12月28日、東京体育館にて『ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会』男子準決勝が行われ、福岡第一高校(福岡県)は福岡大学大濠高校(高校総体1位/福岡県)と対戦した。
全国の舞台では12年ぶりの福岡県勢対決となったこの試合、良く知るチーム同士の対戦となったが、序盤から一進一退の好ゲームとなった。福岡第一は、ドライブを中心にゴールへの積極的なアタックでゲームを作り、福岡大大濠の“大濠らしい”最も確率の良いプレーを選択するバスケットボールに対抗した。
この重要な舞台で両チームを通して輝いていた選手の一人が、福岡第一の1年生ポイントガード河村勇輝だ。河村はクイックネスあふれるプレイでメインコートを駆け巡り、福岡大大濠の前線からの厳しいプレスをかいくぐる。また広い視野で、再三にわたりコートの端から端までロングパスを通す技術と度胸を見せた。
河村の果敢なドライブでディフェンスを引き付けて、ゴール下のバムアンゲイ・ジョンサンへのパスというコンビネーションで優位に試合を進める福岡第一。しかし、リバウンドを奪ってからの速攻というチームのストロングポイントを福岡大大濠に上手く消され、いつもの小気味よいトランジッションバスケットボールに持ち込むことができない。
徐々に流れを失った福岡第一は、福岡大大濠のキャプテン、永野聖汰のドライブや、井上宗一郎の力強いゴール下のアタックを止めることができず、試合の終盤に逆転される。なんとか反撃を試みたが、リバウンドの要であるジョンサンがファウルアウトしたところで力尽き、つかみかけた勝利を手放した。
1年生ながら堂々としたプレイぶりを披露した河村はミックスゾーンでの取材に応じ「相手がゾーンディフェンスということで、自分の持ち味である1対1が仕掛けられず、逆に外からポンポン打ってしまって、(打ったシュートの)確率も悪かった」と力なく語った。また、試合を振り返って「今回、自分の反省点がいっぱい出てきて、ダメだったことを克服して、福岡大大濠や、ほかのチームにも負けないように、3年生の想いを胸に、『やりかえすぞ!』という気持ちでがんばっていきたいと思っています」と前を向いた。
試合後の取材において井手口孝コーチは、よく知る相手との戦いについて問われると、「お互いそれなりに準備をしていたと思うが、ちょっと準備が足りなかった」と語り、「相手がゾーンを敷いたときに、きっちりとボールをバムのところに入れるという約束で練習もしていたが、うまくいかなかった」と敗因を分析した。
また、今年のチームを振り返り「去年優勝した先輩たちのあとを追いかけるのは大変なプレッシャーだったと思う。(3年生は)日本代表になるような力は持っていない選手たちだったが、がんばったと思う。ただ、もうひと頑張らせが足りなかったのかな……」と、昨年の王者として臨んだチームの努力を称えつつも、あと一歩のところで勝利を逃した悔しさを垣間見せた。大舞台での福岡県勢同士の対決について問われた井手口コーチは「チームを鍛えなおして、決勝戦で戦いたいね」と笑顔を残し会場をあとにした。
文=村上成