2017.12.31

【ウインターカップ男子総括】“波乱なし”も例年以上の混戦、スモールチームが躍動した今大会

2年ぶり5回目の優勝を果たした明成高校[写真]=兼子慎一郎
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 突き抜けた実力者がおらず、多くのチームに勝ち上がりのチャンスがあった「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。終わってみれば優勝の明成高校(高校総体2/宮城県)、準優勝の福岡大学附属大濠高校(高校総体1/福岡県)、3位の帝京長岡高校(新潟県)、4位の福岡第一高校(福岡県)と、インターハイのベスト4がそのまま上位を独占し、結果的には“波乱なし”の格好となったが、そこに至るまでにはいくつもの大接戦が展開され、例年以上の混戦となった。

決勝戦は福大大濠(高校総体1/福岡県)と明成(高校総体2/宮城県)の一戦となった[写真]=兼子慎一郎

 1回戦からハイレベルなゲームが展開された。2年連続の対戦となった土浦日本大学高校(茨城県)と東海大学付属諏訪高校(長野県)は練習試合を頻繁に実施し、お互いの手の内をよく知る相手。土浦日大有利との見方が多い中で、東海大諏訪が主導権を握り続けたが、最後は終始抑え続けられたスーパーエース・高原晟也が勝負を決める1本を沈め、土浦日大が勝利を収めた。

 4強たちも、いつ負けてもおかしくない試合を乗り越えてきた。明成は京都の洛南高校(62-59:3回戦)、福大大濠は石川県代表の北陸学院高校(76-70:3回戦)、帝京長岡は静岡の飛龍高校(59-55:準々決勝)、福岡第一は土浦日大(85-83:3回戦)や愛知県代表の中部大学第一高校(74-71:準々決勝)に苦戦を強いられたが、地力と場数、そしてそれらを踏まえた勝利への強い意志を糧に混戦を勝ち抜いたのだろう。

 2メートル近辺のビッグマンがいないスモールチームの躍動も、目覚ましい大会となった。今大会ナンバー1留学生との呼び声が高いジョセフネリー・ジュニアを擁する高知中央高校(高知県)を倒し、帝京長岡をあわやというところまで追い詰めた飛龍の主力の最長身は186センチ。八王子学園八王子高校(東京都)を粉砕して初出場ベスト8進出を果たした県立厚木東高校(神奈川県)、福大大濠を苦しめた北陸学院、帝京長岡に好ゲームを展開した県立豊浦高校(山口県)も190センチ以下のメンバー構成ながら、サイズに勝る相手に堂々と戦い抜いた。

高知中央(高知県)のビッグマンを抑える飛龍(静岡県)の選手たち[写真]=大澤智子

 2000年代に初めて来日したアフリカ系の長身留学生は、現在、全国大会不出場校を含めて至るところで受け入れが進んでいる。さまざまな意見があるのは重々承知しているが、彼らに対抗するために選手たちの個人スキルが上がり、コーチたちの戦術が一歩進んだものになっているのは紛れもない事実だろう。

 昨年のBリーグ開幕に伴い、目標をそこに設定する選手も増えた。今大会も、大倉颯太(北陸学院)や八村阿蓮(明成)、東野恒紀(県立厚木東)ら多くの選手が「Bリーグ入り/プロ選手」という目標を報道陣たちに伝え、大倉は富樫勇樹千葉ジェッツ)、祝俊成(帝京長岡)は畠山俊樹新潟アルビレックスBB)を目標とする選手の1人として挙げている。

ベストファイブにも選出された祝俊成(帝京長岡)[写真]=兼子慎一郎

惜しくも3回戦で敗れた北陸学院(石川県)の大倉颯太[写真]=兼子慎一郎

 以前、川崎ブレイブサンダース篠山竜青が、珍しく口ごもりながら「日本のバスケの盛り上がりは高校が頂点で、そのあとは盛り上がらないものだと(早い段階で)分かっていたから、諦めのほうが強かった」と話していた。そんな時代を超え、プロという大きな目標ができた”未来のスター”たちは、卒業後の進路でもその夢を追い求め、さらに大きく成長してくれるだろう。

文=青木美帆

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