2017.12.29

「お前が優勝すれば佐渡から日本一が2人だぞ!」祝俊成が離島の幼なじみと交わした約束

巧みなステップでリングへと向かう祝[写真]=兼子慎一郎
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 12月29日、東京体育館で「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の最終日が開催された。男子3位決定戦は帝京長岡高校(新潟県)が福岡第一高校(福岡県)に69-58で勝利。ポイントガードの祝俊成は大会優秀選手に選出され、アシストランキング1位に輝いた。

今大会、祝はアウトサイドシュートも効果的に決めていた[写真]=加藤夏子

 3年前の3月、祝は中学の仲間や保護者たちの前で、「帝京(長岡)で一番活躍します」と宣言したという。「でも口だけですよ。県大会で1回勝てればいいくらいのチームだったし、『そこまではできないな』って本当は思っていました。だからここまで来られてよかったです、嘘にならなくて」と笑った。

 インターハイは、準決勝で福岡大学附属大濠高校(高校総体1/福岡県)に4度の延長戦の末に敗北。その悔しさを晴らすべく、厳しい練習に励んできた。その間、主力選手の離脱、約2か月間の体育館が使えない期間(その間は近隣の体育館を渡り歩き、朝の自主練は屋外でのトレーニングに変更となった)など、さまざまなアクシデントがあった。

 しかし、祝を始め、選手たちはめげなかった。

 「そこで下を向いていられない。『もっと頑張ろう』という気持ちになろうと、みんなで話していました。個人的にもそういうのに負けたくないし、言い訳もしたくなかった。だから1からチームを作り直しました」

 今大会はブラ・グロリダ、ティレラ・タヒロウの留学生センターが、2人そろって深刻なコンディション不良。それでも接戦を粘り強く勝ち上がってきたが、準決勝の明成戦(高校総体2/宮城県)は攻撃の起点となる祝が徹底的なマークを受けて56-65で敗北。目標としていた金メダルには届かなかったが、3位決定戦は序盤からチームらしさを前面に押し出し、高校最後の公式戦を勝利で締めくくった。

最終試合となった福岡第一戦で、祝は15得点5アシストを挙げた[写真]=兼子慎一郎

 インターハイの敗北後、号泣するチームメイトを後目に厳しい表情を崩さなかった祝。しかし、「チームメイトと先生と応援してくださった方に感謝の気持ちがいっぱいで、3年間ありがとうという気持ちがたくさん出てきて…」と、この試合後は自然と涙が出てきた。

 祝が高い個人技術を育んだのは、離島の佐渡で過ごした幼少期。高いレベルの練習や試合に恵まれないかわり、祝には頼もしい幼なじみがいた。NBAのプレー動画を見ながら「ああでもない・こうでもない」と試行錯誤を繰り返し、スキルを磨いてきた相棒の名前は森川凌。12月15日から17日に開催された3×3 U-18日本選手権で優勝し、MVPに輝いた選手だ。

祝の出身地、佐渡島の幼なじみである森川[写真]=加藤夏子

 「『次はお前の番だぞ。お前が優勝すれば佐渡から日本一が2人だぞ』って言われました」とうれしそうに話した祝。残念ながらチームとして日本一はとれなかったが、大会優秀選手賞に選ばれ、アシスト成功数で全国1位に輝いた幼なじみを、”日本一の相棒”も誇りに思っていることだろう。

文=青木美帆

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