも決められるようになればいいです。彼は2年生なのだから」(原田コーチ)

 意外かもしれないが、飛龍は今回のウインターカップで13年ぶりに初戦を突破し、20年ぶりのベスト8進出を果たした。インターハイでもベスト8に入ったことがフロックではないことを証明してみせた。就任8年目の原田コーチのもと、チームは新時代を切り開こうとしている。来年以降も注目だ。

飛龍のベスト4進出への夢は、伊東(左)から関屋(右)へと託された[写真]=加藤夏子

文=入江美紀雄

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